クルマ以外が主のメーカー
最後に、2輪モビリティメーカーなどの、他メーカーを一部紹介しよう。
YAMAHA ブース「two YAMAHAs one Passion」
「two YAMAHAs one Passion」を掲げ、同じくYAMAHAブランドを共有するヤマハ株式会社との協力により実現した音響技術を用いたステージ演出など、”「生きる」を、感じる”というメインテーマに即したエモーショナルな雰囲気を感じさせるブースとなっている。
会場ではヤマハ発動機株式会社の開発するバイクやトライクといった製品以外にも、ヤマハ株式会社のピアノやコントラバス、ギター、ドラムなどの楽器類も展示されていた。これは展示テーマの一つである「鍛錬の娯楽化」、つまり「できなかったことが、できるようになる喜び」は乗り物・楽器双方に共通することであり、それこそが「生きる」活力になるというメッセージの現れなのだろう。
意のままに操る楽しみを提供する3輪マシン「TRICERA」
その思想が強く現れているのが、3輪パッケージのフルオープンEVのコンセプトモデル「TRICERA」だ。後輪の同位相・逆位相による旋回中心変化のコントロール性から導き出した人間中心のパッケージングに加え、後輪操舵の手動モードも選択可能にすることで、新たなドライビングスキルの習得と成長の悦びを提供するという。
自動運転の研究開発が盛んな今だからこそ、人間の操作にマシンが反応し思い通りに動いた時の楽しさや感動を体験できるマシンとして「Urban Exciting Mobility ~心身とマシンがひとつの有機体となる~」を実現するコンセプトだ。
立ちゴケ等、低速走行時の転倒を防ぐ「AMSAS」を搭載したスクーター「ELOVE」
一方で先進技術による安全性の向上も忘れていないのが優等生なYAMAHAらしいところだ。2輪車はその特性上低速時に不安定になりやすい。YAMAHAの「AMSAS」はヒト型自律ライディングロボット「MOTOBOT」や「MOTOROiD」の研究で獲得した技術を基盤に開発した二輪車安定化支援システム。このシステムは停止状態でも自立するほどの安定性を発揮し、極低速運転時における立ちゴケなどの転倒不安や疲労からライダーを解放してくれるという。
そんな「AMSAS」を搭載したスクーターが会場で発表された「ELOVE」。筆者の体感ではあるが、一般的なスポーツバイクのようにエンジンをまたぐ形状に比べ、スクーターはニーグリップが効かないこともあり低速時はバランスがとりにくい。そうした車体であっても「AMSAS」を搭載することで低速走行時や車体降りて押す際など、車体の重量に振り回されて転倒するようなことは無くなるはずだ。
Kawasaki ブース「販売間近の製品が充実、世界初のハイブリッドバイク」
夏のモーターサイクルショーを、最新の400cc4気筒Ninja「ZX-4R」で沸かせたKawasaki。各社がEVやそれに準ずる車体を多く持ち寄る「JAPAN MOBILITY SHOW」には、日本初公開となるEV・HEVのNinjaをぶつけてきた。
会場には一部バギーなども展示されているものの、2輪車をメインに多くの車体が用意され、クルマの多い会場内ではある種異彩を放っている。また面白い点としては、展示された多くの車体は過去のモデルを除きそのほとんどが販売間近の製品と言う所で「売る予定の無い製品は見せない」とでも言わんばかりのKawasakiらしい硬派な姿勢がうかがえる。
世界初のハイブリッドバイク「Ninja 7 Hybrid」
世界初公開の車両などもあるものの、やはりイベントの趣旨に合わせチェックしておきたいのは、Kawasakiが世界のメーカーに先駆けて発表したハイブリッド(HEV)のバイク「Ninja 7 Hybrid」だろう。
451 cm3水冷並列2気筒エンジン、トラクションモーター、大容量の駆動用バッテリーを搭載し、エンジンとモーターを統合したパワーユニットと、6速ボタンシフトミッション機構が新しいライディング体験を提供するという。
既に海外のイベントでは展示されたこともあるが、日本国内で見れるのは本イベントが初。また国内導入予定については11月中旬にアナウンス予定とのことなので、発売前に一足早く車両を見たい方は見逃さないようにしたい。
Kawasaki初の行動走行可能なEVスポーツバイク「Ninja e-1」
殆どの製品の発売予定が発表されているKawasakiブースの中で、数少ない未定の製品がこのKawasaki初のEVスポーツバイク「Ninja e-1」だ。
低速域での力強いレスポンスを持つコンパクトな電動モーターと、軽量なフレームを組み合わせることにより、優れた加速性能と軽快なハンドリングを実現したという。短時間の出力向上が可能なe-boost、車両の取り回しをサポートするウォークモード、ダミータンク上のストレージボックスなど、電動モーターサイクルならではの新機能や装備も気になるところ。
一方で航続距離が1回の充電で72Kmと若干心もとない数値であり、恐らくこの辺りが発売未定の理由だろう。同ブース内では珍しい、会場でしか見ることのできない貴重な一台だ。
ニチコン ブース「発表したばかりの第三世代『EVパワー・ステーション』」
onesuiteとしては先日の製品発表会も記憶に新しいニチコンも、東4・5・6ホールに出展している。
こちらの記事でも紹介したV2Hシステムの新製品、新型「EVパワー・ステーション®」が展示されているほか、これまでに登場した様々なEVソリューションの実物を見ることができる。各V2Hが天井を伝い中央の巨大蓄電池に繋がっているさまが特徴的なので、歩いていればすぐ見つけることができるだろう。
日産サクラに接続された新型「EVパワー・ステーション®」
ブース右手には日産サクラが「EVパワー・ステーション®」と接続されており、第三世代となりセパレート化したメリットである取り回しの良さを体感できる。
日産サクラの後ろには「EVパワー・ステーション®」と、同タイミングに発表された「発展型太陽光パワーコンディショナ」が出迎えてくれる。
ブース左手ではメルセデス・ベンツのEQS 450 4MATIC SUVが「トライブリッド蓄電システム®」と接続されており、伺ったタイミングではコンパニアオンさんが実演をしていた。
こちらの後ろには「トライブリッド蓄電システム®」の一式が展示されており、気になった人は何が必要なのかすぐ確認できるようになっている。
自宅に導入を検討している人からすると、実際に車両を交えて大きさやサイズ感を確認できるシチェーションは中々ありがたいかと思うので、ぜひこの機会に足を運んでもらえれば幸いだ。
アイディア ブース「デリバリー分野に特化、世界初公開となる『AAカート / AAクーペ』」
デリバリー分野のモビリティに特化したベンチャー企業、aidea株式会社の出展ブースでは世界初公開となる「AAカート(荷台水平タイプ)」「AAクーペ」を含む、3種・5バリエーションの電動バイクを見ることができる。
安定感と軽快さを両立した「AAカート(荷台水平タイプ)」
AAカートは、後ろ2輪を残して車体が左右に傾斜する構造を採用しており、3輪バイクの安定性と通常の2輪バイクのような軽快さを持った製品だ。 今回発表された荷台水平タイプは、すでに発表されていた荷台傾斜タイプは荷台がが車体と一緒に傾斜するのに対し、荷台は後ろ2輪と共に水平固定されていることが特徴。これにより飲料水など重量のある積載物を乗せた際にもその重量感が運転席側に伝わらず、低速域でも安定して操作することが可能になるという。
ワイパー付きのフロントスクリーンや屋根を備えた「AAクーペ」
同社としては初の、コンシューマー用途も含めて開発されたコンセプトモデルが「AAクーペ」だ。特徴的なワイパー付きのフロントスクリーンやルーフ、大型のリヤボックスを備えている他、二人乗りも可能な設計になっているため、日々の買い物などちょっとした外出に活躍するアーバンコミューターとしてオススメだという。
筆者もちょっとしたシーンでは車ではなくスーパーカブを出すことも多い。ただどうしても2人で移動するシーンや雨などの時は車を出すしかなかった。しかしそんな時にも使える低燃費なEVバイクがあれば、確かにコンシューマー用途でも一定の需要が見込めるのではないだろうか。
クルマ好きだけでなく、モビリティ好きが集まるイベント「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」
前編後編と分けてお届けしてきた「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」はいかがだっただろうか。
本記事で主に扱った東側だけでも”クルマだけでなくモビリティ”というのがよくわかったかと思う。また、前編でも紹介したように、各社がモビリティだけに注力するのではなく、モビリティから生まれる未来を作ろうとしているのも本イベントの特徴として言えるだろう。
恐縮なことに取材ブースを絞ったにも関わらずこのボリュームとなってしまい、残念ながら紹介を断念した出展企業が多くあること。願わくば、直接会場まで足を運び、見て、触って、乗ってもらえると、きっと良い刺激をもらえるだろう。
幸いにも1週間以上というこの規模にしては珍しい会期なので、時間がある人やモビリティ好きはぜひ東京ビッグサイトまで。
前編はこちらから
イベント詳細
イベント名:JAPAN MOBILITY SHOW 2023
開催期間:一般公開日 2023年10月28日(土)〜11月5日(日)
開催時間:9:00~19:00(日によって18:00まで)
開催場所:東京ビッグサイト