XREAL Oneが日本でも発売決定!製品の特長やスペックなどをレポート。

皆さんはPCでの作業中、モニターを何枚使用しているだろうか。1枚? 2枚? それともそれ以上?

ちなみに筆者が自宅で作業している際は、常時4枚使用している。メインで作業をする1枚に、サブで情報などを表示する2枚目、チャットツールなど常時監視したいウィンドウを表示する3枚目に自由枠の4枚目だ。
個人的にはこの状態が非常に作業しやすく便利に使っているのだが、一方で少々困るのが外出時である。 外出時のお供に使用しているMacBook Airは外部モニターが1枚までという制限もあり、Sidecar を使用しても内蔵モニター含め計3枚。さらに言えば、そもそも外出先でそんなに複数枚を設置するスペースは望めない。
モニターの多さ(作業スペースの広さ)は作業効率に直結すると考えている筆者からすれば、外出時は常にパフォーマンスが低下した状態と言っていいだろう。これは由々しき問題だ。

そして、そんな筆者が現在気になっているのがARグラスである。

ARグラスを使えば仮想空間上にディスプレイを拡張できるため、外出先でも広い画面スペースで作業できるほか、仮想なので設置スペースを気にする必要がない。筆者の”外出時モニター問題”を解決を解決してくれるかもしれない希望の光がARグラスなのだ

というワケで今回は、そんなARグラスの最新モデル「XREAL One」の製品発表会にお邪魔して来た。新製品の特長や性能など気になる情報を、発表会の様子を交えつつお届けしていこう。

製品概要

XREAL

XREAL ONE


製品名:XREAL One
発表日:2024年12月11日
価格:69,980円(税込)
製品ページ:https://www.xreal.com/one/

目次

ケーブル1本で快適動作。すべてがスマートになった「XREAL One」

製品の紹介に入る前に、軽くARグラスというアイテムについて解説を交えておきたい。よくVRグラス(ゴーグル)と混同されることも多いが、すべてが仮想空間上に展開されるVR(Virtual Reality)に対して、AR(Augmented Reality)は拡張現実。つまりデータやアプリケーションを、現実世界の上に重ね合わせるように見ることができるのがARグラスというワケだ。

コレだけ聞くと非常にSFっぽく現実味がなくなってしまうが、現在のARグラスはひと言で表すと「眼鏡の形をした透過ディスプレイ」である。設置スペースを取らず、どこにでも持ち出せる自分だけのディスプレイ。こう考えると一気に身近に思えてこないだろうか。

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XREAL One使用中のイメージ図。(プレスキットより引用。) もちろんデバイスによってはプロジェクションマッピングのように、実在のオブジェクト上に展開し上書きするようなものも存在する。ただこうした機能は、どちらかと言えばVRゴーグルのARモードなどに搭載されることが多いため、本記事ではARグラスの定義からは外させてもらった。

重量82g。見た目は少し大きめのサングラス

ARグラスが”眼鏡の形をしたディスプレイ”だと言うことがわかったところで、話を「XREAL One」に戻そう。VRゴーグル等と比べできる事は限られるものの、逆を言えばそれだけコンパクトに作ることができるのがARグラスの強みだ。中でも「XREAL One」は非常にコンパクトかつ軽量であり、外出先で使ったとしても悪目立ちすることもないはず。

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見た目としてはほとんどただのサングラスで、強いて言うなら少しレンズ部が目から遠くツルが厚いくらいだろうか。本体重量は82gに抑えられており、長時間の使用でも疲労感は少なそうだ。交換用のノーズパットが付属するためフィット感が調整できるほか、眼鏡屋さんで作ってもらえば度付きレンズも装着できるとのこと。

ノーズパッドとケーブルを除く

グラス単体で3 DoF!ケーブル1本で32:9のウルトラワイドモニターが

またこれまでのXREAL Air2等と比べ、最も大きな進化点はARグラス単体での3 DoF(頭部トラッキング)に対応しているところだろう。3 DoFに対応することで、画面を頭部追従だけでなく空間に固定しておくことが可能になる。

以前のモデルでは、グラスとPC等との間に噛ませるXREAL Beamというオプションが必要だったが、Oneからは製品単体で実現可能に。これにより画面固定で使いたい場合でも、接続するのはケーブル1本で済むようになったのだ。

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写真では2本PCからケーブルが繋がっているものの、グラスと繋がっているのは右側の1本のみ。ケーブル1本でサクッとつながるようになったのは大きな変化だ。当然ではあるが従来の頭部追従も使用できる。

また発表会で体験した中で筆者が特に気に入ったのは、32:9の画面を表示できるウルトラワイドモードである。画面固定にすることで通常のウルトラワイドモニターそのままの使用感で使えるため、非常に使いやすい。

ウルトラワイドモードのイメージ映像。このほかにも16:9の画面を固定表示するアンカーモードや、頭部追従するフォローモード、ミニスクリーンを表示するサイドビューモードなどがある。
引用元:https://www.xreal.com/us/one/

解像度としては3,840×1,080 pxとして認識されるようで、これはレンズ1枚辺りがフルHD(1,920×1,080 px)のため、その2枚分とのこと。視認性もかなり良く、執筆やプログラミングといった文字を追うような作業であっても問題なさそうだ。

また画面サイズはある程度調整可能で、上で挙げたような大画面にすることも可能。ただしここまで寄ると左右は視野角から溢れてしまうため、作業をメインで使うなら「大体50-60cmくらい離れた位置に、44型程度の画面が浮かぶ」くらいのバランスが最も使いやすいと感じた。あくまで体感にはなるが、購入を検討している方が居れば参考にしてほしい。

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XREAL One上の画面を見つつタイピングをしてみたが、使用感は物理的なモニターそのもの。文字が潰れて読みにくいなんてことも無く、実用的なモニターとして使用できそうだった。

最大120fps・3msの低遅延を実現。秘密は「X1 Chip」

体験した限り、通常のモニターと全く変わらない使用感を発揮してくれる「XREAL One」。筆者がそう感じた理由は、おそらく本製品の持つフレームレートの高さと遅延の少なさから来るものだ。

VRゴーグルなどでも言われるように、フレームレートの低下は本人自身が気づかずとも影響を受けることが多く、画面酔いや違和感の原因になりやすい。その点「XREAL One」では、最大120fpsの滑らかな表示を実現しているため、こうした影響を受けにくいのだ。加えて反応速度も3msとAR/VRグラスの中では最速に近い値であり、一般的な液晶モニター(5ms)と比べた際にも早い部類に入る。ゲーミングモニターとまではいかなくとも、それに準ずる性能が有ると言って良いだろう。

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実際にゲーム機を用いた体験も行ったが、プレイしたアクションRPGは全く違和感なく操作できた。

この高フレームレートと低遅延を実現した秘密が、「XREAL One」に搭載された「X1 Chip」だ。

「X1 Chip」はXREAL社が自社開発した制御用チップで、前述のグラス単体3 DoFなどもこのチップによるもの。さらに、これまで映像の出力デバイス側で行っていた制御を「X1 Chip」が担うことで、データの処理経路を削減。これによりXREAL Beamと比べ、85%も遅延時間を減らすことができたという。

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こちらがX1 Chipの実物。幅1cmにも満たない大きさながら、XREAL One最大の特徴と言える。
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「X1 Chip」について語るXREAL社 CEO Chi Xu(チー・シュー)氏。開発には3年以上かかったという。

そのほかにも「X1 Chip」によって、デバイスやプラットフォームに寄らない体験が可能になったのもポイントのひとつ。XREAL OneはDisplayPort Altモードが使用可能なUSB Type-Cを持つデバイスであれば、基本的にどんな製品とも組み合わせが可能なようでスマートフォンやPC、コンシューマーゲーム機など幅広い製品で一貫した性能を発揮できるようだ。

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気になるポイントをさらに掘り下げ! プロダクト担当者にインタビュー

さて製品の特長がある程度把握できたところで、さらに情報を掘り下げていきたい。軽量化の秘密や、対応デバイス、他モデルとの差別化などは特に気になるポイントだ。今回はXREAL社のプロダクトマネージャーの高 天夫氏にインタビューすることができたため、その内容を一問一答形式で掲載していこう。

重量82gの理由とその背景

かつてPCメーカーの製品サイドに関わっていた筆者としては、チップが増えるというのはかなり大きな変更だ。そもそもチップが入るスペースはもちろん、「X1 Chip」の性能を考えれば冷却周りなども必要になってくるはず。それにも関わず既存のXREAL Air2からはたった10gしか増えていない……これは一体どういうことなのか。

—— X1 Chipの搭載により設計変更なども有ったかと思いますが、重量は既存のモデルから大きく変化をしていないように思います。この軽さを実現できた理由や、重量決定の背景などについて教えてください。

高 氏:
重量については、装着感、消費電力、品質強度、前後のバランス、ディスプレイモジュール、デザインなどを総合的に考慮し、さらにXREAL X1のチップも取り入れた上で、最終的な重量を82gに仕上げました。この重さであれば、長時間の装着でも大きな負担は感じにくく、ウェアラブルデバイスとして現時点での最適解と言えます。

例えば、前後のバランスについては、柔軟性のあるPCD構造や新製品での発熱構成の再設計が必要でしたが、こうした調整によってユーザーが実際に感じる体験面での向上を実現しました。実際、XREAL Oneを装着した多くの同僚が、以前のバージョンと比較して重さを感じることがなく、同じように軽快に感じると口を揃えて言っています。

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XREAL社 プロダクトマネージャーの高 天夫(TIANFU GAO)氏。

流石に軽量化の真に迫った部分は教えてもらえなかったものの、どうやら内部構造と実用性のバランスを加味した上で82gという値に落ち着いたように読み取れる。特に実重量よりは体感重量に重きを置いているようで、実際Air2も使用したことが有る筆者もほぼ違いは感じられなかった。この部分が前後のバランス調整などによって実現した部分なのだろう。

本当にDP Alt対応のUSB Type-Cなら何でも大丈夫なのか。それ以外の制約は?

前述の通りDisplayPort Altモード(以下、DP Altモード)対応のUSB Type-Cであれば、ほとんどの製品で一貫した性能を発揮できるという「XREAL One」。ただ近年ではType-Cの規格もかなり複雑化しているため、それ以外の要素も必要かもしれない。と言うことで、電力回りなどその他の制約がないのかも確認してみた。

—— 体験会の中ではスマートフォンなどでも動いていましたが、XREAL Oneの動作条件についても伺えればと思います。(電力供給上、PD何W以上必要。他対応OSや技術的要件など)

高 氏:
私たちのARグラスを使用するには、スマートフォンが一般的なDP Altモード出力方式に対応している必要があります。また電力供給としては、5Wの出力が必要で、これによってARグラスを起動させることができます。

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興味本位で伺ったところ、かなり衝撃的な情報が出てきた。なんと5Wの出力で動いてしまうそうだ。5WといえばUSB 3.0ポートが持つ基本的な出力である4.5Wより少々多い程度で、DP Altモード対応のポートであればまず間違いなく対応している電力量である。これなら確かにほとんどの製品で使えると言うのも納得の数値だ。

ちなみに従来通りXREAL Adapterと呼ばれるオプションの変換コネクターを使用することで、HDMI出力のデバイスとも接続可能。特にNintendo Swichなどは、USB Type-CがあるもののDP Altモードに対応していないため変換が必要だ。

XREAL Air2シリーズなど既存モデルと比較した際の立ち位置

最後に既存モデルと比較した際の立ち位置についても確認してみた。既にXREALのARグラスを使用しているユーザーや、購入を検討していた方からすれば非常に気になるポイントだろう。

—— XREAL Oneで得られる体験を考えると、既存モデル「XREAL Air 2 Pro」の上位互換にも思えます。XREAL Air 2 シリーズ「XREAL Air 2 XREAL Air 2 Pro XREAL Air 2 Ultra」と比べた際の、製品の位置づけとしてはどのようなものになるでしょうか。

高 氏:
XREAL Oneは命名規則に基づけば第3世代に該当し、XREAL Air 2 Proの後継機種とも位置づけられます。しかし、今回は金型、Boseのサウンドフィールド、光学ディスプレイ、そして3年の開発期間を経て完成した新しいXREAL X1 Chipを採用し、ARグラスが備えるべき能力と特長を再定義しました。

また、これは一般消費者向けに設計されたARグラスであり、XREAL Air 2 Ultraとは本質的に異なります。 XREAL Air 2 Ultraは、より高度な空間計算、ジェスチャー認識、平面認識、画像認識、環境認識などの機能を備え、さらに広い視野角を実現しています。そのため、XREAL Air 2 Ultraは私たちのハイエンドモデルであり、主に開発者やビジネスユーザーを対象としていますが、一般ユーザーにも購入可能な形で提供しています。

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どうやら立ち位置としてはAir2 Proの後継になるようだ。Ultraについてはそもそもターゲットが異なるため、Air 2 Ultra > Oneという図式の様子。今後は筆者の様な一般消費者層はOneを、自身でアプリ開発などを視野に入れるならAir 2 Ultraを選択すると良さそうだ。

誰でも使いやすいARグラス「XREAL One」

総じて今回発表された「XREAL One」は、ARグラスの普及モデルという立ち位置になりそうだ。ケーブル1本でPCやスマートフォンとも手軽に接続でき、変換さえ用意すればHDMIしか出力を持たないゲーム機やレコーダーなどにも使用できるだろう。また価格も69,980円(税込)と比較的手ごろで、初めてのARグラスとして申し分ない性能と安定性を持った製品だと感じた。

また「XREL Oneをどんなユーザーに届けたいですか」という筆者の質問に対して、高 氏はこう回答している。

高 氏:
私たちが想定しているユーザー層は非常に幅広く、仕事、ゲーム、映像体験を楽しむすべての人々を対象としています。例えば、頻繁に出張するビジネスパーソン、オフィスや自宅で大画面を使って仕事をしたいユーザー、没入型のゲーム体験を求めるゲーマー、映画や音楽を楽しみたいエンタメ志向のユーザーなどです。

最近では、丸1日まったく映像(この場合はモニターやテレビなどのディスプレイ)を見ないという方はかなり少ないはず。言い換えれば、誰もがARグラスを便利に使える可能性を秘めていると言ってもいいだろう。

そうしたまだARグラスを体験していない方にとって、「XREAL One」は間違いなく重要な初めの一歩、そして大きな一歩になるはずだ。

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