【水月雨(MOONDROP)Armature Art 24レビュー】厚みとクリアさを両立し、楽曲の魅力を引き出す24BAイヤホン

水月雨(MOONDROP)というブランドに対して、筆者は中高域の美しさや女性ボーカルを伸びやかに聴かせる音作りという印象を持っている。

もちろん、以前レビューしたMOONRIVER IIIのように、思いのほか低域の存在感が印象に残った製品もあるものの、これまで触れてきた製品や多くのレビューを通じて、筆者の中では自然とそうしたブランドイメージが形作られていた。

そんな水月雨(MOONDROP)から登場した「Armature Art 24」は、片側に24基ものBAドライバーを搭載したイヤホンだ。そのうち16基を低域用として採用する構成は、本製品を象徴する大きな特徴と言える。

このスペックを目にしたとき、低域へ何らかの特徴を持たせた製品なのではないかと自然に興味を惹かれた。

また、仮にそうであれば、これまで筆者が抱いてきた「水月雨(MOONDROP)らしい音作り」はどうなるのだろうか。従来どおり中高域や女性ボーカルを魅力的に聴かせる音作りを踏襲しているのか。あるいは、その魅力を残しながら低域へ新たな個性を加えた製品なのか。それとも、ブランドイメージを覆すほど低域を大胆に押し出した音作りなのか。

本記事では、24BAという特徴的な構成を採用したArmature Art 24を実際に試聴し、そのサウンドや使用感について詳しくレビューしていく。

製品概要

MOONDROP

イヤホン

Armature Art 24


製品名:Armature Art 24
価格:188,100円(税込)
発売日:2026年6月18日
製品ページ:

※商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームよりメディア運営元のONESELに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報、または自動で更新されています。

目次

厚みとクリアさを両立したサウンド

今回は筆者が普段から使用していて、以前レビューをしたQuestyle M18i MAXに加え、水月雨(MOONDROP)DHA15でも試聴を行った。

Questyle M18i MAXに加え、水月雨(MOONDROP)DHA15でも試聴

なお、DHA15自体については現在レビューを進めているため、本記事ではArmature Art 24のサウンドへ焦点を当てて紹介していきたい。

Armature Art 24の試聴を始めるにあたり、筆者がまず意識したのは、16基ものBAドライバーが割り当てられた低域だった。

Armature Art 24

冒頭でも触れた通り、低域用として16基ものBAドライバーを採用しているというスペックを目にしたことで、低域へ何らかの特徴を持たせたイヤホンなのではないかと考えていたからだ。そのため、楽曲が流れ始めると自然と耳は低域へ向かっていた。

しかし、実際に試聴を始めると、まず感じたのは低域がサウンド全体を支配するような印象ではない。

確かに低域には十分な存在感がある。しかし、その存在感によってボーカルや中高域が後ろへ下がることはなく、筆者がこれまで水月雨(MOONDROP)へ抱いてきた、中高域の美しさや女性ボーカルを伸びやかに聴かせる音作りという印象も変わらなかった。

そして、なにより印象に残ったのは、音全体の厚みだ。

一音一音にしっかりと芯があり、音像には十分な密度がある。それでいて低域だけが前へ出ることはなく、それぞれの帯域が自然なバランスでまとまっている。

低域そのものへ強い個性を与えたというよりも、“サウンド全体へ厚みや充実感を加えた”。

そのような印象を受けたと言った方が近いだろう。

試聴を重ねるにつれ、16基ものBAドライバーを低域へ割り当てた構成が、サウンドへどのように表れているのか、少しずつ見えてきたように感じてきた。以降では、その印象を特に強く感じた楽曲をもとに、実際の試聴内容を紹介していきたい。

[ALEXANDROS]「閃光」

Armature Art 24の音作りを象徴しているように感じた楽曲の一つが、[ALEXANDROS]「閃光」だった。

イントロで鳴るアルペジオはクリアで見通しが良い。しかし、線が細い印象はなく、一音一音へしっかりとした厚みが感じられる。

クリーントーンから歪みへ切り替わった瞬間、サウンド全体の熱量が一段高まる。ギターの存在感はさらに増すものの、音が膨らみ過ぎることはない。楽曲全体が一段ギアを上げたような力強さがありながら、それぞれの音は自然なバランスを保っていた。

特に印象へ残ったのは、歌い出し付近で刻まれるブリッジミュートのギターだ。

ザクッとした粒立ちの良さが心地良く、ストラトキャスターらしいシングルコイルのエッジもしっかりと感じられる。一方で、エッジだけを強調した細いサウンドではない。十分な厚みを伴いながらも切れ味は損なわれておらず、ギタリストであれば思わず気持ち良いと感じるようなバランスに仕上がっていた。

これだけギターへ存在感があっても、ボーカルが埋もれることはない。自然に前へと定位し、これまで筆者が抱いてきた水月雨(MOONDROP)らしい中高域の美しさも十分に感じられる。

以前レビューしたMOONRIVER IIIでは、それぞれの帯域が整理され、楽曲全体が非常に聴きやすくまとめられている印象を受けた。Armature Art 24も、その聴きやすさという方向性はどこか共通しているようだ。

そのうえでArmature Art 24は、サウンド全体へ厚みと低域の土台感を加えることで、バンドサウンドへさらなる力強さを与えているように感じる。

こうした印象は通常音源だけで終わるものではなく、ライブ音源ではまた異なる形で表れていた。

[ALEXANDROS]「閃光」Live

一般的にライブ音源は通常音源とは音作りそのものが異なるため、単純に優劣を比較できるものではない。しかし本楽曲の場合、Armature Art 24から受けた「厚み」という印象はそのままに、ライブならではの魅力がより鮮明に描かれているように感じた。

イントロのアルペジオは通常音源と同様にクリアで、一音一音へ厚みが感じられる。その一方で、左右へ大きく広がる空間表現が加わることで、ライブ会場ならではの空気感まで自然に伝わってくる。

そして歪みが加わると、その印象はさらに強くなる。

通常音源の場合では、多くの音が重なり合う中でも、それぞれの音が整理されて聴こえることが印象的だった一方で、ライブ音源では一つひとつの演奏がより鋭く、前へ飛び出してくるような感覚がある。

特に歌い出しで刻まれるブリッジミュートのギターは、その違いを最も強く感じた場面だった。

ザクッとしたアタック感はそのままに、会場へ響き渡る空気感まで自然に描き出される。さらにAメロのギターフレーズでは、通常音源以上にシャープさや荒々しさが印象へ残り、「こんなにも熱量のある演奏だったのか」と思わず引き込まれた。

サビへ入ると、広い空間へバンドサウンドが一気に広がり、ライブならではの高揚感がさらに増していく。

通常音源では厚みや整理されたバランスが印象的だったのに対し、ライブ音源では演奏の荒々しさや勢いがより前面へ現れ、思わず音量を上げたくなるような高揚感があった。

通常音源では情報量の多さを心地良くまとめ上げ、ライブ音源では熱量や空間表現を余すことなく描き出す。そのどちらにも共通していたのは、一音一音へ感じられる厚みだった。

音源が変われば、求められる表現も変わる。それでもArmature Art 24は、その軸を崩すことなく、それぞれの音源が持つ魅力を自然と引き出してくれるように感じた。

16基の低域用BAドライバーを支える設計

試聴を進める中で、何度も頭に浮かんだのが、この「厚み」はどこから生まれているのだろうかという疑問だった。

Armature Art 24は、片側24基ものBAドライバーを搭載した非常に特徴的なイヤホンである。その中でも、16基ものBAドライバーを低域用として採用している点は、特に興味深く感じた。

片側24基ものBAドライバーを搭載

この16基のBAドライバーは単純に並べられているのではなく、8グループへ分けられ、それぞれに遅延順序を設けた「SUPERWOOFERモジュール」として構成されている。水月雨(MOONDROP)では、高密度感や豊かな低域表現、そして安定した中低域の再生を目指した設計としている。

もちろん、この構造が実際にどのような音へ結び付いているのかを、聴感だけで判断することはできない。

しかし、試聴を通して何度も感じた一音一音の厚みや密度感を思い返すと、この8グループという構成も、その印象へ少なからず関係しているのかもしれない。そう考えると、16基という数字だけでなく、それをどのように機能させるかという設計そのものが興味深く感じられた。

24BAという数字は確かに目を引く。しかし、今回興味深く感じたのは、その数字そのものではなかった。

試聴を通して感じた厚みや密度感、そして通常音源とライブ音源で共通して感じられた一貫した音作りを振り返ると、Armature Art 24は「24BAを搭載したイヤホン」というよりも、「24基のBAドライバーをどのように協調させるか」を追求したイヤホンなのではないか。そんなことを考えさせられる一台だった。

細部まで作り込まれた製品づくり

24BAというインパクトや音質へ目が行きがちなArmature Art 24だが、実際に手へ取ると、製品そのものの完成度も非常に高いことへ気付かされる。

所有欲を満たすデザイン

まず印象に残ったのがデザインだ。

フェイスプレートにはチタン合金を採用し、「氷華」を思わせる結晶模様が施されている。光の当たり方によって表情が変わり、派手さとは異なる上質さを感じさせる仕上がりとなっていた。

光の当たり方によって表情が変わり、派手さとは異なる上質さを感じさせる仕上がり

その上で、個人的により魅力を感じたのは透明度の高いシェルである。

内部へ収められたBAドライバーや音響構造がうっすらと見え、「24BA」という特徴的な構成を視覚的にも楽しめる。メカニカルなデザインが好きな人であれば、思わず見入ってしまう完成度だ。

内部へ収められたBAドライバーや音響構造がうっすらと見え、「24BA」という特徴的な構成を視覚的にも楽しめる
内部へ収められたBAドライバーや音響構造がうっすらと見え、「24BA」という特徴的な構成を視覚的にも楽しめる

また、フェイスプレートには窒化処理も施されており、長期間使用することまで考えられている点にも好感を持った。

実用性を考えたケーブル構成

Armature Art 24は0.78mm 2Pinを採用しており、リケーブルにも対応している。

付属ケーブルは3.5mmと4.4mmプラグを交換できる構造となっているため、再生環境に合わせて追加でケーブルを購入する必要がない。この点は非常に実用的だと感じた。

付属ケーブル
付属ケーブル

一方で、“取り回し”という点では特別優れている方では無いだろう。決して扱いづらいわけではないものの、柔らかく軽快に扱えるタイプを想像していると少し印象は異なる。

ケーブル部分

それでも、標準ケーブルだけで3.5mmと4.4mmの両方へ対応できる利便性は高く、多くのユーザーにとって扱いやすい構成と言える。

3種類のイヤーピースが支えるフィット感

Armature Art 24は24基ものBAドライバーを搭載していることもあり、筐体にはある程度の厚みがある。そのため、装着感はイヤーピースとの相性が重要になる製品だと感じた。

その点、本製品には標準シリコン、UC、新開発のATFを含む3種類のイヤーピースが付属している。

標準シリコン、UC、新開発のATFを含む3種類のイヤーピースが付属
標準シリコン、UC、新開発のATFを含む3種類のイヤーピースが付属

実際に試したところ、それぞれ装着感に違いはある一方で、大きく不満を感じるものはなかった。選択肢が3種類用意されていることで、自分に合った組み合わせを見つけやすい点は安心材料になるだろう。

イヤーピースは音質だけでなく装着感にも大きく影響する。筐体サイズを考えても、このように複数種類が標準で付属していることには大きな価値を感じた。

製品スペック紹介

項目内容
ドライバー構成(片側)16-in-1 低域BAドライバー / 4基中域BAドライバー / 4基高域BAドライバー
再生周波数帯域7Hz~35kHz
有効周波数帯域20Hz~20kHz(IEC60318-4、-3dB)
インピーダンス5.8Ω ±15%(@1kHz)
感度119dB/Vrms(@1kHz)
全高調波歪(THD)THD ≤ 0.7%(@1kHz、94dB)
コネクター0.78mm 2Pin
プラグ3.5mmステレオミニプラグ / 4.4mmバランス接続プラグ

「Armature Art 24」は24BAという数字だけでは見えてこない魅力が詰まった1台

Armature Art 24を初めて知ったとき、最も興味を惹かれたのは、片側24基、そのうち16基を低域用として採用したという非常に特徴的なスペックだった。正直なところ、試聴前はその数字ばかりへ意識が向いており「16基も低域へ割り当てたイヤホンとは、一体どのような音なのだろうか。」そんな興味から試聴を始めたことを覚えている。

しかし、実際に耳へ届いた音は、そのスペックだけでは語れないものだった。
試聴を通して強く印象へ残ったのは、一音一音へ自然な厚みを与えながらも、楽曲や音源ごとの魅力を素直に引き出す音作りだ。

さらに、24基のBAドライバーをどのように協調させるのかという設計や、透明度の高いシェル、交換式プラグを採用したケーブルなど、細部まで製品づくりへこだわっていることも印象的。もちろん、ケーブルの取り回しなど気になる点はあったものの、それを含めても「より良い製品を届けよう」という開発陣の姿勢が随所から伝わってくる。

スペックのインパクトは、Armature Art 24を知るきっかけとして十分すぎるほど魅力的だ。しかし、実際に試聴し、製品へ触れてみることで見えてきたのは、話題性だけに頼ったイヤホンではなく、その構成をどのような音として成立させるのかを真剣に突き詰めた製品だったということだ。

レビューを終えた今、筆者の印象へ残っているのは、24BAという数字ではなく、実際に耳で聴いて感じた音作りと製品としての完成度だった。

Armature Art 24は、スペックのインパクトだけでは語り切れない。実際に試聴することで、その音作りの面白さをより深く実感できるイヤホンだ。

Armature Art 24

ギャラリー

MOONDROP

イヤホン

Armature Art 24


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出典・関連リンク

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