ゲーミングデバイスのオーディオといえば「ゲーミングヘッドホンかゲーミングイヤホン!」というのが世間一般では多いかと思う。とはいえ頭を締め付けるヘッドホンや耳の穴に入れるイヤホンは長時間使用すると不都合が出る瞬間も多く、かといってきちんと音を聞くためには他の選択肢もあまりない、というのがここ何年かのゲーマー達だろう。
そんな中2021年に登場したのが、パナソニックのUSB接続式ゲーミングネックスピーカー「SC-GN01」というシロモノ。頭や耳に負担を掛けない第三の選択肢ということに加え「ファイナルファンタジーXIV」のサウンドチームと共同で開発されたサウンドが話題を集めていた。
そんな「SC-GN01」登場から3年、唯一のネックだった有線接続が、今度はワイヤレスに進化して帰ってくるというではないか。
という訳で今回は、ワイヤレスに進化した「SC-GNW10」を発売前に実機レビューする機会をいただいたので、ネックスピーカーであるメリットや前モデル「SC-GN01」との違いなど、実際にゲームをプレイした感想も併せてレビューしていこうと思う。
なお「SC-GNW10」は11月17日より発売、価格はオープンだが公式通販サイトでは36,400円(税込)。
そもそもゲーミングネックスピーカーとは?首掛けのメリット
まずは前段として、ネックスピーカーという首掛け仕様のメリットからおさらいしよう。
冒頭でもお伝えした通り、ゲーミングデバイスのオーディオはヘッドホン(あるいはヘッドセット)かイヤホンというのが一般的だろう。もちろんそれぞれにメリットデメリットはあるのだが、共通して言えることとしては耳や頭といった頭部が痛くなりやすく、長時間の使用に適していないということ。またFPSやRPGといった没入感が大事になるゲームタイトルではサウンドに集中する必要があるため、密閉型で蒸れやすいというのもあるあるな話だろう。
その点首掛け仕様のネックスピーカーであれば、そもそも頭部に装着しないため、身体的負担が少なくなるというのが最大のメリットであり特徴だ。長時間使用に伴う圧迫感や違和感、延いては痛みといったトラブルから解放され、蒸れる心配もゼロになるという、困っていた人にとってはまさに最適解となりうるデバイスだ。
また、一部の方限定にはなってしまうが頭部へ干渉しないことでメガネとの相性が抜群に良く、個人差の出る身体的特徴という問題に広く対応しているのも大きなメリットと言える。
ゲーミングと銘打つ所以としては、専用の2.4GHz帯で接続することによる低遅延と没入感を高めるサラウンド(立体的な音響)がその根拠だ。
ゲーマーにとって遅延というのは没入感を損なう要因になったり時にはゲームの性質すら変えてしまう大きな問題だが、本製品はワイヤレス接続にも関わらず低遅延を実現しており、一瞬の判断がモノをいうFPSなどの対戦ゲームや、精度が生命線のリズムゲームにおいても快適なプレイを約束するという。
また一般的なゲーミングヘッドホンやイヤホンと違い、前後左右の4つのスピーカーによる4chのサラウンドを搭載することで、FPSやTPSといったSTGジャンルやADVやRPGをはじめとする世界への没入感を高めことが可能。左右の2chでは物足りない前後の音を聞き分けたり、臨場感ある環境音を余すことなく味わえるようになる。
前モデル「SC-GN01」との違い、進化したワイヤレス仕様
次に前モデル「SC-GN01」との違いをおさらいしよう。
ざっくりとゲーミングネックスピーカーたる機能としては変わらないものの、最大の特徴はやはりワイヤレス仕様に変わった点だろう。付属のワイヤレス送信機により、専用の2.4GHz帯無線にて接続することでワイヤレスにも関わらず低遅延を実現している。ゲーミングマウスやゲーミングキーボードでは良くある方式のため、それと一緒だと思ってもらえればおおよそ問題ない。
また、スピーカー自体の性能としても新ユニットを搭載することで向上している。前モデル「SC-GN01」では口径34mmだったスピーカーから38mmへ、出力としても4Wから8Wへ向上したことで、中低域を中心に音圧が2倍にUPしたという。首掛け仕様で身体に触れることも相まり、重低音が振動でもわかりやすくなったのは大きな進化と言える。加えて前モデルから引き続き備わっているサウンドモードのPC専用アプリ「SOUNDSLAYER Engine」が新たに配信され、各種イコライザーも制御可能になった。サウンドモード毎にフロントとリアをそれぞれ制御できるため、こだわりの強いゲーマーもこれで安心できるだろう。
その他の改良として、オンラインゲームには欠かせないボイスチャットで使用するマイクが本体左右に分かれてレイアウトされ、新たにAIボイスプロセッサーを搭載することでより自然な会話を可能に。収音領域と収音力を改善することで、スピーカーが近いことで音が乗りやすいという構造上のデメリットを感じにくくなった。
また、本体に備わるボリュームコントロールボタンがロータリー式(ダイヤルを回す形式)に変更となり、急なトラブルでも直感的に・瞬時に操作可能となったことも進化と言える。その他各種ボタンのレイアウトも変更されているが、それは次の外観で併せて紹介しよう。
「SC-GNW10」の外観をチェック、前モデル「SC-GN01」より操作しやすくなったデザイン
それでは外観を一通り見ていこう。
まずは正面から、スピーカー部分を覆うように張られたクロスがパナソニックらしい高級感を演出しており、まるで据え置きのスピーカーのようなインテリアに馴染むデザインをしている。
続いて背面は安定感を高める凸凹が付いており、鎖骨と僧帽筋を避ける距離感でデザインされている。地味に前モデル「SC-GN01」から改良され、より凸が強調され安定感を増した形だ。
向かって右の外側側面には充電用のUSB Type Cが。
前モデル「SC-GN01」で備わっていた音声入出力端子は廃止され、出力端子のみワイヤレス送信機側に移動している。またマイクミュートボタンとサウンドモードボタンは次に紹介する内側へ移動となった。
内側には電源ボタンの他、移動してきたマイクミュートボタンとサウンドモードボタンが位置する。前モデル「SC-GN01」ではボタン類が全て外側に位置していたが、今回の「SC-GNW10」では主要なボタンが内側に位置し、親指で押しやすくなった形だ。
先端には改良されたロータリー式のボリュームコントロールボタンが位置する。前モデル「SC-GN01」では+と-をそれぞれ別に押す形だったため、より直感的に操作しやすくなった。
向かって左にはボタン類がないため、続いては進化点であるワイヤレス送信機を紹介しよう。 外観は至ってシンプルで、ボタンとしてもペアリングボタンが付いているだけだ。
背面にはPCやゲーム機側からの接続に使うUSB Type Cと、ネックスピーカー本体から移動してきた音声出力端子が位置する。もしアクティブサブウーファーなど、別の機器からも音を出したい場合はこちらから繋ぐといいだろう。
「SC-GNW10」をNintendo Switchに接続してゲームをプレイ
それでは実際にゲームをプレイしてみよう。
前提として、今回紹介している「SC-GNW10」はPCの他、PS4・PS5、Nintendo Switch(テレビモード時)にそれぞれ対応している。音声入出力端子(厳密には入力が)が廃止になった影響で残念ながらXbox Series、Nintendo Switch(テーブル/ 携帯モード時)は対象外となってしまったため、そちらで想定している方は前モデル「SC-GN01」を検討してもらえれば幸いだ。
使用する際にはどの機種でもワイヤレス送信機とUSBケーブルにて接続するだけという、スマートな接続方式が取られている。今回は実際にNintendo Switchにて検証したのだが、画像のようにドック部分のUSB端子と接続するだけで勝手に認識してくれた。
あとは好みの音量とモードに切り替えて、ゲームをプレイするだけ。
今回は筆者が以前よりプレイしている昨年発売のTPS第3作と今年発売されたオープンワールドアクションADVの続編をプレイしてみたのだが、まず感じたのはとても楽だということ。
暇さえあれば1日10時間は余裕でプレイできる筆者だが、時間が長くなればなるほど、身体的負担も当然高くなる。そのためADVやRPGタイトルであればモニタースピーカーで聴くことも多いのだが、FPSやTPSとなるとそうもいかない。
その点「SC-GNW10」の装着感は申し分なく、最初は「これはこれで違和感がありそう」と思っていたが、しばらくすると違和感なく装着し続けることができた。首周りが重くなることもなく、ストレスなく長時間装着できるのは中々快適。試しに息抜きがてら椅子の背を倒したり多少の身動きを取ってみたが、安定感という意味でも非常にストレスフリー。とはいえ安定感のあるオーディオデバイスとして使えるほどではなく、流石に片付けのような作業をするのには向かなかったので、あくまでゲームなどのデスク周りに限った方が良さそうだ。
ワイヤレスの恩恵も大きく、有線特有のコードが擦れる感触や、そもそもコードの長さで生じる可動域の制限がないのはかなりありがたい。先ほどお伝えした椅子の背を倒す瞬間がわかりやすく、一つ一つの動作に余計な心配をしなくていいのは大きなメリットと言えるだろう。
音という面ではゲームジャンルに合わせて選べる「サウンドモード」が中々便利で、足音といった特定の音が重要になるゲームをプレイする際に、ボタンからさっと切り替えられるのは非常に便利。よくあるソフトウェア側で変更する場合などはいちいち画面を切り替えないといけないことも多いが、その点「SC-GNW10」であれば画面を変えずに・ノールックで変更が可能だ。
具体的な音質としては密閉せずに音を開放する構造のため自然と広がっていくサウンドが心地よく、TPSをプレイ時に前後の聞き分けができるぐらいには良好。競技レベルの精度を求められると難しい部分もありそうだが、普段使いをする分には十分なレベルかと思う。
総合評価としては、長時間ゲームを楽しむ上で気軽に使えるオーディオデバイスといったところだろうか。
ワイヤレスで低遅延、長時間でも身体的負担が少ない「SC-GNW10」
レビューをお届けしたがいかがだっただろうか。やはりワイヤレスなのに低遅延というメリットは大きく、ゲームプレイ時のオーディオデバイスに悩みがある方はぜひ検討してもらえればと思う。 最近ではゲーミングヘッドホンでワイヤレスという製品もよく見かけるが、その分どうしても重量増加の傾向にあるため、長時間装着すると頭が…という方に本製品はうってつけだろう。
そのまま飲み物を取りに行くぐらいであれば何も気にする必要はないし、何より頭部へ干渉がないというのは思っている以上にストレスフリー。
休日はどっぷりと長時間プレイするという方は、身体的負担の少ない「SC-GNW10」がマッチするはずだ。
製品詳細
製品名:ネックスピーカーシステム SC-GNW10
外形寸法:幅 約256 mm × 高さ 約56 mm × 奥行 約221 mm(ワイヤレス送信機 別)
質量:約 403 g(ワイヤレス送信機 別)
実用最大出力(非同時駆動、JEITA):実用最大出力合計値 8W
接続方式:2.4 GHz 専用無線
接続端子:USB Type C
電池持続時間:約9時間 ※メーカー規定音源の時、Vol8
対応機器:PC、PS4・PS5、Nintendo Switch(テレビモード時)
PC対応OS:Windows10 / 11 ※全てのPCの動作を保証しているものではない。