先日ワコムからMovinkPad 11が出た際にレビューを行った筆者だが、全体の総評としては「描き心地はピカイチだけどスペックは少し物足りない」といった感触だった。体感としては普段筆者が使用しているiPad Air(M2)+ Apple Pencil Proの組み合わせよりも格段に描きやすい一方で、高解像度のキャンパスを使用した際やレイヤー数が増えた際の処理性能に若干の不安があったのだ。
そんな「あー性能上がった上位モデルがあったらなぁ」という筆者の声を予期していたように、なんと正にその”性能が上がった上位モデル”「Wacom MovinkPad Pro 14」が登場したのである。公式ストア価格は144,980円(税込)で2025年秋発売を予定。
製品概要

ワコム
Wacom MovinkPad Pro 14
DTHA140L0Z

製品名:Wacom MovinkPad Pro 14
公式ストア価格:144,980円(税込)
発売日:2025年秋
製品ページ:https://www.wacom.com/ja-jp/products/wacom-movinkpad-pro-14
Snapdragon 8s Gen3+有機ELディスプレイを採用し大きく高性能化
Wacom MovinkPadをご存知ない方のため、簡単に解説しておくと、本製品はAndroid OSを搭載したイラスト制作特化のタブレットPCだ。いわゆる液晶ペンタブレットとは異なり、PCを必要とせず、製品単体でどこでも描くことができる点が大きな特徴となっている。そして今回発表された「Wacom MovinkPad Pro 14」はその名の通り、正にプロ向けを謳うのに相応しい性能だ。


性能面ではSoC(System-on-a-chip)にSnapdragon 8s Gen3を採用。最新のハイエンドモデルと間ではいかないものの、兄弟モデルMovinkPad 11で搭載されているMediaTek Helio G99と比べ大きく性能アップ。加えてメモリも12GBになったことで、より広いキャンパスや多くのレイヤーを使用したイラストであっても快適に動作してくれるだろう。またストレージ面も内蔵256GB、さらにメモリーカードスロットを搭載しているため、長期間の使用でも容量に不安を覚えることは無いはず。

そして最も大きな変更点と言えば、Wacom Premium Textured Glassと呼ばれる特殊な表面処理を施した有機ELディスプレイの搭載だろう。

イラスト制作における有機ELディスプレイの大きな魅力は、その色域の広さと黒の表現力だ。「Wacom MovinkPad Pro 14」のディスプレイはsRGBカバー率、DCI-P3カバー率ともに100%という広色域を誇り、加えて有機ELの採用により完全な黒を作ることが可能。特にカラーイラストにおいて暗所の色表現をより正確に描写してくれる。

また前述のWacom Premium Textured Glassもポイントで、これはディスプレイ表面にアンチグレア(非光沢)、アンチリフレクション(反射防止)、アンチフィンガープリント(指紋の付着防止)処理を行ったもの。中でもアンチリフレクションについては特にこだわった部分だそうで、通常アンチグレア処理を行った際、光の乱反射により表面が白く曇って見えてしまうのだが、この乱反射を反射防止処理によって打ち消すことで、非光沢ながら透明感のある黒を実現している。
当然ながらペンの描き心地を含め調整されているため、ワコムの担当者曰く「保護フィルムの使用は非推奨」とのこと。標準状態が最もベストな表示であり描き心地ということだ。

Wacom Canvasからの出力が透過pngに。液タブ化できる機能など、ソフト面も進化
ハードウェア面の進化もさることながら、ソフトウェア面も大きく進化している。特にWacom Canvasの「CLIP STUDIO PAINTで続きを描く」機能を使用した際に、透過pngで移行できるようになった点は非常に嬉しいアップデートだ。


Wacom Canvasで描いていた際の背景色が透明になった状態でCLIP STUDIO PAINTに引き継げるため、「ラフや構図をWacom Canvasで練り、CLIP STUDIO PAINTで追い込む」というワークフローがよりシームレスに実現可能。従来から搭載されているQuick drawing機能と組み合わせることで、描きたいと思った瞬間から描き始められる製品として、より完成度が高まったのは間違いない。この機能は先行して販売されているWacom MovinkPad 11でも使えるようになるとのことで、すでにお持ちの方にとっても嬉しい要素だろう。
加えて筆者自身、まさか有るとは思っていなかったのが、MovinkPadの液タブ化である。

実はこの機能、MovinkPad 11の発表会で筆者が口走った内容がそのまま実現されている。
「エントリー層だと、MovinkPadも買って液タブも買ってって結構厳しいですよね。だったら、このまま液タブとしても使えて、ゆくゆくはCintiqに〜みたいな階段があったら嬉しいんじゃないでしょうか。」
という趣旨の発言を現地でしたのだが、どうやら発売後に同様の意見が多かったらしく、本当に機能として実装されてしまったのだ。
この機能は新たに設けられた「Wacom Lab」という実験的な機能を提供し、ユーザーと共にブラッシュアップする設定項目に追加されるらしく、下記の写真にあるように「Instant Pen Display Mode」という呼称になる様子。

専用ソフトこそPCにインストールする必要があるものの、WindowsやMac問わず使用可能で、さらに有線・無線(同一LAN環境下)の両方で使用可能とのこと。実際の使い勝手はまだ未知数だが、挙動次第では「自宅ではPCに繋いで液タブとしてイラスト制作、外出先では単体で気軽にラフ作業」といった理想的な使い方ができるかもしれない。

iPad超えは間違いなしか!?イラスト特化のWacom MovinkPad Pro 14
以前のWacom MovinkPad 11をレビューした際に、明確に描き心地はiPad Airを超えていると評価した筆者としては、今回の「Wacom MovinkPad Pro 14」はかなり注目度の高い製品だ。レビューの際に気になった処理能力なども全て改善され、情報だけ見ればiPad超えは確実と言える。
また144,980円(税込)という価格は一見するとかなり高めに映るものの、13インチモデル/ストレージ256GBのiPad AirをApple Pencil Proとセットで購入した場合の価格は166,600円(税込)。約2万円ほどお安くなる計算で、イラスト目的でiPadを購入している方であれば、「Wacom MovinkPad Pro 14」は十分に”アリ”な選択肢だろう。
イラスト特化のタブレットを探していた方、ついに本命が出てきたかもしれませんよ?
ギャラリー













ワコム
Wacom MovinkPad Pro 14
DTHA140L0Z

出典:プレスリリース
記事内画像は製品発表会にて撮影


