夏のアートアクアリウム展2023~銀座の金魚~:都心で涼を楽しむ幻想的な夏の風物詩をレポート

アートアクアリウム美術館 GINZA

夏のアートアクアリウム展2023~銀座の金魚~

「金魚の姿には夏の記憶が焼き付いている」

うだるような熱気の中、輝く出店の光に照らされ騒めく人ごみの合間を、誰かと共に歩いた‟あの夏の夜”。手首にかけられた袋の中では、涼し気に金魚がたゆたう。

実際に体験したことはなくとも、ある種の共通イメージとしてこういった光景が思い浮かぶ人は多いかと思う。金魚は適切な環境であれば通年どころか5年10年と生きる魚ではあるが、上記のイメージによって夏の魚という印象が筆者の中では大きい。

やはり金魚を見るといえば夏なのだ。

さて所変わって現在。6月も終わりにさしかかり、本格的な夏の訪れを感じる季節がやってきた。 もう少し日が経つと、ジリジリと日差しが肌を焼きアスファルトから陽炎立ち上る、まさに日本の夏といった空気になるだろう。

そんなある昼下がり、我々編集部は金魚を見るために銀座を訪れていた。

目次

銀座三越で金魚とアートを楽しむ

銀座の中心地である銀座三越。筆者のような庶民には少し敷居の高い老舗デパートの館内にあるのが今回の目的地「アートアクアリウム美術館 GINZA」だ。銀座三越といえば本館入り口のライオン像だが、アートアクアリウムがあるのは隣り合う新館の方。8階の会場にアクセスするには、9階からエスカレーターで向かう必要があるため注意してほしい。

「アートアクアリウム美術館 GINZA」の会場となる、銀座三越 新館
完全に余談ではあるが老舗デパートの店内にあるためか、会場にたどり着く道すがらスタッフの皆様が非常に丁寧に対応してくださり、恐縮するとともにそのプロ意識に尊敬を覚えるばかりだ。大変不躾な感想ではあるが、ちょっと”イイ気分”にさせてくれるので、普段銀座三越に行く事がない人は是非この機会に訪れてみてほしい。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023

アートアクアリウムとは、従来の金魚観賞という文化に光・音・香という要素を取り入れ、水槽の造形や空間演出まで織り込むことで、金魚をメインにした芸術作品として観賞するタイプの展示会である。

美術館と銘打っている通り、主に生き物の生態などを取り扱う通常の水族館とは異なり、あくまでもアートとしての側面が強い。金魚だけでなく、面や灯篭、江戸切子や花、浮世絵なども併せて展示されているのが大きな特徴といえるだろう。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、オリガミリウム

今回は「夏のアートアクアリウム展2023」ということで、夏を意識した新たな展示やグッズなどが多数お目見えしている。本記事ではそれらを中心に紹介していこう。

金魚の石灯籠

寺社仏閣でよく見かける石灯籠をモチーフに作られた作品。展示場所は常設されている「金魚の滝」の前面だ。明かりを灯す籠を水槽とし、灯火を金魚に見立てている。滝×石灯籠の組み合わせという斬新なテイストから、「金魚の滝」の‟涼”と石灯籠による日本の伝統を肌で感じてほしい。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、金魚の石灯籠
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、金魚の滝の様子

手鞠リウム

日本の伝統的な遊具である手毬をモチーフにした水槽が設置され、壁沿いを彩っている。手毬を覆うカラフルな組紐の合間から覗く金魚が愛らしい、特徴的な展示といえる。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、手鞠リウム
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、手鞠リウムの様子

猪目リウム

窓に見立てた水槽に伝統的な図柄である猪目をあしらい、気ままに泳ぐ金魚を窓から眺める形式だ。その窓を覗けば、奥に展示されている天空リウムが現れ、まるで水中に建てられた宮殿のように見える。猪目リウムと天空リウムのコラボレーションをぜひ堪能してほしい。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、猪目リウム

天空リウム

今回の目玉となる作品。天空に咲き誇る空想の花をイメージして作られた壮大なスケールとなっており、アートに疎い筆者でもつい見惚れてしまう。スケールの大きさだけでなくカラフルな照明や優雅に泳ぐ金魚も相まって、より一層幻想的であり「夏のアートアクアリウム展2023~銀座の金魚~」において見逃すことができない一作だ。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、天空リウム
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、天空リウムの様子

新行燈リウム

日本の伝統的な照明である行燈をモチーフにしており、行燈の明かりの中で泳ぐ金魚達が非常に雅やかな作品だ。一つだけ気をつけたいのは、順路から少し外れた位置に展示されていることで、見つけられない場合は一度出口手前のミュージアムショップまで向かってしまい、ショップ入り口とは反対方向に進むと良いだろう。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、新行燈リウムの様子

夏に合わせて装飾された常設作品

また今回の特別展では5つの新しい作品だけでなく、元々展示されている作品に装飾を追加する事で季節感を表現している。今回は6月以前と比べ、装飾が変更されている作品に注目して紹介していこう。

金魚蒐集

元々6月に併せてアジサイを水槽の中に浮かべていたが、今回の特別展を機に青々とした緑を盛り込むことで夏を表現している。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、金魚蒐集
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、金魚蒐集

金魚の滝

天井に青紅葉を設置し、「金魚蒐集」と同様に緑を盛り込んでいる。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、金魚の滝

新金魚品評

6月はあじさいを水槽に浮かべていたが、今回の特別展では夏らしく蓮の花に変更されている。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、新金魚品評
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、新金魚品評の様子

提灯リウム

七夕意識し笹や風鈴を天井に飾っていた。具体的な日付は不明だが、七夕モチーフである以上こちらは7月を超えると変更になるかもしれない。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、提灯リウム
『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、提灯リウムの様子

フラワーリウム

季節によって花の演出が変わるとのこと。今回の特別展では向日葵や蓮の花を中心に、夏の花にフォーカスしていた。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で展示されている、フラワーリウム

アートアクアリウムでしか買えない新発売のオリジナルグッズ

今回の特設展に併せて、ミュージアムショップにて新発売のアイテムが登場している。ここではその中でも2製品をピックアップしてご紹介しよう。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で催されている、ミュージアムショップ

HARIO×アートアクアリウム美術館 GINZA

日本橋に工房を持つ耐熱ガラスメーカーHARIOとのコラボレーションアクセサリーとして、新たに土佐金をモチーフにした「華」シリーズと、ピンポンパールをモチーフにした「鞠」シリーズが発売された。 それぞれピアス・イヤリング・ネックレスが用意されており、どちらも可愛らしいデザインに仕上がっている。金魚は浴衣や和服、暖簾などにも頻繁に登場するモチーフのため、夏を彩るアクセサリーとして浴衣と組み合わせるのにピッタリだろう。ここでしか購入できないため、思い出の品として一ついかがだろうか。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新しく販売される、HARIOとのコラボレーションアクセサリー「華」シリーズ。土佐金をモチーフにしている。

オリジナルデザインの金魚てぬぐい

アクセサリー以外にもミュージアムショップでは、1987年に代官山でオープンした てぬぐい専門店「かまわぬ」とコラボレーションし、金魚をあしらったオリジナルデザインの てぬぐいを販売している。

今回のイベントに合わせオリジナルデザインの「カラフル金魚」と歌川国芳作 金魚づくしをモチーフにした「金魚づくし グレー」の2種が新たに発売。こちらも「アートアクアリウム美術館 GINZA」限定商品となっている。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新しく販売される、てぬぐい専門店「かまわぬ」とのコラボレーションしたてぬぐい。オリジナルデザインの「カラフル金魚」と歌川国芳作 金魚づくしをモチーフにした「金魚づくし グレー」の2種類。

会場付近では浴衣のレンタルも

夏の期間にしか開催しない特別なイベントである以上、ちょっとしたお祭り気分を味わうために浴衣で楽しみたいと思う方も多いのではないだろうか。会場近くの「銀座1カラット」では、本イベントの開催に併せ浴衣のレンタルプラン+着付け付きのチケットを販売しているので、浴衣での来場を考えている方はこちらを検討しても良いだろう。
浴衣を持っていない方や着付けが不安な方にオススメで、その他にも購入者限定でお得な特典もついて来る。浴衣を着る事で、よりお祭り気分を味わえるはずだ。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023に併わせ開催されている、「銀座1カラット」の浴衣のレンタルプラン+着付け付き イメージ画像
特に浴衣は、一度着てしまうと段差の上り下りや長距離の移動などに不安が残る。手ぶらで行けて、浴衣の用意から着付けまで現地近くで行えるこのサービスは嬉しい人も多いはずだ。
公式サイトより引用:https://bifu-by1carat.tokyo/artaquarium/

アートアクアリウムは涼を求める大人におすすめの美術館

筆者が訪れた日は最高気温34度という夏日だったこともあり、程よく空調の効いた空間で見た目にも涼しげな金魚を眺める時間は、正に至福のひと時だった。

暗く落とされた照明と、色とりどりに照らされた各種水槽、所々に散りばめられた和を感じさせるオブジェが、お祭り後の夜の境内や参道のような「若干神秘的で、でもどこか寂しげな雰囲気」をまとい訪れた人の心を否応なしに”あの夏の夜”へと誘うだろう。

『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023で新たに展示された、金魚の石灯籠の様子

そういった意味では、夏のアートアクアリウム展2023はそうしたお祭りの楽しさや賑やかさではなく「その後の静けさ」にフォーカスを置いた珍しい切り口と言えるだろう。「水中を優雅にたゆたう金魚たちを眺めながら、静かに過ぎ去った夏に思いを馳せる」そんな大人の楽しみ方が適している。

単純に涼しいだけでなく、五感で涼を感じることのできる本イベント。暑い日にこそ‟夕涼み”と洒落込んではいかがだろうか。

イベント情報
イベント名:『アートアクアリウム美術館 GINZA』夏のアートアクアリウム展2023
開催期間:6⽉30⽇(金)〜 9月26⽇(火)/ 10:00〜19:00
休館日:10:00〜19:00(変更になる場合がございます)
    ※銀座三越の休館日に準ずる(加えて、メンテナンス等により不定期で休館の場合がございます。詳しくは公式サイトをご確認ください)
場所:銀座三越新館8階(入口は9階)
   〒104-8212 東京都中央区銀座4-6-16
入場料:WEBチケット 2,300円 https://ticket.artaquarium.jp/
    当日券 2,500円(当日券は銀座三越新館9階にて発売)
    ※2023年6月30日(金)まで 2,400円

公式サイト:http://artaquarium.jp/

アートアクアリウム美術館 GINZA

夏のアートアクアリウム展2023~銀座の金魚~

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次