「ASUS ProArt Display PA32UCXR」を実機レビュー!HDR時代のクリエイター向けキャリブレーションモニターでベストな色を届けよう

HDR(High Dynamic Range)という言葉が世の中に広まり出して早数年。テレビやカメラ、果てはスマートフォンなど、現在においては様々な機器で手軽にHDRな映像を楽しむことができるようになった。では一方こうした映像を撮って編集するとなった際に、必要なモノとはなんだろうか。

まずはHDR映像が撮れるカメラ。とはいえ単に対応したフォーマットの映像と言う意味でなら、最近の機種ならiPhoneでも撮れてしまう。 次にPC。確かにコレは重要だが、実はHDRそのものにはそこまで大きな負荷はかからないため、一般的な映像編集に適したPCを用意すればいいだろう。

なら何が特筆して必要かと言えば…そう、モニターである。

というワケで今回は、そんなHDR時代の映像制作にオススメしたいクリエイター向けキャリブレーションモニター「ASUS ProArt Display PA32UCXR」についてご紹介していこう。2024年7月12日に発売され、市場想定価格は548,820円(税込)。

ASUS

ProArt

ASUS ProArt Display PA32UCXR

目次

4K 32インチの大画面を備えたキャリブレーションモニター「ASUS ProArt Display PA32UCXR」

本製品最大の特徴であるHDRへの対応能力について言及する前に、まずは「クリエイター向けのモニター選び」について触れつつ、本製品の基本的な性能について語っていきたい。

ProArt-PA32UCXR_usage1

第一に、クリエイターがモニターを選ぶ上で注意すべきモニターの性能は以下の通りだ。

  • (色域やキャリブレーションへの対応)
  • 画面サイズと解像度
  • 輝度(HDRの場合)

ちなみに筆者自身は写真やイラストなどを趣味にしており、以前はクリエイター向けのPCブランドで製品担当をしていた経験もあるため、少しは信用に足るはずだ。

それでは上記を踏まえて「ASUS ProArt Display PA32UCXR」について見ていこう。

DCI-P3 97%、sRGB 100%の広色域に対応し、ハードウェアキャリブレーションが可能

クリエイター向けのモニター選びにおいて、なんといっても重要なのはだ。もちろん一口にクリエイターと言ってもジャンルは様々なので一概には言えないかもしれないが、色のある作品を扱うのであればまず気にしておいて損はないポイントになるだろう。

本製品はASUSのクリエイター向けラインアップである「ProArt」に属する製品らしく、かなり広色域かつ精度の高いモニターとなっている。スペックシート上で紹介されている範囲では、最も普及しているsRGBが100%、主に写真などで使用されているAdobe RGBでは99%、モニターやスマートフォンなどで近年採用の増えているDCI-P3なら97%、主に放送系などに使用されるRec.2020は87%の対応だ。加えて色差についてもΔE < 1と非常に高い色精度を実現しており、色味を調整する際の基準として使用するのに十分な性能を持っていると言えるだろう。

そしてこれらの表示色域を最終的なアウトプット、つまり印刷やWEB動画、テレビ放送など媒体に合わせて適時切り替えることで、製作者自身が意図した色や画作りが届けやすくなる。これが”クリエイター向けモニター”を使う大きなメリットだ。

ProArt-PA32UCXR_presets
対応する色域を含めモニター側に複数のプリセットが用意されており、手軽に切り替えることができる。

とはいえ個体による差や経年による色の変化なども発生するため、プリセットにあるからOK、スペックシートに書いてあるからOKと言うわけでも無い。より正確な色で見るためには定期的なキャリブレーション(調整)が必要になる。

その点についても「ASUS ProArt Display PA32UCXR」なら安心だ。

PA32UCXRはモニター本体にキャリブレーション用のセンサー(カラーメーター)を内蔵しており、別途センサーを購入する必要や都度設置する手間無しに調整作業が可能となっている。手順は簡単でPC本体とモニターを、付属のUSB Type-C to Aケーブル、もしくはThunderbolt 4ケーブルで接続し、専用ソフトウェア「ASUS ProArt™ Calibration」をインストールすれば準備完了。あとは目的の色域を選択し、待つだけだ。

1点注意すべきポイントとしては、モニターのウォームアップと実行にそれぞれ最大30分程度かかる事だろう。キャリブレーション中はモニターが使用できないため「さあ作業するぞ!」というタイミングよりは、一仕事終えた後に行うのがオススメだ。またスケジュール実行もできるため、ある程度自動に任せてしまうのも良いかもしれない。

ProArt-PA32UCXR_calibration

32インチの大画面と4K解像度がもたらす高い作業効率

続いて見るべきポイントは画面サイズ解像度だ。この点においては好みや設置環境に左右される部分が大きいものの、可能な限り大きな画面と、画面サイズに合った解像度を備えているモニターを選ぶと良いだろう。理由としては大画面かつ適切な解像度のモニターを選ぶことで、細部の確認や作業効率の向上が期待できるからだ。

そして「ASUS ProArt Display PA32UCXR」は、そうした視点で見た際に最良と言っていいほどのバランスに仕上がっている。

ProArt-PA32UCXR_installation

32インチの大画面はデスク上に設置する場合の限界値に近い大きさとなっており、一般的なPCデスクであればギリギリ邪魔にならずに置ける絶妙なライン。そして4K(3840 x 2160 px)という高解像度でデスクトップを表示した際にも、アイコンやテキストが小さくなりすぎず十分視認ができる大きさだ。

この点は実写系の素材を扱う方や、ツールパレットの多いソフトウェアを使用している方に大きなメリットがあり、例えばピントの確認や細部の解像感がはっきりと確認できるほか、パレットで埋まりがちな編集画面においても余裕をもってウィンドウを配置することが可能だ。

ProArt-PA32UCXR_edit-image

映り込みの少ないノングレアパネルと付属のフード

また必須ではないものの、個人的にあった方が嬉しい要素がノングレアパネルモニターフードの存在だ。特にフードについては部屋の照明が多くの場合天井についている都合上、フードが無いと画面に見える色味が大きく変化してしまう事もある。「ASUS ProArt Display PA32UCXR」なら初めから付属のフードも用意されており、パネル自体も映り込みが少ないため設置環境の影響を受けにくいはずだ。

ちなみにテストとして、意図的に撮影用の照明を近距離で当ててチェックをしてみたのが下記の写真。正直ここまで強い光が当たる環境であれば設置場所を変えた方が良いレベルだが、それでも光が映り込んだ場所を除き、かなり自然な発色を保っていることが見て取れる。またフードを取り付けることで、上方向からの強い光でも大部分をカットできるようだ。一般的な住宅の照明であればほぼ上からの光になることや、ここまで指向性の強い光が当たることはまず無いため十分な性能と言える。

ProArt-PA32UCXR_test-image
下の写真を撮影した際の環境。カメラが異なるため色味はズレてしまっているが、かなり近い距離から撮影用の照明を当てて撮っている。

少しだけ気になる点といえば、フードが分割式になっておりモニターにネジ留めで固定する必要が有るところ。ただ基本的にフードを頻繁に取り外すことは無いため、そこまで大きな問題になることも無いはずだ。

「ASUS ProArt Display PA32UCXR」はHDRでの撮影・編集を可能にする1600nitの高輝度を備えたモニター

さて本製品の基本的な性能をさらったところで、本題である「なぜ ASUS ProArt Display PA32UCXR が、HDR時代の映像制作にオススメと言えるのか」について語っていきたい。

とはいえコレは単純な話で、高い輝度が無ければHDR映像を編集することが難しいためである。
一旦理屈は横に置いて、視覚的にわかりやすい写真を見ていただこう。

この2枚はLightroomのHDR編集機能を用いてRAW現像した写真を、同じ画角・同じ光源・同じカメラ設定で撮影した2枚だ。また公平性を期す為に2枚とも撮って出し(RAW現像による処理を行わない写真)を使用している。パッと見ただけでもHDR機能をOFF、つまり輝度を制限してHDR非対応のモニターと同じ表示方式にした場合、画面内コントラストが大きく低下し、大部分が白飛びしてしまっていることが分かるだろう。

そう、輝度が低いモニターではHDRの情報をもった映像や写真は、白飛びしてしまい正しく表示できないのだ。そんな状態で編集するのは、まさに暗闇で何かを探すかのようなものである。(実際にはホワイトアウトだが)

当然PQやHLGといったHDRの方式による違いもあるだろうが、それはあくまで完成した映像をどの媒体で見るかの話。編集段階においてはなるべく高輝度まで見えているに越したことは無いだろう。これは映像の編集作業中、プロキシデータではなくそのままの素材で編集した方が良い、という考え方と近しいものがあるはずだ。

上記を踏まえると、HDRな映像編集における「ASUS ProArt Display PA32UCXR」の優位性が良く分かる。

ProArt-PA32UCXR_usage2

PA32UCXRでは最大1,600nitのピーク輝度1,000nitの持続輝度を備えており、現状普及率の高い最大1,000nit前後のテレビ・モニターやスマートフォンをターゲットとした映像を作りやすい。加えて映画などで使用されるDolby Vision®、テレビがメインのHLG、および WEB系の映像やゲームなどに多いHDR10など複数のHDRフォーマットをサポートしているため、ターゲットに合わせた表示で制作中の映像を確認できる。

またDolby Vision®やHDR10といったPQ方式を採用しているHDRフォーマットでは輝度の最大値が10,000nitに達する。そうした1,000nitを超えるコンテンツを扱う際にも、本製品であれば「PQ Hard Clip」「PQ Optimized」といった複数の表示形式が使えるため比較的安心だ。

「PQ Hard Clip」では本製品の最大輝度まで、映像の持つ輝度に合わせた正確な輝度表示を。「PQ Optimized」では本製品の最大輝度に合わせて映像の表示輝度を調整し、最適化した形で表示してくれる。つまり本製品の最大輝度である1,600nit以下の明るさを持つ箇所を調整する際は「PQ Hard Clip」を使用し、それ以上の輝度を持つ箇所は「PQ Optimized」を使用して調整すればおおよそ正確な見た目を把握しながら、本製品の持つ最大輝度以上のコンテンツも扱えるというワケだ。

現在市場に多い1,000nit前後の端末に合わせた映像を作るのに適した表示輝度を持ちつつ、それより高い輝度にも対応可能となれば、普及の過渡期にある”今”においてオススメの製品であることは疑いようもないだろう。

ProArt-PA32UCXR_PQ-mode
「ASUS ProArt Display PA32UCXR」が対応する3つのPQ表示形式。ちなみに「PQ Basic」については一般的なパフォーマンスになるとのこと。編集作業中よりはコンテンツの視聴や成果物のチェック時に使用すると良さそうだ。
引用元:https://www.asus.com/jp/displays-desktops/monitors/proart/proart-display-pa32ucxr/

クリエイター向けらしい要素を備えたポート・スイッチ回りで使い勝手も抜群な「ASUS ProArt Display PA32UCXR」

最後に本製品のポートやスイッチ回りについても見ておこう。ここにもクリエイター向け製品である「ProArt」シリーズらしい特徴が隠れている。まず多くの方が気になるであろうポート回りから。

Thunderbolt™ 4のデイジーチェーンに対応し、周辺機器との連携も容易

主に映像系のポートとしては HDMI v2.0DisplayPort1.4Thunderbolt™ 4が用意されており近年の高性能PCと接続することを考えれば十分なラインアップだ。また2ポートあるThunderbolt™ 4の片方はUSB PD(Power Delivery)90Wに対応し、ノートPC等と接続する際には映像・USB信号・充電を1本のケーブルで賄うことができる。

加えて「ASUS ProArt Display PA32UCXR」はThunderbolt™ 4のデイジーチェーンにも対応しているため、例えばThunderbolt™ 4対応のモニターを接続したり、ポータブルSSDなども接続が可能。高速なネットワークストレージ(NAS)などを置いているオフィスであれば、10Gbps対応のLANアダプターを繋いでも良いかもしれない。もちろんマウスやキーボードなどを接続するのに便利な通常のUSBハブも備えているので、なにかと接続機器が増えやすいクリエイターには嬉しい構成だろう。

ProArt-PA32UCXR_ports
ポート類は画面側から向かって左手に集中して設置されている。
画像左からHDMI v2.0 x 2ポート/ DisplayPort1.4 / Thunderbolt™ 4 x 2(右側はUSB PD 90Wに対応)/ 3.5mmイヤホンジャック /USB 3.2 Type-A x 3ポート / USB 3.2 Type-C x 1 ポートだ。
ProArt-PA32UCXR_power-supply
画面側から見て右手側には、主電源と電源コネクタが用意されている。

素早い反応と補助機能でストレスフリーにしてくれるボタン・センサー類

お次は表側、電源スイッチ回りだ。こちらには電源ボタンのほかに入力切替やプリセットなど各種メニューへのショートカットスイッチ、そして項目選択のためのスティックが用意されている。

低価格なモニターなどではこの操作メニューの動作が非常に”もっさり”としておりイライラさせられがちだが、そこはプロ向け製品。各ボタンの反応も良く、スティックによる直感的な入力ができるため操作は非常にスムーズだ。

ProArt-PA32UCXR_switch
テスト中なんども色域変更や設定変更を行ったが、一度も固まることなどなく、かなりスムーズに入力・変更することができた。

そして電源ボタンとは逆側、画面向かって左手側には前述のカラーメーターと環境光センサー、近接センサーが備わっている。環境光センサーは周囲の明るさに合わせ自動でモニターの明るさを調整してくれ、近接センサーはモニターの前にユーザーが居ない時に自動でモニターを暗くしてくれるという補助機能だ。この2つは併用できないためどちらを取るかは考え物だが、筆者個人としては節電に効きそうな近接センサーを推したい所。目の疲れが気になる方は環境光センサーを活用するのもオススメだ。

ProArt-PA32UCXR_sensor

「ASUS ProArt Display PA32UCXR」は色を扱う全てのクリエイターにオススメのプロフェッショナルな1台

以上が、筆者のお伝えしたい「ASUS ProArt Display PA32UCXR」がHDRの映像制作を目指すクリエイターにオススメの理由である。スマートフォンの性能向上に伴い、多くの人にHDRを体験できる端末が行き届きつつある今だからこそ、HDRに対応したモニターが必要なのだ。また、現状でまだHDRコンテンツを手掛ける予定の無い方であっても、前述の広色域かつ高精度な製品である事やキャリブレーションへの対応など、色を扱う全てのクリエイターにオススメできる1台と言える。

あえて更に明確なターゲットを定めるなら、筆者としてはカメラマン・エディター・カラリストが分かれるような大きめの現場よりは、それらを一気通貫で行うビデオグラファーなど少数精鋭で行う環境に適した製品のようにも思える。PA32UCXRの持つマルチな性能は、そうしたシーンにおいて画作り・色づくりを行う上での大きな指標になってくれるはずだ。

ハイエンドな製品になる分価格こそ高価だが、価格に似合った表示品質と性能を提供してくれる「ASUS ProArt Display PA32UCXR」。このモニターで、自身の思う”ベストな色”を届けてみてはいかがだろうか。

製品概要

製品名:ASUS ProArt Display PA32UCXR
市場想定価格:548,820円(税込)
発売日:2024年7月12日
製品ページ:https://jp.asus.click/onesuite_PA32UCXR

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