小型化したのにこの実力、全方位で使える驚くべき ニコン Z8
そもそもZ8とは
今回紹介するZ8は、2021年12月に発売された「ニコン Z シリーズ」のフラッグシップモデル「ニコン Z9」と同等の高い機能と性能を小型・軽量化されたボディに詰め込んだミラーレスカメラだ。小型・軽量化したとはいえ、ニコンらしい堅牢な印象は相変わらずなのでファンの皆様は安心してほしい。
詳細な紹介は後述するとして、まずはスペックを紹介しよう。 なお、全て記載するとこれまた長くなってしまうので、基本的な箇所と本記事で触れておきたい要素のみに抜粋する。
Z8の主要スペック表
レンズマウント | ニコン Z マウント |
有効画素数 | 4571万画素 |
撮影素子 | 35.9×23.9mmサイズCMOSセンサー、フルサイズ/FXフォーマット |
静止画記録画素数 | ・撮像範囲[FX(36×24)]の場合: 8256×5504ピクセル(サイズL:45.4M) 6192×4128ピクセル(サイズM:25.6M) 4128×2752ピクセル(サイズS:11.4M) ・撮像範囲[DX(24×16)]の場合: 5392×3592ピクセル (サイズL:19.4M) 4032×2688ピクセル(サイズM:10.8M) 2688×1792ピクセル(サイズS:4.8M) 等 |
画質モード | ・ NEF(RAW):RAW 14ビット(ロスレス圧縮、高効率★、高効率) ・ JPEG:JPEG-Baseline準拠、 圧縮率(約):FINE(1/4)、NORMAL(1/8)、BASIC(1/16)サイズ優先または画質優先選択可能 ・ HEIF:圧縮率(約):FINE(1/4)、NORMAL(1/8)、BASIC(1/16)サイズ優先または画質優先選択可能 ・NEF(RAW)+JPEG:RAW とJPEG の同時記録可能 ・NEF(RAW)+HEIF:RAW とHEIF の同時記録可能 |
ピクチャーコントロールシステム | オート、スタンダード、ニュートラル、ビビッド、モノクローム、ポートレート、風景、フラット、 Creative Picture Control(ドリーム、モーニング、ポップ、サンデー、ソンバー、ドラマ、サイレンス、ブリーチ、メランコリック、ピュア、デニム、トイ、セピア、ブルー、レッド、ピンク、チャコール、グラファイト、 バイナリー、カーボン) 等 |
ISO感度 (推奨露光指数) | ISO 64~25600(ステップ幅:1/3、1ステップに変更可能)、ISO 64に対し約0.3、0.7、1段(ISO 32 相当)の 減感、ISO 25600に対し約0.3、0.7、1段、2段(ISO 102400 相当)の増感、感度自動制御が可能 |
AFエリアモード | ピンポイントAF(静止画モードのみ)、シングルポイントAF、ダイナミックAF(S、M、L、静止画モードのみ)、ワイドエリアAF(S、L、C1、C2)、オートエリアAF、3D-トラッキング(静止画モードのみ)、 ターゲット追尾(動画モードのみ) |
記録媒体 | CFexpressカード(Type B)、XQDカード、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード、 SDXCメモリーカード(SDHCメモリーカード、SDXCメモリーカードは UHS-II規格に対応) |
ダブルスロット | メモリーカードの順次記録、バックアップ記録、RAW+JPEG分割記録、RAW+HEIF分割記録、 JPEG+JPEG分割記録、HEIF+HEIF分割記録ならびにカード間コピー可能 |
動画記録画素数/フレームレート(記録レート) | ・ 7680×4320(8K UHD):30p/25p/24p ・ 3840×2160(4K UHD):120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p ・ 1920×1080:120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p ※ 120p:119.88fps、100p:100fps、60p:59.94fps、 50p:50fps、 30p:29.97fps、25p:25fps、24p:23.976fps |
映像圧縮方式 | N-RAW(12bit)、Apple ProRes RAW HQ(12bit)、Apple ProRes 422 HQ(10bit)、 H.265/HEVC(8bit/10bit)、H.264/AVC(8bit) |
画像モニター | チルト式8cm/3.2型TFT液晶モニター(タッチパネル)、約210万ドット、視野角170°、視野率約100%、 明るさ調整可能(マニュアル15段階)、カラーカスタマイズ可能、縦横チルト可能 |
寸法(幅×高さ×奥行き) | 約144×118.5×83mm |
質量 | 約910g(バッテリーおよびメモリーカードを含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)、 約820g(本体のみ) |
先ほどあげた要件とも比べてみると、スペックだけで大半は満たしているのがわかる。記憶媒体に関してはダブルスロットで、今回の要件にぴったりな2枚挿しが可能となっている。
一部表に記載していないがそもそも要件の箇所でも書いた通り、よっぽどの機種でなければライター仕事におけるスチール撮影の要件は満たしているものが大多数のため、割愛する。
以下の点のみスペックだけでは判別がつかない箇所として、実際に使用した感想にてお伝えできればと思う。
スチール撮影における主な要件
- 取り回しの良いカメラボディ(拡張性というよりコンパクトさ)
- マニュアル時に必要なボタンが独立して押しやすい
映像撮影における主な要件
- 取り回しの良いカメラボディ(コンパクトさも大事だが、ある程度の拡張性も)
フラッグシップモデル「ニコン Z9」との比較
主にZ9と比較されることが想定される製品のため、特に注目すべき点に関して比較をしよう。
Z9との違い:ボディ編
まずはボディから、全体的なスケールダウンを図っており、高さに至っては約3cmも小さくなっている。重量としても約340g軽くなっており、現場での取り回しの良さ、疲労感の軽減に寄与することだろう。
Z9との違い:性能編
次に性能面だが、ここはほぼ同スペックを継承する形となった。強いて言うならバッテリーが異なるものを使用している点もあり、動画の連続撮影時間としては短くなっている。それでも4K 60pで最大125分は持つ上に、外部バッテリーからの給電専用ポートも増設されたので全く問題ないだろう。付け加えるなら、Type-C端子に対応したUSB通信ポートというのは外部モニターへの出力が可能であったりと映像撮影の際に様々な用途で使用するため、給電専用ポートはだいぶありがたい存在だったりする。
Z9との違い:機能編
最後に機能面だが、ここはライター視点においても助かる機能が増えた形だ。 まずはオートフォーカス時の被写体自動検出機能に、飛行機モードが追加された。筆者の環境や用途だとあまり出番はないものの、撮影された作品を見るとすごく空港に行きたくなる。(そういうお誘い、お待ちしております)
個人的に一番助かるのが、作画面における美肌効果の追加だ。人の顔というのはお世辞にも綺麗とは言えないことも多く、撮影後の加工の工程にて誤魔化すシチュエーションはかなり多い。広告案件に触れていても、あのタレントさんの肌荒れが、みたいな話はしょっちゅうある。
どうした急に、一眼レフ「D80」 vs ミラーレス「Z8」
カメラについて語っていたら熱が溢れてしまったので少し脱線をする。大事なことなのでもう一度お伝えする、脱線をする。序盤でも少し触れたが、木村拓哉さんがCMに出ていたことが記憶に懐かしい、旧愛機であるD80について少し紹介をさせてもらいたい。
(興味がない人はこちらを選んで次のZ8の使用感の話題までスキップして欲しい)
「D80」 vs 「Z8」スペック対決
それでは参ろう。まずはスペック比較からだ。
D80 | Z8 | |
発売日 | 2006年9月1日発売 | 2023年5月26日発売 |
有効画素数 | 10.2メガピクセル ※筆者注 ≒1020万画素 | 4571万画素 |
撮像素子 | 23.6×15.8mmサイズ、原色CCD、 総画素数10.75メガピクセル、ニコンDXフォーマット | 5.9×23.9mmサイズCMOSセンサー、 フルサイズ/FXフォーマット |
記録画素 | [L] 3872×2592ピクセル、[M] 2896×1944ピクセル、 [S] 1936×1296ピクセル | 撮像範囲[FX(36×24)]の場合: 8256×5504ピクセル(サイズL:45.4M) 6192×4128ピクセル(サイズM:25.6M) 4128×2752ピクセル(サイズS:11.4M) |
ISO感度 | ISO 100~1600、ISO 1600に対し約1段まで増感可能(1/3段ステップ) | ISO 64~25600(ステップ幅:1/3、1ステップに変更可能)、ISO 64に対し約0.3、0.7、1段(ISO 32相当)の減感、ISO 25600に対し約0.3、0.7、 1段、 2段(ISO 102400相当)の増感、感度自動制御が可能 ※ 階調モードHLG設定時は、ISO 400~25600 |
シャッター スピード | 1/4000~30秒(1/3、1/2段ステップ)、bulb、タイム | 1/32000~30秒(ステップ幅:1/3、1/2、1ステップに変更可能、撮影モードMでは900秒まで延長可能)、Bulb、Time |
フォーカスエリア / フォーカスポイント | 11カ所のフォーカスエリアから1カ所を選択可能、中央のフォーカスエリアをノーマルフレームからワイドフレームに切り換え可能 ※筆者注 ポイントではなくエリア表記 | 493点 ※ 静止画モード、 撮像範囲フルサイズ/FXフォーマット、 シングルポイントAF時 |
動画撮影機能 | なし | ある上に優秀 |
この比較に何の意味があるのかと野暮なことは問わないでほしいが、時代の流れって恐ろしい。
どこから触れていいか迷うほどではあるが、個人的に思い出深いのは撮像素子の箇所で、現代で主流のCMOSセンサーではない。明確に同条件で比べたことはないが、なんとなく色が違う?かな?程度に当時は思っていた。少し調べてみると、今でもCCDセンサーが好きなコアなファンはいるようだ。ちなみにD80の後に所持していたD90ではCMOSセンサーが採用されている。
また、当然ながら動画撮影機能はない。こちらもD90では動画撮影機能が付いており、どうやら一眼レフで初めて搭載された機種だったようだ。実際に撮ったこともあるが、まぁ、うん。一眼レフ最初の動画機能搭載機を所持している筆者が動画機としての一面も持つZ8を紹介する日が来るとは、少々感慨深い。
そもそもD80-90は当時のミドルモデル?でZ8とはコンセプトもターゲットも違うのだが、突っ込みだしてはキリがないので足りない場合は各自で行って欲しい。SNSにでも書いてもらえたなら幸いだ。
D80で一番好きだったのはシャッター音
これ以上は脱線が過ぎるので最後に一点だけお伝えしたいと思うのだが、D80で一番気に入っていたのはシャッター音だ。共感してくれる読者が多いことを願いたいが、これが本当に良い。記憶が確かではないが、CM内で何度もピッピッという音がしているが、その音はシャッター音ではなく半押し時に鳴るピント合わせの音だ。シャッターを切った時は小気味良いパシャッという音がする。余談だが、最近の機種は音も選べるようになったので、機種を音で選ぶ、みたいな機会も減ったのかもしれない。
カメラは良いモノ
今になって思い返すと、当時父親がD80を購入していなければ今の自分はいないかも知れず、改めて幼少期の体験というのは重要だなとアラサーながら思った次第である。もしお子さんがいる方は、ぜひカメラを握らせる機会があると筆者的には嬉しい。デジタルネイティブ世代でiPhoneがすぐ横にある世代だとそもそも難しいかもしれないが、カメラはカメラで良いものだ。もしかしたら内向的になりやすい可能性もなくはないが、筆者にとっては大事な思い出だとお伝えしておこう。結果仕事にも活きている部分もある。(まぁ、最低でも中学生くらいまで待った方が故障のリスクは減ると思うが。)
脱線にお付き合いいただいた稀有な読者の方に感謝しつつ、次は長らくお待たせした実際に使用した感想をお伝えしよう。