カーボンニュートラルが叫ばれて久しい昨今、各自動車メーカーはハイブリッド車両からEV車両へと徐々にシフトをはじめ、街中で充電スタンドを見かけることも増えてきたように思う。また東京都では新築住宅へのソーラーパネル設置義務化が予定されているなど、脱炭素を巡る動きはますます活発化していると言える。将来的にはソーラーパネルを積んだオール電化の住宅に住み、自動車はEVという生活スタイルが一般的になるのかもしれない。
そんな未来の先駆けとして注目したい製品が、今回紹介するV2Hシステムの新製品「EV パワー・ステーション」だ。この度onesuite編集部では製品発表会にお邪魔してきたので、現地の様子を交えつつ紹介しようと思う。
EV車両を自宅用のバッテリーとして使うV2Hシステム
まず本題に入る前にV2Hシステムについて概要を説明しておこう。V2Hとは「Vehicle to Home」の略であり、その名の通りVehicle(車)からHome(家庭)へ電力を供給する仕組みのことだ。災害時など電力会社からの供給が見込めない時にも、自分の車を予備バッテリーとして扱うことができるため、止めることが難しい冷蔵庫や冷暖房機器などへ電力供給を維持できるというのが最大のメリットと言える。
大幅な小型軽量化が行われた第三世代「EV パワー・ステーション」
今回発表された第三世代「EV パワー・ステーション」はこのV2Hシステムを開発したニチコン株式会社の新製品で、現行モデルに比べ大幅な小型化と軽量化が行われていることが特徴だ。
第三世代「EV パワー・ステーション」は別ユニット化により設置の自由度が向上
なかでも注目すべきは、従来一体であったパワーユニットと車両接続用のプラグホルダが別ユニットとなっている点だろう。これにより現行モデルでは設置が難しかった狭いガレージ内や駐車スペースなどでも、より省スペースかつ取り回しよく設置することができる。
またそれを後押しするのが本体の軽量化で、新規回路の採用および設計上の工夫と制御の調整を行なったことで効率がアップし、発熱量が低下したことで冷却ファンの搭載が不要となり約58%という大幅な軽量化に繋がったとのこと。そのため据置だけでなく、壁掛けでの設置が可能になったとのこと。またプラグホルダはポール設置も可能なため、壁が近くない場所に設置することもできるはずだ。
それ以外にも保証が10年付帯されていることや、使用可能温度が50℃まで広がったこと、加えて沿岸部のために重塩害対応品もオプションで用意されているなど、使用を続ける上での安心感も向上している。
独自開発の自動切替開閉器により専用分電盤が不要に
もう一つのポイントとして独自開発の自動切替開閉器を採用していることにも注目したい。この機構によりEV車両へ接続されている際(コネクタロック時)に停電が起こった場合、自動的に電力会社からEV車両へと電力の供給元を切り替えてくれるのだ。
それ以上に筆者として気になったのは副次効果の方。この切替器が非常に小さく、またこれによりV2H専用分電盤が不要になるのである。設置スペースはもちろん配線が簡素化するため施工費用の軽減にも期待でき、導入時のコストを抑えるという意味で非常に大きい変更点と言えるだろう。
V2Hに連動可能な「発展型太陽光パワーコンディショナ」
同時に発表された製品として「発展型太陽光パワーコンディショナ」も併せて紹介しておこう。この製品はソーラーパネルで発電した電力を家庭用に変換するパワーコンディショナ(以下、パワコン)であり、専用蓄電池への充電にも対応するハイブリッドパワコンとしての側面も持つ。
今回の製品ではそこにV2Hとの連動が加わったことが大きなポイント。ソーラーパネルで発電した電力を蓄電池だけではなく、EV車両に溜めることもできるのだ。これにより日中発電した電力のうち余剰分をより”かしこく”使うことができるだろう。
またこのパワコンはソーラーパネル用として単体導入も可能であり、余剰電力を売電以外の自家消費に利用したくなった際には蓄電池や「EV パワー・ステーション」を追加するなど、生活パターンに合わせて段階的に拡張していくことができるのもポイントと言える。
家×EVで広がるカーボンニュートラルな生活
ニチコン株式会社 代表取締役会長:武田一平 氏によると「EV車両は家庭用(蓄電池)の5−10倍のバッテリーを積んでいるが、ほとんど停まっており、駐車している時間の方が長い。」という。これは筆者の経験からも明らかで、車通勤などをしていないのであれば、それこそ1年のうち7−8割は自宅に停まっている時間になるのではないだろうか。
トークセッション内で慶応義塾⼤学⼤学院教授:岸 博幸 ⽒も言及していたが、そこに目をつけ2010年からV2Hの開発を行なっていたという事実は、正に先見の明があったと言えるだろう。当時から開発を続け今年で12年、国内シェアは90%であることからも需要の高さが伺える。
今後もEVやソーラー発電をはじめとしたカーボンニュートラル、再生可能エネルギーの必要性が高まっていくことは疑い用のない事実。「家で作った電気を家で使う」生活を目指し、我々消費者も行動を始める時期が来たようだ。