家の中の“道具”は増えた。
スマホの周辺機器も、キッチンの小型家電も、暮らしを良くするものほど増えていく。けれど、収納もコンセントも、際限なく増えるわけではない。
この「増える道具」と「増えない置き場」のギャップが、2026年のガジェット選びを変え始めている。
そして今の日本は、「新しいものが次々に増える」よりも、同じカテゴリの中で“何を選ぶか”が市場を動かす成熟フェーズに入っている。
だからこそ、スペックの強さより先に日々の便利・安心・置き場が選ばれる理由になる。
本稿では、応援購入サービス「Makuake」が公開した調査データを軸に日本の市場背景(統計・生活構造)も重ねながら、2026年に伸びるガジェットの条件を言語化する。結論から言えば、購買意欲の高い層で強く求められているのは、「便利(統合・使い勝手)・安全(信頼)・スペパ(置き場の解決)」の三つだろう。
データの範囲(本文の前提)
ここで扱う「Makuakeデータ」は、家電・ガジェット購入層(2万円以上購入のサポーター)を対象にしたインターネット調査(2025年11月・有効回答451)を含む。一般人口の平均像というより、“買う人たち”の温度感として読むのが適切だ。
ガジェットに人気が集中、「便利」の中身が、いま変わっている
Makuakeの調査では「最も気になっている家電・ガジェット」として、モバイルガジェット(イヤホン・モバイルバッテリー・周辺機器等)がトップに来た。

この結果は、「携帯性が流行っている」という話というより、便利の入口が“ガジェット側”に寄ってきたことを示している。
家電のように買い替えサイクルが長いものよりも、日々触れる回数が多いものほど「小さな不便」が目につきやすい。だから“便利の伸びしろ”が見え、関心も集まる。
そして、いまの便利は「性能の良さ」だけでは語れない。
Makuakeの声に象徴的なのは、たとえば次の方向性だ。
これ一つあればスマホやPC、スマートウォッチも充電やデータ移行できる。
ここで求められている便利は、突出した性能よりも統合による手順の削減、そして 使い方の単純化に近い。
便利の基準は「スペック」から「体験設計」へ
もちろん、速い・多い・強いは分かりやすい。
ただ2026年に刺さる便利は、スペック表の上ではなく「使う場面」で効いてくる。
- 迷わない:表示・付属品・導線が親切で、初日から使える
- 減る:持ち物(ケーブル/アダプタ)や手順が減り、動作が整理される
- 整う:机の上、棚、ポーチの中が散らからない(置き方・しまい方まで設計されている)
- 途切れない:毎日使ってもストレスが積み上がりにくい(細部の詰め)
つまり2026年、この領域でメーカーが褒められるのは「性能の足し算」以上に、便利を“実感”へ落とし込む作り込みだ。便利は、スペックではなく“日々の摩擦”をどれだけ減らせるかで決まる。
そして摩擦が減るほど、次に残るのは「安心できるか」という一点になる。
便利のゴールは、安心の入口だ。
「安全(信頼)」は“怖いから”ではなく、“選べる安心”として価値になる
便利が日常に入り込むほど、ユーザーは「安心できるか」を同じ強さで求めるようになる。
それは慎重派の話ではない。毎日使うからこそ、安心は“必須の使い勝手”になる。Makuakeの調査でも、安全性への注目が示されている。
行政側もリチウムイオン蓄電池搭載製品について、購入時の PSEマーク確認 や リコール対象確認 を呼びかけているほか、消費者庁もリチウムイオン電池に起因すると考えられる発熱・発火等の事故情報を示し、注意喚起を続けている。

https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/lithium_ion_battery.html
だからメーカー側は、安心をこれまでのテンプレート表現だけで済ませず、買う前に理解できる形に落とし込む必要がある。
- 設計思想がわかる:発熱・保護・品質の考え方を、ユーザー目線の言葉で説明する
- 表示が誠実:注意点や確認事項が、購入導線・使用導線の中にある
- 購入後も安心が続く:保証・交換・問い合わせの動線が迷わない
安全はスペック表の下に隠すものではなく、信頼の体験として前に出てくる。2026年は、その色がさらに濃くなる。
“スペパ”はキッチンから強くなる。理由は「置き場」ではなく「住まいの条件」
Makuakeの調査では、「改善を望む家電」の上位にキッチン・調理家電が入り、ここで スペパ(スペースパフォーマンス)を望む声が強い、と整理されている。
「便利で時短になっても大きい家電が多い」という声が示すのは、性能より先に「置けない・しまえない・出しっぱなしになる」ことが不満になっている現実だ。

ここでスペパの説得力を増すのは、「感覚」ではなく住まいの条件で説明できる点にある。
住まいは“広くなり続ける”わけではない
総務省の「2023年(令和5年)住宅・土地統計調査(基本集計)」では、専用住宅の平均延べ面積が90.86㎡、居住室数が4.26室と示されている。
また居住室数は、1993年の4.79室から2023年の4.26室へ減少している。

「家が狭い気がする」という体感は、気分の問題ではない。少なくとも、置き場が増え続ける前提で暮らせる状況ではない。
都市部の“面積の現実”が、スペパを加速させる
さらに都市側の圧力もある。首都圏の新築分譲マンションでは、2024年の専有面積の中央値が68.84㎡で、「拡大はしたが60㎡台が続く」と整理されている。
また都心6区では、2024年度上期の専有面積の平均値が67.45㎡で3期連続70㎡未満とされる。

キッチンは住まいの中でも「広げにくい場所」だ。そこで家電が大型化・多機能化するほど、生活側は“性能”より先に「収まり」を求める。Makuakeの「キッチン×スペパ」傾向は、住まい条件ときれいに噛み合うのだ。
2026年のスペパは「小型化」ではなく「収まる体験設計」
スペパは単なる小型化ではない。小さくして使いにくいのは本末転倒だ。
2026年に刺さるスペパは、次の3点をセットで満たす「収まる設計」になる。
- 常設できる:出しっぱなしでも圧迫感が少ない(奥行き、ケーブル、見た目まで)
- しまえる:収納動線に乗る(分割・折りたたみ・付属品の収まり)
- 維持できる:清掃・手入れがラクで、使わなくなる理由を潰している
そしてこの「収まり」の要求は、キッチンだけに留まらない。
置き場が固定された場所ほど、つまり家の“制約が強い場所”ほど、スペパは機能そのものになる。
2026年のスペパは、常設できる/しまえる/維持できるの三点セットで語られるだろう。
成熟市場の日本は「失敗したくない」。だから“納得できる価値”が問われる
日本の家電・AV市場は、「とにかく台数が増える」市場というより、買い替え・買い足しの中で“何が選ばれるか”で動く成熟市場に近い。
その空気感を定点で見せてくれるのがJEITAの「民生用電子機器国内出荷統計」だ。JEITAは薄型テレビやDVD/BD、カーナビなどの台数・金額を毎月公表しており、市場の変化をカテゴリの中身まで追える。
まず大枠として、2025年の薄型テレビは年計で4,399千台(前年比98.1%)と、数量は「急拡大」というより横ばいに近い。
ところが、同じ薄型テレビでも“どれが選ばれているか”は変わっている。
JEITAの2025年9月データでは、薄型テレビ全体は335千台(前年比97.5%)と前年割れだった一方、60型以上は49千台(前年比129.5%)と伸びている。
さらに、4K(対応)テレビは201千台(前年比113.9%)で、薄型テレビに占める数量シェアが59.8%。金額面では、4K(対応)テレビの出荷金額が268億円、薄型テレビ全体の出荷金額313億円に対して、金額シェアは85.7%に達する。
つまりJEITAの数字が示しているのは、「新規需要で台数がドンと増える」というより、同じカテゴリでも“価値の高い選択肢”へお金が集まるという構造だ。
成熟市場では、ユーザーは買うか買わないか以上に、「買うなら失敗したくない・納得したい」へ寄っていく。だから市場は「選ばれ方」で動く。

この前提に立つと、冒頭に紹介した「便利(統合・使い勝手)・安全(信頼)・スペパ(置き場)」という三軸がますます効いてくる。
2026年の勝ち筋は、派手な新機能よりも、納得できる理由と、続く体験。
JEITAの統計が映しているのは、その“選び方の時代”がすでに始まっている、という現実だ。
2026年のヒット条件は「減る」「安心できる」「収まる」
Makuakeのデータが示しているのは、ニーズの“点”ではなく、暮らしの“線”だ。
2026年のヒット条件は、結局この3つに収束する。
便利(統合・使い勝手)=「減る」
速い・多いより先に効くのは、手順が減る/持ち物が減る/迷いが減ること。
“これ一つで”が刺さるのは、性能のためではなく生活の摩擦を静かに消すからだ。
安全(信頼)=「安心できる」
便利が日常に入るほど、安心はオプションではなく必須になる。
買う前に理解できて、買った後も迷わない。安心が導線として設計されていることが、ブランドの差になる。
スペパ(置き場)=「収まる」
2026年のスペパは“小型”ではない。
常設できる/しまえる/維持できる。この三つを満たして、初めて「収まる」と感じられる。
だからキッチンからスペパが強くなるのは、流行ではなく住まいの条件そのものだ。
日本の“厳しさ”は、メーカーのファンを生む最高の舞台
便利(統合・使い勝手)、安全(信頼)、スペパ。
どれも派手な機能追加ではない。むしろ、数字にも載りにくい“企業努力”の領域だ。
けれど成熟した日本の市場では、そこがいちばん効く。
JEITAの統計が見せるように、市場は「新規需要が膨らむ」よりも、同じカテゴリの中で何が選ばれるか——どの価値にお金が乗るかで動く。
だからこそメーカーは、すごさを叫ぶより、続く体験を設計し、その理由を誠実に説明できるかが問われる。
onesuiteが「メーカーのファンを作る」メディアであるなら、語るべきはスペックの強さではなく、暮らしを崩さないための設計だ。
便利は“減る”として体感できるか。安心は“見える”か。スペパは“収まる”か。
この三つを満たす製品は、派手じゃなくても、使うたびに信頼が積み上がる。
2026年のヒットは、驚きで始まらない。
「これなら大丈夫」が、「これが好き」に変わるところから始まる。
ギャラリー





出典・関連リンク
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