「限定味が出たら、つい買ってしまう」。食品の世界では、それだけで十分に強い。けれど無印良品の面白さは、限定の強さを“味”だけに頼らず、選ばれ方そのものに持ち込んでいる点にある。
「みんなでつくるバウム2026」は、スタッフとお客さまから集まった2,519件のアイデアから13案がエントリーされ、投票で東日本・西日本それぞれの上位が選ばれ、合計4つが来年秋に商品化される前提で公開されている。
ここで重要なのは、“投票がある”ではなく、投票が商品化と結び付く設計が一次情報として確認できることだ。
投票は「参加できて楽しい」で終わりがちだ。だが、商品化まで接続される瞬間に、参加は“遊び”ではなく「何かを決める行為」に近づく。一票が、棚の未来に触れる感覚。その距離感が、ワクワクの芯になる。
参加型の肝は、熱量より「参加が完了する設計」
参加型企画が失速するのは、熱がないからというより、途中で手間が勝ってしまう場面があるからだろう。候補が多すぎる、ルールが分かりづらい、どれに入れればいいか迷う。そうなると「後でやろう」で終わる。
無印の設計がうまいのは、この“終わりやすさ”をつぶす方向に寄せている点だと考えられる。店舗記事では、投票が「東日本から1票+西日本から1票の合計2票」であることが具体的に案内されている。投票行為を、生活の途中で完了できるサイズへ切っている。

ここから先は推測だが、こうした整理は「投票率」を上げるためだけではないかもしれない。
投票に参加すると、「自分が関わった」という小さな所有感が残る可能性がある。所有感が残ると、結果発表の日に“見に行く理由”ができるかもしれない。
見に行く理由ができれば、次は“買う理由”に繋がりやすくなるだろう。
つまり参加型は、販促というより関係を長くする装置として働く余地がある——そんな見立ても成り立つ。
店舗が主語になると、参加は“生活の近く”に降りてくる
無印の参加型が強いのは、Web企画をWebのまま放置しないところにある。店舗の記事には投票の概要だけでなく、試食会の案内が絡む例もある。投票を「画面の中の出来事」にせず、買い物動線に置き直す。

ここも推測だが、これは単なる販促というより「店舗に行く理由」を増やす設計になっている可能性がある。ECが強くなるほど、リアル店舗は“行く理由”が必要になる。
そんな中での試食会や投票の呼びかけは、店に寄る動機になり得る。そこで参加が完了すると、次は「発表の時期に覗く」「発売の頃に見に行く」が起きやすくなるかもしれない。
参加型は、商品づくりだけでなく、店舗の役割(体験拠点)を支える手段にもなり得るのだ。
「本当に投票で決まるの?」への答えは、過去回の開示がつくる
参加型企画には、必ず疑いがつきまとう。「どうせ最初から決まってるんじゃないの?」。この疑いを消せないと、参加型はただの“お祭り”で終わりやすい。
その点で効いているのが、無印が公開している「[漫画]みんなでつくるバウム ができるまで」だ。そこでは、スタッフのアイデアから8種を選定し、お客さまの投票で支持された3つを商品化し、さらに期間限定で販売まで繋げた流れが明記されている。加えて「開発の様子を担当者にインタビュー」とも書かれている。
![[漫画]みんなでつくるバウム ができるまで より引用](https://one-suite.jp/wp-content/uploads/2026/02/MUJI-Baum-Manga_01-723x1024.png)
外部から製造工程の細部や社内の意思決定を断言することはできない。けれど、「投票→商品化→販売」という結果が一次情報として提示されていることは大きい。参加型の信用は、気合いの文章ではなく、こうした実績の見える化で育つ。
バウムの次に見える“仕組み”「MUJIカレー総選挙」
そして、バウムが“単発の企画”ではないことを示す材料として、「あなたの知らないMUJIカレー各国編 総選挙」がある。スタッフが厳選した「日本のカレー」4品と「現地に学んだカレー」4品、計8品から、お客さまが食べたいカレーを投票で選ぶ仕組みが用意されている。
投票総数は67,420票。内訳も「日本のカレー」40,622票、「現地に学んだカレー」26,798票と公開されている。数字が見えると、企画は“盛り上がった”で終わりにくく、「本当に選ばれた」という説得力が生まれやすい。

これは推測だが、無印は“参加の濃さ”を使い分けているのかもしれない。
バウムは「アイデア募集→投票→商品化」まで踏み込む強い参加。カレーは「候補を絞り、選ぶ体験を渡す」軽い参加。参加の濃さを使い分けられると、参加の裾野を広げつつ、熱量の高い企画も成立しやすくなる可能性がある。これは偶然というより、参加を運用できる形に整えてきた結果だと読むこともできる。
参加型が“当たり前”になったときに起こり得る3つの変化
ここから先は未来の話なので、断言はしない。ただ、参加型が積み上がっていくと、次のような変化が起こり得る。
「投票」が“入口”になり、関与のレベルが段階化されるかもしれない
投票だけで終わらず、投票した人が開発ストーリーを追える、試作品の試食に参加できる、店舗イベントに招待される——といった形で、関与が段階化される可能性がある。
参加の深さが選べると、「ライト層は投票だけ」「濃い層は追体験まで」と自然に棲み分けられる。
店舗が“編集部”のような役割を持ち始める可能性がある
投票や試食会が増えると、店舗は単なる販売拠点ではなく、「地域の好みを拾い、反応を返す場所」になり得る。
店舗が主語で情報発信している事実を見る限り、店が企画を回す余地はすでに用意されているようにも見える。
値引きより強い武器として、「選ばれ方の設計」が競争力になり得る
参加型は、短期の売上を押し上げるだけでなく、次の購買までの“間”をつなぐ可能性がある。
もしそれが積み上がれば、価格競争よりも「関係の継続」が選ばれる理由になっていくかもしれない。メーカー側にとっては、ここがいちばん大きい。
だから、無印良品のファンが生まれる
無印の参加型は、派手な技術革新ではない。けれど、候補を整え、投票導線を設計し、結果を示し、(バウムのように)商品化まで繋げる前提を置く——それは継続的な運用を必要とする。
その運用が、読者の側に“前向きさ”を残す。
買うだけでは関係は単発で終わりやすい。参加は関係を少しだけ長くする可能性がある。自分の一票が棚に並ぶ未来へ繋がる——そう感じられた瞬間、応援が「気分」ではなく「行動」になる。
ワクワクは、派手な言葉からではなく、こういう仕組みを地道に回す意思から生まれる。無印の参加型が面白いのは、味の話をしているのに、最後は“市場の遊び方”の話へ届くところだ。
ギャラリー






無印良品
無印良品ブランドストア

※商品を購入すると、売上の一部が販売プラットフォームよりメディア運営元のONESELに還元されることがあります。掲載されている情報は執筆時点の情報、または自動で更新されています。
出典・関連リンク


