ここ数日噂されていたSony αシリーズのフラッグシップモデル最新作「α1 II」。初代のモデルが2021年発売だったこともあり、「そろそろか?」「いやα9 IIIが今年出たばかりだからまだでは?」など市場でも様々な予想が行われていた印象がある。そして、そんなα1 IIがついにベールを脱いだのが先日(2024年11月19日)のこと。
今回は縁あってその翌日に開催されたメディア向け発表に参加することが出来たため、発表会の様子を交えつつ本製品について紹介していこう。発売予定日は2024年12月13日で、11月26日 10時より予約開始。市場想定価格は990,000円前後だ。
製品概要
Sony
カメラ
α1 II
ILCE-1M2
製品名:Sony α1 II
製品型番:ILCE-1M2
発売日:2024年12月13日
予約開始日:2024年12月13日 10時
市場想定価格:990,000円前後
製品ページ:https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-1M2/
コンセプトは「高解像 x スピード」
前提として、Sonyのαシリーズは機種によってコンセプト分けされており、スピードを重視したα9シリーズや高解像のα7Rシリーズ、高感度耐性に優れたα7Sシリーズなど用途に即したシリーズ展開が行われている。そんな中でα1シリーズが司るのが「高解像 x スピード」だ。
5010万画素×秒速30コマの連射速度で撮りたいシーン逃さない
このコンセプトを叶えるため、今回発表されたα1 IIには有効約5010万画素のフルサイズ積層型CMOSセンサーExmor RS®が搭載されており、最新の画像処理エンジンBIONZ XR®との組み合わせにより高い解像性能と、ブラックアウトフリーでのAF/AE追従最高30コマ/秒の高速連射性能が可能。さらに最大1秒前までさかのぼっての撮影が可能なプリ撮影機能を備えていることで、スポーツシーンなど一瞬を切り撮ることが求められる現場で活躍する1台と言えるだろう。
ちなみにExmor RSは、α1と同じCMOSセンサーである。それだけポテンシャルの高いセンサーだったと言えるが、後述する各種性能の向上は、AIプロセッシングユニット等の画像処理アルゴリズムの改良によって実現したものだという。
進化したAFで一瞬を正確に切り撮ることが可能
また当然のことながらαシリーズのお家芸であるAF性能も進化を遂げている。最先端のAIプロセッシングユニットにより、リアルタイム認識AFが強化され姿勢推定技術が人物の頭部や胴体を瞬時に認識。なかでも人物の瞳認識精度が30%向上しているという。
もちろん動物や鳥、虫、乗り物(自動車、電車、飛行機など)も的確に追随してくれるようだ。加えて認識対象を自動で切り替えるオートモードが追加されたため、これまで以上にユーザーは被写体を収める事だけに集中できるはずだ。
手ブレや歪み、ノイズを抑えて打率を上げる
上記に加えてコンセプトに直結する要素と言えば、本機が備えた手ブレや歪み、ノイズ低減といった”打率を上げる”ための性能向上も見逃せない。
例えば手ブレ補正の面では、中心部 最大8.5段/周辺部 7.0段というミラーレスカメラの中でも最高峰の光学式手ブレ補正※を搭載。さらに高速シャッターを切った際に発生する歪みをアンチディストーションシャッターで抑え、チューニングにより中高感度の低ノイズ性能も向上させることで屋内で行うスポーツシーンにもより強くなったようだ。
※ CIPA2024規格準拠、Yaw/Pitch/Roll補正性能 FE 50mm F1.2 GM装着時、長秒時ノイズリダクションオフ時。
αSPECIALEVENT2024で実機を体験してみた
ここまでα1 IIの持つ象徴的な特徴や機能について紹介してきたが、ここからは上記を踏まえつつ、実機の写真と共に試用した筆者の感想をお伝えしていこうと思う。
性能に反して軽く、コンパクトなボディ
まず握って感じたのはその軽さだ。
ボディの重量は約743gとなっており、本機の持つ性能に反して非常にコンパクトで軽い。筆者自身は普段α7 CIIをメインで使用しているのだが、普段使いしているレンズが重量級なのもあって体感重量は同等か、何ならα1 IIの方が軽いくらいだ。
装着しているレンズが違うため当然と言えば当然だが、逆に言えばレンズの重量に左右される程度の重量しかないというのが正確な所か。グリップが深く握りこみやすいのもそう感じた要因のひとつかもしれない。
また操作系の大部分は近年のα7やα9系統とほぼ同一になっており、同じαシリーズのフルサイズを使用したことがある方なら誰でも違和感なく操作することが出来るだろう。筆者もここまでのハイエンドモデルを触る機会はほとんどないのだが、「どこに何がある」が直感的にわかるため、ファインダーを覗きながらの操作でも特に迷うことはなかった。
幅広い用途に応えるインターフェース
コンパクトなサイズ感や操作のとっつき易さから勘違いしてしまいそうになるが、本機はプロユースを想定したカメラ。その片鱗はボディの随所から現れている。背部に備えた液晶モニターはチルトとバリアングルを組み合わせたような4軸で稼働し、メモリースロットはもちろんCFexpress Type-A / SDカード(UHS-I・II)に対応したデュアルスロット構成だ。
加えてボディの左側面にまとめたインターフェース類は圧巻の一言で、シンクロターミナルやマイク端子といった伝統的なモノから、USB 3.2 gen2・USB Power Deliveryに対応したType-Cといった最新のモノまでみっちりと詰まっている。
中でも特筆すべきはLAN端子で、なんと2.5GBASE-Tに対応。搭載したFTP機能を用いて撮影したデータのアップロードや、専用ソフトを使用してのテザー撮影などに利用できるとのこと。この速度のLAN端子はPCでも最近やっと一部で普及してきたレベルなので、当たり前のようにカメラに乗ってくるとは正直思わなかった。とはいえα 1IIでは最大8K 29.97pでの映像撮影が可能なので、必要に迫られての搭載なのかもしれない。
コンセプトに偽りなし。素人でもコレだけ撮れる
改めて記載しておくと、筆者はプロのカメラマンではない。良く言ってもアマチュアレベルで、どちらかと言えば単なるカメラ好きという立ち位置だ。しかしそんな筆者が撮っても、そこそこ撮れてしまうのがα 1IIのすごい所である。
製品発表会では2つのスポーツシーンと、1つのポートレートシーンを想定した撮影体験ができるようになっており、スポーツシーンではコンセプトの一つである「スピード」が非常にわかりやすい。特にAIによるAF性能の向上と最高30コマ/sの連写速度、プリ撮影機能の効果は明白で、これならまず間違いなく誰でも狙った瞬間が撮れるに違いない。
一例として筆者が撮影した写真を載せておこう。
記事用に解像度を落としているため若干分かりにくいものの、選手の瞳にはしっかりとフォーカスが合っており、跳躍中の揺らめく服や宙に舞う寸前のボールを見事に切り取ることができた。
使用レンズ「FE70-200mm F2.8 GM OSS II」焦点距離:91mm、SS:1/1250、f / 2.8、ISO 800。
使用レンズ「FE70-200mm F2.8 GM OSS II」焦点距離:200mm、SS:1/1250、f / 2.8、ISO 800。
またもう一方のコンセプト、「高解像」のメリットが顕著に表れたのがポートレートシーン。なんと言うか、モデルの女性を映した際の透明感が凄まじいのだ。これは同時に発表されたレンズ「FE28-70mm F2 GM」の効果も大きいと思うのだが、フォーカスを合わせた顔はまつげの1本1本まで細かく解像され、その前後は滑らかにボケている。この情報量の粗密が透明感を生み出しているのだろう。
こうして切り出してみると5010万画素は確かに強力で、クロップ耐性が驚くほど高いのが良く分かる。GMレンズなど解像力の高いレンズと組み合わせることで、透き通るような描写をすることも出来れば、広めに撮って後から画角を変えるといった使い方も出来るため、作品作りから報道まであらゆる用途に応えるカメラと言えそうだ。
α1 IIはあらゆる要素が進化したストレスフリーなカメラ
最後に、筆者が製品発表会やその後の体験を通して感じた点について記載して、記事のまとめとしたい。それは「α1 IIはユーザーにストレスを感じさせない」ことを主軸に据えて開発されているのではないかという考えだ。
というのも上記にまとめた特徴を見て分かる通り、α1 IIは初めて見るような目立った新機能がほとんどない。センサーやエンジンは初代のα1から続投で、AF性能や被写体認識、プリ撮影なども現在においてはメジャーな機能。ボディにおいても同世代のα7やα9と比べた際にも大きな差異は無く、いつものαシリーズと言った趣きである。一見すると、α1 IIはすべての機能が順当にスペックアップしただけの面白みのない製品に見えるだろう。
しかし筆者が思うに、α1 IIの魅力はそこではない。
シーンに応じて用意された機能達がユーザーを適切に補助し、煩わしい部分だけをカメラが解決するように。
それでいてあえて既存の製品から大きく変えず、操作に戸惑うことなく使えるように。
そして、ユーザーがストレスなく撮影に向き合えるように。スペックアップはそのための手段でしかない。
コレはある種の信頼性の担保で、信頼性はプロユースにおける最大の武器だ。だからこそ素人が扱ってもそれなりに撮れる。
「撮りたいシーンを確実に撮れるカメラ」それがα1 II最大の魅力なのだ。
ギャラリー
Sony
カメラ
α1 II
ILCE-1M2
出典:プレスリリース
記事内画像は製品発表会にて撮影