CES 2026の会場で、Dellははっきりと言った。XPSが戻ると。新たに「XPS 14」「XPS 16」を“象徴的なXPSノートPCの再構築”として打ち出し、さらに今年後半には「より手頃なXPS 13」も投入すると予告した。
それは単なる新製品発表ではない。一度手放したブランドを、もう一度掲げ直すという決断の宣言だった。
では、なぜDellはXPSを“戻した”のか。ここには、プレミアムPCの世界でメーカーが何を守り、どこを変えるか——その生々しい現実が映っている。
名前を変えた一年が、逆に「名前の価値」を証明した
XPS復活のニュースには、ひとつの前提がある。Dellは昨年、XPSを含むラインの整理に踏み込み、その後に“戻す”決断をした、という時間の流れだ。実際、報道は今回を「昨年の決定を撤回する動き」として伝えている。
合理のために名前を整える。分かりやすさのために棚を作り直す。メーカーにとって、それは珍しいことではない。
ただ、プレミアム領域では、スペックより先に「そのメーカーが何を大事にしてきたか」が買う理由になる。XPSはその象徴で、軽さ・質感・画面・入力体験まで含めた“総合の完成度”で語られてきた。
だからこそ、DellがCES 2026で「XPSを再確立する」と明言したこと自体が、ひとつの物語になる。
“戻すなら、作り直す”——XPS 14 / 16は再設計で来た
DellはXPS 14 / 16を「完全な再設計」と位置づけ、“ここに残る(here to stay)”と言い切った。 発表価格(米国・ローンチ構成)として、XPS 14は$2,049.99、XPS 16は$2,199.99が示されている。

(Dell公式CES 2026 Press Kitより引用)
この新XPSの“再設計”が伝わってくるのは、スペック表より先に、触ったときの体験を想像させる言い方で語られている点だ。Dellは自ら、XPS 14が「およそ3ポンド」、XPS 16が「3.6ポンド」だと説明し、前世代から大きく軽くなったことを強調する。
これは軽量化の数字というより、「持ち歩けるプレミアム」に戻す意思表示に近い。
そして象徴的なのが、入力体験の見直しだ。Dell自身が「伝統的なファンクション列を戻す」と書き、確かな触感(tactile feedback)を理由としている。
この判断は、単なる好みの問題ではない。毎日使う道具としての誠実さに近い。XPSが愛されてきた理由は「尖り」だけではなく「日常の気持ちよさ」だった。その原点に、もう一度戻ろうとしている。
胸を熱くするのは「長く相棒にできる」設計
XPSの復活が胸に刺さるのは、単に“新型が出た”からではない。一度看板を引っ込めたメーカーが、もう一度その名前を掲げ直すとき、そこには必ず「約束のし直し」があるからだ。
DellのCOO ジェフ・クラーク氏は「roots(原点)に立ち返る」と述べ、XPSを“完全な再設計”で復活させ、「最も薄く、最も軽いフォームファクター」で届けると語った。

(Dell公式CES 2026 Press Kitより引用)
この宣言は、軽量化の自慢ではない。XPSという名前に、もう一度“重み”を取り戻すための誓いに聞こえる。
Dellの公式ブログが語る哲学も、同じ方向を向いている。新XPSは「built to move with you(あなたと一緒に動くためのコンパクトなデバイス)」としてゼロから作り直され、道具は「自分の延長のように感じるべきだ」と書く。ユニボディ設計についても、構造体を一体化することで剛性と長期耐久を高める、と説明している。
ここが、XPS復活の核心だと思う。プレミアムという言葉が、質感や薄さだけで消費されがちな時代に、「持ち主の時間に耐える道具であるべきだ」と言っている。派手さよりも、毎日を支える強さを先に置いている。
そして“長く使える”は、思想だけでは完成しない。現実の生活には、落下もある。摩耗もある。運が悪い日もある。
だからこそDellは、サステナビリティを「宣言」ではなく「構造」に落とし込もうとしている。公式ブログは、新XPSが取り外しやすいキーボードを採用し、さらにXPSとして初めてモジュール式USB-Cポートを採用して「修理を簡単にし、PCの寿命を延ばす」と明記する。
ここに強い決意を感じる。修理性とは「壊れない」よりもずっと誠実な約束だからだ。壊れても戻ってこられる。使い続けた時間を無駄にしない。サステナビリティこそが真のユーザビリティなのだ、と。
外部環境は変わった。だからXPSの“約束”も更新される
もちろん、Dellが感情だけでXPSを戻したわけではない。
2026年のPCは、AI機能・省電力・統合グラフィックス・ディスプレイの高品位化といった波が同時に押し寄せる。XPS 14 / 16はIntel Core Ultra Series 3と内蔵Arcグラフィックスを前面に出し、体験を押し上げる方向へ舵を切った。

(Dell公式CES 2026 Press Kitより引用)
そして何より、プレミアムPC市場は“選ばれる理由”がシビアだ。そこでXPSが再び立つには、単に「高い」では足りない。思想が必要で、手触りが必要で、使い続けたくなる理由が必要だ。
Dellが“より手頃なXPS 13を出す”と予告したのも、XPSを「憧れの棚」から「現実の選択肢」へ戻す意思表示として読める。公式ブログはXPS 13を「最も薄く、最も軽いXPS」かつ「最も手の届きやすい価格帯」として予告している。
つまり、XPSの復活は「昔の栄光を取り戻す話」ではなく、いまの時代に合わせて、約束の形を更新する話なのだ。
XPSは“戻った”だけじゃない。戻り続けられるか
XPSの復活が本当に“復活”だったかどうかは、発売日の歓声では決まらない。数週間が過ぎ、生活の中で当たり前に使われて、ある日ふと「これでいい」と思えるかどうか——そこで初めて、XPSは戻ってくる。
Dellは「原点に立ち返る」と語り、XPSを“完全刷新”で再構築すると宣言した。
そして公式ブログは、新XPSを「一緒に動き回るためのコンパクトなデバイス」とし、道具は「自分の延長のように感じるべきだ」と言う。
この言葉が本当なら、XPSは“買った瞬間の気持ちよさ”ではなく、“使い続けた末の信頼”で勝負しにきたのだと思う。キーを叩く感触、触れた指に返ってくる反応、画面の気持ちよさ、音の乗り方、熱の逃がし方、そして一日の終わりに残る余裕。そういう些細な満足が積み重なって、持ち主の時間に馴染んでいく。XPSが愛されてきたのは、まさにその領域だった。
さらに胸が熱くなるのは、XPSの未来が「買い替え」ではなく「付き合い方」へ踏み込もうとしている点だ。修理しやすい構造は、使い捨ての速度に抗う。愛着を、継続できる関係に変える。
そして、この物語を“連載”に変える一手も、すでに予告されている。Dellは今年後半に「より手頃なXPS 13」を投入するとしている。
憧れの棚にあった名前が、現実の選択肢として手元に降りてくる。その入口が気持ちよく開くなら、XPSは本当の意味で戻ってくる。——戻ったのではなく、戻り続けるブランドとして。
※重量やバッテリー時間などの数値は、構成や利用条件で変動する(Dellはテスト条件・注意事項も併記している)。
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