病院へかかると、お医者様に見てもらうまでに時間がかかり、さらに薬局でさらに時間がかかり…と、とにかく時間を要した経験をお持ちの方も多いだろう。やっとの思いで処方せんをもらったのに、薬局でさらに時間がかかるというのは、仕方がないとはいえ出来ることなら回避したい問題のはずだ。
そんな状況を逆手に取った、申し込んでおき”後で受け取るサービス”を実施する薬局も増えており、タイパが意識され始めている現代においては利用している人も多いかと思う。
では、オンラインで処方薬を受け取ったことがある人はどれだけいるだろうか?
CMなどで見かけたことがある人も一部いるかと思うが、コロナ禍を機にオンラインで薬剤師より服薬指導を受け、オンラインで処方薬を受け取るサービスというのが存在する。ただ、筆者の体感としてはまだまだ利用者が少ない印象だ。
そんなオンライン処方薬において、あの「Amazon」が参入する。
というわけで今回紹介するのは、Amazonが新たに始めた、薬局と連携した処方薬を受け取れるサービス「Amazon ファーマシー」。すでにサービスは提供を開始しており、いつものお薬をオンラインで申し込める。
今回はそんな「Amazon ファーマシー」の発表会に参加してきたため、早速詳細を見ていこう。中には病院でもらう処方せんを含んだ全てをオンラインで完結できるサービスもあるため、なかなか医療機関にかかる時間がないという人はぜひ注目してもらいたい。
Amazon
Amazon ファーマシー
どうやってオンラインで処方薬を?「Amazon ファーマシー」の利用手順
まずは「Amazon ファーマシー」の利用手順から見ていこう。
簡単には、4つのステップに分かれている。
- (事前に)医療機関で診察を受け、「電子処方せん」を取得する
- Amazonのスマホアプリで処方内容の画像を送り、薬局を選ぶ
- 薬局とビデオ通話で服薬指導を受け、会計をする
- 自宅に処方薬が届く
というのが大きな流れだ。
その中でも、注意事項を3つ解説しよう。
まず、医療機関で「電子処方せん」をもらうことが必須になっている。
一般的に病院でもらう処方せんは印刷された紙が大半だが、昨今ではその電子版が用意され始めている。(控えとして紙はもらうので、勘違いしないよう注意してもらいたい) その電子処方せんがないと、そもそも利用できないサービスであることに注意が必要だ。
ただ詳細は後述するが、別サービスと連携することで診察自体をオンラインで実施することも可能なたため、やり方によっては利用できる方法もある。
※かかりつけの医療機関が電子処方せんに対応しているかどうかは、こちらから検索して欲しい
厚生労働省「電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_taioushisetsu.html
次に、スマートフォン向けアプリ「Amazonショッピングアプリ」でのみ利用可能という点だ。
処方薬を購入するにあたり薬剤師からの服薬指導が必須になるためか、スマートフォンからのみ利用可能な点には注意をして欲しい。(もちろん、Web版やKindle等の他アプリでは利用できない)
最後に、処方薬の発送は薬局が各自で行うため、普段のAmazonと違う可能性がある。
例えば従来のAmazonであれば、地域によってはAmazonが独自に荷物を配達するケースがあると思うが、それとは異なるということ。基本的には調剤した薬局がそれぞれの判断で運送手段を用意するため、地域や店舗によってヤマト運輸で届いたり、佐川急便で届いたりというのがありうるのだ。
なお発送ではなく、薬局で受け取ることも可能とのこと。
アプリ上で見る「Amazon ファーマシー」の利用手順
それでは実際の画面を見つつ、手順を追いかけてみよう。
- アプリ上に表示されているバナーや、検索窓で「Amazon ファーマシー」と入力し、トップページへ移動する。表示されている今すぐ始めるを選択。
- 「電子処方せんの控え」または「引換番号」を写真でアップロードし、薬局を検索する。
(初回のみ、別途利用登録が必要なため注意 詳しくは後述の画像にて)
- 対応可能な最寄りの薬局が表示されるため、任意のものを選択する。
(選んだ薬局にて、服薬指導・調剤が実施されることとなる)
- オンライン服薬指導の予約をする。
ビデオ通話をすることとなるため、通話可能なタイミングを選ぶと良いだろう。
発表会で見せてもらった際には、最短で1時間後の予約が可能だった。
※オンライン服薬指導の受付時間や待ち時間は薬局によって異なるため、注意してほしい。
- 保険証や問診票など情報を入力し、予約を確定する。
なお、自宅に配達だけでなく、選択した薬局で受け取ることも可能だ。その設定もこの段階で行う。
- 予約後は、薬局とビデオ通話で服薬指導を受ければ完了となる。
以降は、いつものAmazonのように、現在のステータスや発送状況が確認できるという仕様だ。
初回登録の流れも含め、詳細に確認したいという方は、以下の画像を拡大して確認してもらえれば幸いだ。
現状ではまだ使いづらい環境ではあるが、「Amazon ファーマシー」の今後に期待したい
基本的な利用手順を見てきたが、ここからは筆者の感じた正直なコメントを書いていこう。
正直なところ電子処方せんが必要な点や、類似サービスがある以上、まだまだ使いづらい環境なのかなと感じている。裏を返せば、Amazonで行う利点がそれほどないのだ。
もちろん使い慣れたAmazonで始められる点や、一つのアプリで家族分のプロフィール・管理ができる点などメリットはあるものの、率先して「Amazon ファーマシー」を勧められるかと言えば「現状ではまだ」というのが素直なところ。
※念の為補足をしておくと、Amazonだからこその値引きや、ポイントの利用はできない。
オンラインで実施でき、発送に送料がかかるという点以外は、仕組みは違えど薬局で手続きをするのと大きな差はない。
とはいえ、そもそもなかなか広まっていない「オンラインでの処方薬受け取り」というサービスであることを考えると、あのAmazonが始めるという意味合いはとても大きいように思う。そういった観点では、環境整備も含めた今後に期待したいサービスと言えるだろう。
もちろん現状でもお勧めできるシーンは多く、例えば
- 小さいお子さんがいて、なかなか薬局に行く時間が取れない
- 日中は仕事で忙しく、お昼に薬局へ行けない
- プライバシーの観点から薬局に行きづらい
- 熱中症のリスクがあるので外に出づらい
- 緊急度が高くない、花粉症やアレルギー疾患などの慢性疾患を持っている
といったシーンには今すぐ使えると言えるだろう。
となるとやはりネックになるのは電子処方せんの存在だが、そんな人にお勧めしたいのが「CLINICS」※を利用したオンライン診察だ。
「Amazon ファーマシー」と公式に連携しているサービスで、「Amazon ファーマシー」上からCLINICSに遷移し、オンライン診察から処方薬の手配まで、全てオンラインで完結することができる。
これさえあれば、極端な例だが都内において、違和感を感じた段階で診断を受け、明日には処方薬が自宅に届く…なんてことも可能になるのかもしれない。自宅から出ずに、症状が本格化した時には処方薬が自宅にある状態なのだ。
とはいってもゆくゆくは各医療機関にて電子処方せんの対応が進むとみられるため、環境さえ整ってしまえばネックな電子処方せんもそれほど気にならず、よく使われるサービスになるのかもしれない。
7月23日現在で提携している薬局は約2,500あり、全ての都道府県ではないが全国規模で展開しているため「自分の街にはないが、隣の街・県から送ってもらう」なんて使い方ができるのは、案外助かる人も多いのではないだろうか。
※「CLINICS」の利用について、詳細はこちら(http://www.amazon.co.jp/rx-pharmacy/medley)
始まったばかりでまだどうなるか未知数な部分も多い「Amazon ファーマシー」だが、環境整備も含めた今後に期待しようと思う。
Amazon
Amazon ファーマシー
サービス概要
サービス名:Amazon ファーマシー
利用価格:無料※
サービス開始日:2024年7月23日
サービスページ:https://www.amazon.co.jp/b?node=24797833051
※処方薬を購入するにあたり、有料