ニコン Z8:ライターの取材仕事でも使い勝手よく、映像も十二分に撮れるNikon最新ミラーレスカメラ

Nikon

ミラーレス一眼

Z 8

目次

筆者とデジタルカメラ

アクティビティには寛容だった筆者の父

筆者の父親は、ゲームは買ってくれないが、趣味に繋がるようなアクティビティには寛容なタイプだ。筆者が少しでも興味を示せば、釣竿やらスポーツ用具やら遠出の旅行やら、割とすぐに買ったり行ったりした思い出がある。それに反してゲーム好きに育ってしまったのはまた改めて語るとして、幼い頃に買ってきたものの中にはデジタルカメラも含まれていた。
元々は父親がフィルムカメラを使っていて、時代の移り変わりに合わせて購入したデジタルカメラだったが、旅行先などで私が撮りたがればすぐに貸してくれたのが懐かしい。(たしかCASIOから出ていたEXILIMシリーズだった気はするが記憶は定かではない)後から聞いた話によると本人も使いたかったから買ったらしいが、幼少期の体験というのはその後に大きな影響が及ぶことをのちに知る。

筆者とニコンの出会い

そんな筆者が中学生の時に初めて触ったデジタル一眼レフカメラはニコンの「D80」で、後継機の「D90」の期間も合わせて人生の1/3程度は旅行に帯同していた。元々は先述の流れのまま父親が買ったカメラで、筆者が親元を離れるにあたってそのまま自分の所持機となった。現在はD80だけ手元にいなく、紆余曲折あり海外にいるがまだ元気にしていることだろう。

筆者が所持しているニコンD90(左)とD80(右)
9年前に偶然撮っていたD90(左)とD80(右)
まさかこんな形で使うことになるとはつゆ知らず、ただの記録用にiPhone5sで撮った写真なのでクオリティに関してはご勘弁願いたい。

そんなこんなで社会人になり、クリエイティブ領域やライターとして記事の執筆をライフワークにしているわけだが、記事というのはスチール撮影が切っても切れない関係性だ。(厳密には作り込むスチール撮影ではなく、素材の撮影やイベント取材等での撮影という意味でのスチール撮影)そのため必然的にカメラを握る機会も以前より増えたわけだが、幼少期から素人ながらカメラを握ってきた経験が生きているなと感じる機会も増えたというのが最近の筆者だ。

ニコンの最新ミラーレスカメラ「Z8」

前置きが長くなってしまったが、そんな日々を過ごしていたとある先日、ニコンの最新ミラーレスカメラ「Z8」を手にする機会があった。昔はスチールがメインだった一眼レフ・ミラーレスも、すっかり映像でも主軸を張れるような性能になっている。
※映像という言語表現について:スチールに対応する単語としてはムービーが適切かと思うが、筆者の感覚値的には映像と言う方がしっくりくるため以降は”スチール・映像”と呼称する。

筆者は映像カメラマン(ビデオグラファーやシネマトグラファーといった職種)ではないため映像を撮ることに関しては素人だが、広告クリエイティブ案件やMV案件で積み重ねた現場経験はあるため、”映像撮影の現場”で求められる温度感は理解しているつもりだ。

その上で、本記事では「仕事におけるZ8」について、スチール・映像両方の観点から語らせていただこう。なお、先述の通りプロのカメラマンではないのでスペックに基づいた厳密な評価は他の記事に任せることとしたい。また、各用語について説明をしだすとキリがないため、多少は知識がある前提でざっくり解説しながら進めていくと先に断っておこう。ただでさえ長くなってしまったので、読み物として進めてもらえたら幸いだ。

ライターの取材仕事において大事なカメラの要素

取材仕事に求められるカメラのスペックとは

まず前提として、ライターの取材仕事で必要になる撮影がどういったものかを整理するところから始めようと思う
スチール撮影としては以下のような要件が挙げられるだろう。

スチール撮影における主な要件

  1. 綺麗な画質
  2. レンズの選択肢
  3. 取り回しの良いカメラボディ(拡張性というよりコンパクトさ)
  4. マニュアル時に必要なボタンが独立して押しやすい
  5. バッテリーの持続性
  6. RAW形式でデータ保存が可能
  7. 記録メディアがSDカードに対応している

多少知見がある人ならばご理解いただけると思うが、要は変なカメラさえ選ばなければ大筋合格ラインというのが正直なところだと思う。

1. 綺麗な画質

一応順に解説をしていくと、まずは綺麗な画質・鮮明に映る画質であることが望ましい。極端に画質が悪い写真の載ったメディアなど、誰も見ないだろう。ただ掲載がWebなのか紙面なのか、あるいはそれぞれの仕様によって求められる画質は違うケースもあるため、必要十分を狙いに行くなら高画質の必要はないかもしれない。

2. レンズの選択肢

レンズについて、取材仕事というのはイベントや店舗の現地で撮影するシチュエーションが多く、決して良い環境とは言えないことも多い。その一例が、足場だろう。要は「もうちょっとヒキで撮りたいけど足場的にヒケけない」や「もうちょっとヨリで撮りたいけど足場的にヨレない」といったシチュエーションだ。それを広角レンズやズームレンズにすることで解決することは多々ある。

3. 取り回しの良いカメラボディ(拡張性というよりコンパクトさ)

ボディに関しても上記と似た考え方で、自分の思い通りの立ち位置が取れないことも多い現場では、身動きがとりやすいコンパクトボディだと大変助かる。

過去に行った実際の取材の様子足場が十分あるとは限らない
実際の取材の様子がこちらだ。
決して展示サイドの問題ではないのだが、足場が十分あるとは限らない。

4. マニュアル時に必要なボタンが独立して押しやすい

また、ボディに関する要件として、頻繁に使用するボタンはなるべくアクセスのいい場所にあると助かる。具体的にはマニュアル時によく調整する、シャッタースピード・絞り(F値)・ISO感度・露出補正・ホワイトバランスといったあたりがあると、何かと忙しい取材シチュエーションでもいちいちメニューへいかずに済むため、撮りたい瞬間を逃すこともなく撮影時間の短縮に繋げられる。

5. バッテリーの持続性

バッテリーについては読者もイメージしやすいと思うが、バッテリー交換をせずにイチ現場が乗り越えられるならそれに越したことはない。(結局リスクヘッジで予備バッテリーを持っていくのは内緒だ)
次のRAW形式というのはカメラの記録形式の一つで、画像としてのデータだけでなく低圧縮率のまま環境データも保存できるというものだ。これにより後からソフトウェア加工した際、より綺麗に現像することができる。現場というのは一度限りのシチュエーションが多いため、万が一撮影内容が良くなかった場合に後からカバーできるようになる。

6. RAW形式でデータ保存が可能

最後の記録メディアについては、必須ではないものの、SDカードに対応していると利便性がいいなと感じることは多い。取材というのは撮影が出来ても執筆スペースがない場所が大半のため、記事公開までのスピード感を意識すると必然的にカフェなどで執筆・編集作業に入ることが多くなる。その際、いちいちカードリーダーを出したり、本体とPCを繋げたりするのがわずらわしく感じる瞬間が往々にしてあるのだ。

7. 記録メディアがSDカードに対応している

その点、SDカードであればPCによっては直接読み込めたり、ドックやハブに備わっていたりと選択肢が増えて小さなストレスから解放される。また、複数人で動く取材だったりするとカードリーダーがいらないというのは大きく、データの受け渡しにおける煩雑さを軽減してくれる。

先述の通り変なカメラでなければクリアできる項目が多く、場合によっては一眼やミラーレスではなく、レンズ一体型でより小型化されたコンパクトデジタルカメラ(いわゆるコンデジ)で事足りる場合もあるだろう。ただ筆者が一眼レフのようなレンズ交換式に慣れているということもありつつ、個人的には”撮ってる感”を引き立たせてくれる一眼レフは、対外的にも自身のモチベーションにも直結する重要なポイントだと感じている。

この「onesuite」のように映像が記事とセットになったメディア媒体というのは比較的珍しいかと思うが、映像においては以下の通りだ。なお、一部スチール時の要件と重複するものは記載していない。

映像撮影における主な要件

  1. 4K 120pレベルでの動画撮影
  2. 取り回しの良いカメラボディ(コンパクトさも大事だが、ある程度の拡張性も)
  3. ProRes収録が可能
  4. 記録メディアがCFexpressカードに対応

決して厳しい要件ではないが、このようなレベルが最低限かと思う。

1. 4K 120pレベルでの動画撮影

順を追って紹介していくと、映像においては4Kレベルの解像度を担保しつつ、120pの表現の幅もあると嬉しい。(120pに関しては説明し出すと長くなってしまうので、大雑把に120フレームと理解いただきたい)何年か前によく聞かれた「はたして4Kは必要か?」という意見もあると思うが、昨今ではある程度4Kで視聴できる環境が普及したため、仕事で数年使うことを考えれば4Kも撮れる性能が望ましいのが1点。さらに映像編集という観点では、4K素材で撮っておいて編集でクロップして寄った画角にするという手法も取れるので、解像度は高いに越したことがないのが2点目だ。
またテレビ的な画作りをする場合はあまり使わないのだが、120フレームで収録できればスローモーションの映像表現がやりやすくなるため、制作する映像に幅を持たせたい場合はあると良い機能と言えるだろう。「レベル」と表現したのは、機種によって4Kは60pが上限だが8Kで30pも撮れるといった場合もあるため、用途に合わせて個人の判断に委ねるべき点として「レベル」としている。

2. 取り回しの良いカメラボディ(コンパクトさも大事だが、ある程度の拡張性も)

ボディはスチールの時と打って変わって、ある程度の拡張性も大事になってくる。制作するテイストや表現したい内容にもよるが、例えばマイクをつけてインタビュー等で音の収録をする場合や、カメラワークの安定感を高めるグリップ(ジンバル等も含め)を装着したりなど、スチールにはなかった要素にも対応するべく拡張性もあると良い。それぞれ別で用意したりなど代替案もあるので拡張性が必須というわけではないが、こちらもあるに越したことはない。実際はサードパーティ製のケージ(外側につけるフレームのようなもの)を装着すれば解決する部分も多いので、そこも含みで拡張性と認識いただければと思う。

3. ProRes収録が可能

次にProResと記録メディアについてだが、ProResというのは大雑把に言ってしまうと編集前提の高画質で作業が軽いデータ形式だ。(かなり大雑把に言っているので、気になる人は調べてみて欲しい。それなりにややこしい領域ではあるが。)一般的なH.264という形式より容量が重くなってしまうのがデメリットではあるが、やるからには綺麗に作りたいというのが大多数の作り手に通ずる点だろう。

4. 記録メディアがCFexpressカードに対応

そこに繋がる話として記録メディアの方に移るが、スチールよりも重いデータを更なるスピードで記録する映像において、記録メディアは特に気をつけたい。CFexpressカードは従来のカメラでよく使われるSDカードよりも大容量かつ高速に読み書きができる記録メディアで、上記で書いたような4K 120pで撮影をする場合には是非とも使いたい。下手なSDカードで撮影をしてしまうと都度発生するデータ保存(データ書き込み)に長時間を割かれたり、撮った素材を確認しよう(データ読み込み)にも動きが遅かったり、なんてことになりかねない。

記事において大事な要素:スピード感

機材が備えるべき要件として長々と語ってきたが、筆者のようなライターの場合、さらに大事な考え方が存在する。それは、掲出までのスピード感だ。
先ほどの要件でもスピード感という単語は何度か顔を出していたが、まさに筆者の日頃の悩みの一つではある。例えばライター業務にありがちなイベントの取材や新製品等の場合「如何に早く出すか・読者に届けるか」というのが非常に大事になってくる。1ヶ月前の話題ばかりなニュース番組なんて誰も見ないだろうし、記事を書くからには多くの人に見てもらいたい。そういうことだ。

個人的にはたとえ時間がかかったとしても1枚1枚を作り込みたい瞬間というのは大いにあるが、業種的に許されないケースは他にもあるだろう。例えば”撮って出し”なんて呼ばれることもある、結婚式のエンドムービーに当日撮った映像を流すタイプの映像カメラマンはまさにそれだ。ちなみに筆者の周りにもいるが、似たケースとはいえライターとは違う特化したスキルが必要だよなぁとしみじみ感じる。

ノーレタッチ・ノーカラコレがベスト

それではそのスピード感をどうやって解決するか。 スチールや映像において、一般的に最も時間がかかる工程は編集・加工だと筆者は捉えている。一つとして同じ明るさや色合いの現場はないため、撮影時は小さいモニターで良さそうだと思ってもパソコンの大画面で見たら全然ダメだった、なんて話は日常茶飯事だ。それ故に、要件でも挙げたように編集・加工前提のデータ形式があると望ましい場合や、仕方がなく編集・加工に時間を割かざるを得ないことが非常に多い。
まとめよう、要するに編集・加工の時間を減らすことができれば、掲載に至るスピード感はかなり上げられる。そのためには、なるべく撮った素材が無編集・無加工で使用できれば一番早い。(映像において、最低限の編集は免れない点はご了承)

魅力ではあるが時間がかかるレンズ交換

上記以外でも撮影という工程において圧縮できる時間はあって、それはレンズ交換の時間だろう。だからこそレンズ一体型のコンデジが採用されるケースもあるわけだが、そこはレンズ交換式に魅力を感じている筆者なのでレンズは変えたい。とはいえレンズ交換というのは決して雑にやる作業ではなく、気を使わなければいけない瞬間でもあり、手間もかかる作業なのだ。
レンズ交換式のカメラは脱着することでカメラレンズとカメラボディに分けられるが、接続部分はカメラにとって命のとも言える敏感なセンサー類や幾重にも重ねられたレンズ自体が露出することとなる。そこにほこりやゴミが付着すると単純に撮影に支障が出るだけじゃなく、クリーニングするのも面倒だ。それ故にレンズ交換をする際はすぐにキャップをする他、置き方・向きに注意する必要がある。
このため、一部シチュエーションに限っては、レンズ交換できるという魅力を捨て、機能で代用するというのも一つの選択肢なのだ。メタ的な発言となってしまうがZ8にももちろん搭載されているため、併せて後述とする。

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