筆者は「ゲームばっかりしていないで勉強しなさい」というフレーズを耳にタコができるぐらい聞かされた、いわゆる親がゲームに馴染みのない世代の生まれだが、昨今はゲームと共に成長した世代が親になり多少風向きが変わってきたように感じる。
ゲームの認知が広まったことも理由としてはあるだろうが、それを仕事にする道や関連業種も増えたことも理由として挙げられるかもしれない。大学生時代に「ゲームをしても仕事にならないでしょ」と親に言われた筆者も、「MMORPGは第二の人生」とライター仕事で荒ぶったり クリエイティブ仕事でゲームのPVに携わったりと、なんだかんだ仕事に活かしてきた方の人間だったりする。ここのだけの話だが、ゲームきっかけで妻に出会っているため、ゲームと人生がもはや切り離せないところまできている。(念のためだが、リアル嫁の方)
とはいえゲームをダイレクトに仕事へ活かすのはまだまだ選択肢が少ない状況ではある。が、実はゲームプレイから人生の大切なことを学ぶ機会というのは非常に多いのだ。
よく聞くところで言えば「時間の大切さ」「成功体験を重ねる重要性」「困難は克服できる」あたりはわかりやすいところかと思うが、筆者の体感的にはどれも人生において重要な要素。
今回はそんな内容が詰まった展示会が東京 丸の内で開催されているため、現地の様子も含め紹介していこう。
改めて、今回紹介するのは株式会社たきコーポレーションと公益財団法人日本デザイン振興会が開催する「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」、丸の内にある「GOOD DESIGN Marunouch」にて4月14日(日)まで開催している。
会場ではここでしか遊べないオリジナルゲームがあるだけでなく、ゲームを通じて誰もが人生で体験するであろう8つのテーマを再認識することができる。
GOOD DESIGN Marunouchi
人生の大切なことをゲームから学ぶ展
UX?体験?「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」とは?
本展の正式名称は「勇者はUXデザインから生まれる?人生の大切なことをゲームから学ぶ展」と言うのだが、UXデザインって?と思った人もいることだろう。
詳細な解説は専門サイトに任せるが簡単に言えば「製品やサービスを通じて、体験を設計すること」を意味する言葉で、”ゲームを通じた体験”というのももちろんUXにあたる。その体験を設計することがUXデザインと言う訳だ。
わかりやすいところで言えば、RPGの序盤でボスと戦闘になり絶対に負けるイベント(負けイベント)も、UXデザインの一旦と言えるだろう。(もちろんストーリー上の構成としてもあるとは思うが)
今回の展示は、グッドデザイン賞で知られる公益財団法人日本デザイン振興会が2021年度より公募を行う「GOOD DESIGN Marunouchi 企画展」に、60年以上の歴史を持つ国内最大規模のクリエイティブエージェンシー「たきコーポレーション」が応募した企画が採用され実現したもの。ゲームのデザインというとUIやキャラクターなど表向きの要素をイメージしがちだが、その裏側には計算された「体験のデザイン(UXデザイン)」も含まれており、今回の展示はその切り口が主たる部分なのだ。
そんなわかりづらくて馴染みのない「UXデザイン」を、ゲームを通じて学べる体験を例にわかりやすく知れるようになっているのが今回の展示な訳だが、学べるテーマは「成長・勝利・仲間・困難・お金・挑戦・時間・考え方」の8つ用意されており、それぞれに着目したオリジナルゲームが展示されている。
ゲームから学べる人生の大事なこと「成長・勝利・仲間・困難・お金・挑戦・時間・考え方」
それでは早速、展示されているゲームを紹介していこう。
改めてにはなるが、「成長・勝利・仲間・困難・お金・挑戦・時間・考え方」という8つのテーマに基づいたオリジナルゲームが遊べる。レベルアップ・戦略・パーティーといったゲームならではの切り口が解説されているので、ぜひ壁の展示も見てもらえれば幸いだ。
ちなみに、全体的にスーパーファミコン(以下SFC)あたりのドット表現に寄せられており、筐体はアーケード風の形状。操作はゲームセンターのようなアーケードスティックと3ボタンを使うものがほとんどだ。(一部、ファミコンのような十字キーと2ボタンのものもある)
内容を全てお見せすると面白みがないため、本記事で少しでも気になった方はぜひ現地に足を運んでもらえればと思う。
成長|横スクロールアクション「めざせ!カンフーマスター」
まずは、「成長」をテーマにした横スクロールアクションゲーム「めざせ!カンフーマスター」。
内容としては昔のマリオに代表されるような横へ移動するアクションゲームとなっており、早めの強制スクロールがされる中、ジャンプやスライディングを駆使して進めていく。 割と初見殺しのギミックも多いのだが、残機が多めに設定されているため、失敗しながらも一つ一つ乗り越えていく体験を味わえる。
勝利|2P対戦型心理戦「駆け引きボクシング」
2つ目は「勝利」をテーマにした2Pでプレイする対戦型ゲーム「駆け引きボクシング」。
じゃんけんのような三すくみになったパンチを同時に撃ち合い、HPを削り切れば勝利となる。各プレイヤーが一度だけ出せるスペシャルパンチの使い所がキーポイントとなるだろう。相手の手の内を読みながらコマンドを入れていくのだが、それぞれのパンチは3回しか使えないため、後半は詰将棋のような戦略性が求められる。(一人の方はスタッフに声をかけてもらえれば一緒にやってくれるはず。たぶん。)
仲間|正解の組み合わせを考える「MONSTER REVENGE」
個人的に一番難しかった(主に筆者の知識不足のせいで)のが、「仲間」をテーマにした正解の組み合わせを考える「MONSTER REVENGE」。
あまり語ってしまうと面白みがなくなってしまうので自重するが、どんな冒険でも誰をパーティーに連れていくか、仲間にするかは重要な問題だ。一人欠けても多くてもダメ、強敵に対して最適な仲間を選び抜こう。
困難|暗闇探索アクション「ASTRO SURVIVOR」
4つ目は「困難」をテーマにした暗闇の中でゴールを目指す探索アクションゲーム「ASTRO SURViVOR」。
自キャラの付近以外が真っ暗な中、限られた光を手がかりにゴールを目指す形式。ボタンを押せば吸着式の灯り(あかり)を投げることができ、少しづつ突破口を探す内容だ。敵を倒すようなアクションはないものの、少しロックマンや悪魔城ドラキュラを思わせるような操作感が特徴。ライフという名の制限時間もあるので急ぎつつ、ただ慌てずに探索を進めよう。
お金|縦スクロールシューティング「GOLD RUSH」
5つ目は「お金」をテーマにした縦に進むスクロールシューティングゲーム「GOLD RUSH」。
始めに所持金がランダムに決められ、限られた予算でキャラクターを強化してシューティングを行う。回避のため移動速度を取るのか、攻撃速度や攻撃範囲といった火力に振るのかなど、プレイヤーごとの工夫が求められる仕様。ちなみに運が良ければ全部の強化を買えてしまうのだが、その際にはもう一度低予算でも遊んで貰いたい。
挑戦|無限湧き迷宮追跡「DEAD or ALIVE」
6つ目は「挑戦」をテーマにしたドットイート系ゲーム「DEAD or ALIVE」。
基本的にはパックマンのような形式で、時間経過で報酬を得るチャンスが増え、共に敵も増えることでリスクも増える仕様。リスクを取らないとリターンも増えないという”人生そんな上手くはいかない”がひしひしと感じられる難易度になっている。クリア(脱出)自体は難しくないのだが、問題はどこまでスコアを伸ばせるか!
時間|高橋名人になれ「時は金なり 地獄連打」
7つ目は「時間」をテーマにしたシンプル連打ゲーム「時は金なり 地獄連打」。
内容は至ってシンプル、サイコロで決められた時間内、ただ連打するだけ。ただでさえランダムに決まる制限時間なのに、その上で高スコアを出さないといけないというシンプル鬼畜仕様になっている。どうしようもない時間という概念だからこそ、その重要性もシンプルにわかることだろう。
考え方|運命分岐RPG「勇者コマンド その選択が伝説になる」
最後に紹介するのが「考え方」をテーマにした、結末分岐型RPG「勇者コマンド その選択が伝説になる」。
魔王との最終決戦において、ドラクエのようなUIで勇者の行動を決めていく。通常であれば”たたかう”や”まほう”を駆使して倒すのだが、あまり見かけない”せっとく”や”あやまる”といったコマンドも選べるのが特徴。選択によって勇者のタイプが変わるため、あなただけのエンディングを見つけて欲しい。(全10種類以上あるらしい)
UXデザインを知るきっかけになる「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」は4/14(日)まで!
一通り紹介してきたが、いかがだっただろうか。
オリジナルのゲームがメインの展示ではあるのだが、その他にも500名以上が回答した「ゲームから学んだ人生の大切なこと」調査結果の発表や、顔写真が入ったオリジナルステッカーがもらえたりする。
どうしてもその他という扱いになってしまうのだが、地味に面白いのが読み物系のコンテンツ。ゲーム開発に関わる人のコメントや、ここでしか見られない様々な著名人からの寄稿もあり、個人的ツボな回答を見つけるのも楽しい時間だ。
(→)プロゲーマー ときど氏
(→)プロ野球選手 平良 海馬氏
本展はゲーム好きにはもちろんのこと、あまりゲームはやらないという人にも、ゲームを見直す一つのきっかけになるような展示となっている。個人的にはゲームが人生と切り離せない人間なので、ぜひゲームへの理解が低い我が両親にも見てもらいたいものだ。
最後に完全な余談として、筆者的「ゲームから学んだ人生の大切なこと」を一部記して終わりとしよう。
例:学んだ内容(ゲームタイトル)
- 100円のコストパフォーマンス(タイムクライシス4)
- 身体で覚える(タイムクライシス4)
- コミュニケーションの難しさ(マビノギ)
- 時間の使い方(マビノギ)
- 苦手なジャンルでも、継続すれば力になる(マリオカートWii)
- 環境が人を育てる(マリオカートWii)
- 数は力(アイドルマスターシンデレラガールズ)
- 継続は力になる ※2回目(Splatoon2)
- 情報収集の重要さ(Splatoon2)
他にもSFCで思い出深い「バハムート ラグーン」やPS2で最初に遊んでいた「ラチェット&クランク」も入れたかったのだが、特に思い出深いのは上記だろうか。
「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」は東京 丸の内で4月14日(日)まで開催中だ。
イベント詳細
イベント名:勇者はUXデザインから生まれる?人生の大切なことをゲームから学ぶ展
開催日時:2024年3月15日(金)~4月14日(日)11:00~20:00 *最終日は18:00閉館
入場料:無料
開催場所:GOOD DESIGN Marunouchi
東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F
公式サイト:https://gamekaramanabu-ten.com/
公式X:https://twitter.com/gamekaramanabu
公式Instagram:https://www.instagram.com/gamekaramanabu
GOOD DESIGN Marunouchi
人生の大切なことをゲームから学ぶ展