停電対策やアウトドア用途で名前が知られるようになったとはいえ、ポータブル電源はまだ「誰でも持っている道具」ではない。むしろ、危機意識が高い人や生活スタイルに合う人が先に取り入れている段階だ。
買う気はある。けれど最後に迷うのは、スペックの差というより「任せていいか」——その一点だったりする。
だからこそ、ここから普及していくうえで、性能は前提として、最後に背中を押すのは「任せていいか」の根拠になっていく。
2026年1月13日、Anker Japanはポータブル電源シリーズ Anker Solix の一部製品で、第三者認証制度「Sマーク認証」を取得したと公表した。対象モデルとして「Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station」も明記されている。
ここで注目したいのは“新しい称号”というより、普及途上の市場でメーカーが率先して「信頼の根拠」を外部に測らせ、選びやすさを作りにいった点だ。少なくとも、そう読める動きではある。
「信頼の根拠」が求められる空気は、じわじわ強くなっている
背景として押さえておきたいのは、リチウムイオン電池を使う道具が、すでに私たちの生活の前提になっていることだ。モバイルバッテリーや急速充電器がそうであるように、「外で電力を持ち歩く」こと自体は特別な行為ではなくなった。
ポータブル電源は、その延長線上にある。より多くの電力を蓄え、複数の機器を動かせる。停電対策でもアウトドアでも在宅でも、“電源がある前提”で組まれた現代の暮らしに対して相性がいい。ここから普及していくのは、自然な流れとして想像しやすい。

ただ、普及するほど最後に問われるのは「何ができるか」だけではなく、「任せていいか」になる。リチウムイオン電池をめぐる事故の話題が繰り返し報じられていることもあって、生活者側の関心が「性能」だけでは完結しにくくなっているのも確かだろう。
ここで言いたいのは「危ないから買うな」ではない。むしろ逆で、必須化していく道具だからこそ、どんな根拠でどんな体制で、品質と安全を支えているのかをユーザーが判断しやすい形にしていく必要がある。その結果として、比較の手間が減り、“安心の根拠”を短い時間で見つけやすくなる。
そう考えると、Ankerが第三者認証(Sマーク)を取りに行った動きは、普及の壁を下げる一手として効いてくる可能性がある。
Sマークは、製品だけでなく“作り方”まで見る
Sマークの話を「ラベルが増えた」と受け取ると、企業努力が見えにくい。実際には、Sマーク認証は“製品の出来”だけで終わらない。制度の案内では、認証製品を同じ品質で安定して生産できる体制にあることを確認するため、初回工場調査と年1回の定期工場調査が義務付けられている。

(https://www.s-ninsho.com/s_attestation.html)
さらに、認証機関の案内では、認証取得にあたって試験料やライセンス料(初期工場調査料を含む)、初期工場調査に必要な交通費等が必要で、取得後もライセンス維持料や工場調査に必要な交通費等の費用がかかる、と説明されている。
つまりこれは「1回取って終わり」ではなく、“作り続ける”を運用で担保し続ける選択だ。工場調査が入る以上、製造現場の手順や記録の整備、継続的な運用まで含めて整え直す場面も出てくると考えられる。
普及途上の市場で、ここまで手間とコストを背負って「信頼の根拠」を整えにいく。そこに今回の企業努力の重さが出る。
AnkerがSマークを取りに行く意味は、「信頼の足場」を先回りで整えることにある
市場が広がるほど、比較は難しくなる。メーカーは安全性を説明し、ユーザーはそれを読み解く。しかし説明が増えるほど、選び方はバラバラになりやすい。
第三者認証を取りに行く判断は、その比較の難しさを「仕組み」で減らす試みに見える。製品試験だけでなく工場調査まで含めて見てもらうのは、信頼を“運用”として積み上げる宣言に近い。普及途上の市場で、そこまで先回りすること自体が、企業努力として読み取りやすい。
第三者認証が効いてくる流れは、ほかの業界でも起きてきた
第三者認証が効いてくる流れは、ポータブル電源に限った話ではない。似た構図は過去にもあった。
たとえばPC用電源では、省エネ効率を示す「80PLUS」が広く浸透し、いまでは“認証がないほうが珍しい”とも言われる。市場が成熟すると、メーカーは性能の差だけでなく、選び手が迷わないための共通指標を整え始める——そういう流れは確かにある。
もう一つ分かりやすいのは、モバイルバッテリーだ。日本ではモバイルバッテリーが2018年2月から電気用品安全法の規制対象となり、準備期間を経て2019年2月以降はPSE表示のないモバイルバッテリーを事業として販売できなくなった、という整理が公式FAQでも示されている。
ここでも「昔は自由だった」というより、普及が進むなかで「最低限ここは揃えよう」が段階的に制度として見える化された、と捉えるほうが実態に近い。

(https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/mlb_faq-2.html)
この前例を踏まえると、ポータブル電源でも、根拠の見える化が当たり前になって競争が「出力の競争」から「信頼の作り方(品質管理・検査・説明)」へ移っていく未来は十分に考えられる。反対に、根拠の出し方がメーカーごとにバラバラなまま進み、選び手の迷いが残り続ける可能性もある。
どちらに転ぶにせよ、AnkerのSマーク取得は、性能ではなく“信頼の根拠”を整える競争が始まり得る、というサインにも見える。
Ankerは今後、「安全性」を武器として本格的に装備していくのか
次に観察したいのは「Sマークがどのモデルまで広がるか」ではない。もっと根っこの話だ。
Ankerはこれまで、性能や利便性で優位性を作ってきたメーカーだ。そのAnkerが、普及の鍵になる“安全性(信頼の根拠)”を、今後も武器として本格的に装備していくのか。もし装備していくなら、そのやり方は「表示を増やす」ではなく、試験と工場調査を含む運用を続けるという重い選択になる。
ここが分水嶺になる。安全性が“コスト”として扱われるうちは、普及はゆっくりだ。安全性が“選びやすさ”として設計され始めると、普及のスピードは変わる。Ankerの今回の動きは、その転換点を先回りしようとしているように見える。次の一手が、その本気度を教えてくれる。
そして、ここにAnkerらしさも出る。Ankerは“便利”を早く届ける会社として語られがちだ。今回のSマークは、その便利さの延長で「任せていい理由」まで整えにいく動きとして読める。
ギャラリー




Anker
ポータブル電源
Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station

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出典・関連リンク
・業界で初めて電気製品の安全のための第三者認証制度「Sマーク認証」を取得したポータブル電源の販売を開始
・お問い合わせ・お申し込み | S-JQAマーク認証(費用/工場調査の説明)
・Sマーク認証取得について(認証取得希望者の皆様へ)(初回工場調査・年1回の定期工場調査)
・リチウムイオン電池による火災2024年は982件 初の全国調査 3割はモバイルバッテリーからの出火
・モバイルバッテリーに関するFAQ – 電気用品安全法(2018年2月対象化/2019年2月以降PSE表示等が必要)
・6月からの電気代値上げに怯える兄貴たちへ!チョイちょい工夫して節電してみようぜ!(80PLUSが普及している旨の記載)


