BRAVIAはどこへ向かうのか。ソニー×TCL提携が映す「テレビの次の時代」

SonyとTCLのロゴが並び立つ様子

2026年1月20日、ソニーとTCLはホームエンターテインメント分野での戦略的パートナーシップに向け、共同事業体(JV)設立を想定した覚書(MOU)を締結したと発表した。持分はTCLが51%、ソニーが49%を想定し、テレビやホームオーディオの企画・設計から製造、販売、物流、カスタマーサービスまでをグローバルに扱う計画だという。最終契約は2026年3月末までを目標とし、規制当局の承認などを条件に、JVの事業開始は2027年4月が見込まれる。

ここで大事なのは「誰が何%」よりも、発表に「ソニー」および「BRAVIA」ブランド名を冠する見込みが明記された点だ。

つまりこれは、BRAVIAの撤退ではなく、BRAVIAを次の時代に連れていくための体制変更として読むのが自然だ。


“テレビのソニー”は、体験で世界を驚かせた

ソニーのテレビ史を語る時、象徴として挙がるのが「トリニトロン」だ。ソニーの企業史では、1968年10月に日本で初のトリニトロン・カラーテレビ(KV-1310)を発売し、海外需要の拡大とともに生産体制を築いていったことが記されている。 同史料は、トリニトロンがテレビ業界の名誉とされるエミー賞に選ばれたことにも触れている。

ソニーで初めての「エミー賞」のトロフィーを手に喜ぶ井深氏。(ソニー公式サイトより引用)
ソニーで初めての「エミー賞」のトロフィーを手に喜ぶ井深氏。(ソニー公式サイトより引用)

この歴史が示すのは、ソニーがテレビを「家電」ではなく「体験」として磨いてきたという事実だ。映像の温度、音の輪郭、日常に馴染む完成度——それを“違い”として積み上げてきた。


BRAVIAは「薄型の時代」を勝ち抜くための旗印だった

次の大きな転換点は、薄型テレビが当たり前になる潮流だ。ソニーは2005年に「BRAVIA」をLCD HDTVのサブブランドとして導入した。

BRAVIAは “Best Resolution Audio Visual Integrated Architecture” の略称とされる。
BRAVIAは “Best Resolution Audio Visual Integrated Architecture” の略称とされる。

ブランドとは、名前を付けることではない。価値を束ねることだ。

BRAVIAは、薄型の時代に「ソニーの体験」をもう一度分かりやすい旗印にし直すために生まれた。そしてその旗印は、長く“画と音”の基準を背負ってきた。


今回の提携が示すのは「体験を守るための再設計」だ

ソニーは今回の発表で、JVがソニーの培った高品質な画質・音質技術やブランド価値、サプライチェーン運用の知見を活かしつつ、TCLのディスプレイ技術やグローバル規模、垂直統合によるコスト効率などを活用すると説明している。

市場環境として、OTTや動画プラットフォームの拡大、スマート機能の進化、高解像度・大型化の流れにも言及した。

この一連の言葉を、読者の生活の言葉に置き換えるとこうなる。

テレビが「放送を見る箱」から、「配信とアプリの入口」へ完全に移った。大型化し、機能が増え、世界で同時に売り続けることが当たり前になった。だから競争は、画面の薄さだけで決まらない。供給、更新、操作、安定性、サポート——条件が増えた分、“作り方”そのものを強くしないと、体験は守れない

その中でソニーが“握る価値”として前に出したのが「画と音」だった。

これは、BRAVIAの中心にある約束を、別の体制で太くしようとする選択に見える。


期待の根拠は「組み合わせ」にある

「ディスプレイ技術」と「画質技術」は似た言葉に見えるが、指している場所が違う。

  • TCLの強み:テレビの“素材”になるディスプレイ(パネル)技術や、世界規模で作り・届ける力(垂直統合による効率も含む)
  • ソニーの強み:その素材を使って最終的な“絵”を仕上げる力(画質・音質の設計、チューニング、そしてブランドとしての体験の基準)

言い換えるなら、TCLが“キャンバス(表示の土台)”を強くし、ソニーが“絵作り(仕上げ)”を決める、という役割分担に近い。

BRAVIA A1シリーズ開発者インタビューより抜粋された画像
BRAVIA A1シリーズ開発者インタビューより抜粋

この組み合わせが噛み合えば、BRAVIAは「作れる強さ」と「体験を作る強さ」を同時に手にできる。期待の置き場所は、ここにある。

これからの楽しみ方

細かな不確実性を数えるより、ファンとしては「次に何を楽しみに待てばいいか」を持っていたほうがいい。今回の発表を前向きに読むなら、見どころは次の3つに収束する。

  1. 次のBRAVIAが、どんな言葉で“画”を語るのか 思想は言葉に出る。画作りをどう定義し、何を守ると言うのか。
  2. 大型化・スマート化の波の中で、体験がどう研ぎ澄まされるのか 配信の時代は“総力戦”だ。そこでBRAVIAらしさがどう磨かれるか。
  3. グローバル運用の力が、“安心”として体験に還元されるのか 届け方、在庫、サポートまで含めて「気持ちよく使える」に繋がるか。

MOUという“余白”は、期待を具体にするためにある

これは最終契約ではなくMOUであり、最終契約の締結や許認可などを条件として計画が示されている。

ただ、その段階感は悲観のためにあるのではない。むしろ、期待を“具体”に変えるための余白だ。契約がどう設計され、最初の製品で何が守られ、何が強化されるのか——BRAVIAの次章は、その瞬間に輪郭を持つ。

BRAVIAは、名前を残すために変わるのではない。

あの体験——「この画がいい」という確信を、次の時代でも手元に残すために変わる。そう期待してしまうだけの歴史が、BRAVIAにはある。


*MOU:最終契約前の覚書。発表では最終契約・規制承認などを条件としている。
*JV:共同事業体。持分はTCL 51%、ソニー49%を想定。
*OTT:インターネット経由の動画配信(発表内で言及)。

ギャラリー

出典・関連リンク

ソニー株式会社 ニュースリリース

TCL Electronics Holdings Limited 公式サイト

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