いつの間にか平成生まれの息子も大人になって、独立。家を出た。
変わらず愛嬌を振りまいてくれていた愛犬(漆黒のラブラドール・レトリーバー、雌)が、大型犬の寿命には逆らえず、14才の生涯を終えてしまうと、いよいよ夫婦ふたりきりの生活が始まった。 マイホーム購入時には、まだ見ぬ家族の未来を夢想して部屋数や家具の配置を考えて決断した4LDKのマンション。あらためて見回せば、なんと無駄に広い空間だろうか。
この部屋の床を家内が掃除してまわる姿を想像してみた。容赦なく外部から汚れを持ち込む息子は独立して家を出て、うらやましいほど生え変わる抜け毛をまき散らす愛犬もいなくなった。
とはいえ、風吹けば舞うホコリはチラホラ。そこで、家内孝行のつもりで購入したロボット掃除機の働きぶりが、想像を超えていた。
利用頻度に関わらず、すべての部屋をあまねく動き回る愚直かつ献身的な働きだけでなく、賢いのだ。
この賢くて頼れる掃除の達人、もはや私たち夫婦の家族となったロボット掃除機「Roborock Q5 Pro+」をご紹介しよう。
製品概要
Roborock
ロボロック
Roborock Q5 Pro+
Q5PRP52-04
製品名:Roborock Q5 Pro+
希望小売価格:99,800円(税込)
発売日:2024年3月1日
製品ページ:https://www.roborock.jp/products/q5-pro
わが家の間取りについて
私は現在、マンション住まいである。マンションを選んだ理由は、平面であること。
部屋数を確保しやすい、建売り2階建ての住宅購入も考えたのだが、年齢を過ごせば階段の上り下りも面倒になることだろう。
手持ちの土地もなく、平屋建て注文住宅の予算がない以上、バリアフリーのマンションという選択は必然でもあった。玄関に入れば最低限の廊下、右と左の部屋はいずれもフローリング。正面のドアを開ければリビングダイニング。リビングの壁に接する2つの部屋。障子で仕切られた和室だけが畳敷である。
わが家の内観。どの部屋の敷居も平らで、凹凸を感じることはない。
この部屋と家族の歩み
子育てに、パートにと奮戦する若かりし頃の家内、少年野球に埋没する息子、働き盛りの私自身も仕事に追われる毎日。この部屋に越してきた頃の私たち家族の生活は、間違いなく “忙しさ” の中に存在していた。
とりわけ家内の毎日は、気が遠くなるほどのルーティーンの連続。 早朝から息子の弁当作り、洗えども洗えども減らない洗濯物の山、パート先へと自転車を走らせて、夕食の食材を求めてスーパー経由で帰宅する。 洗濯物を取り込んで畳み終えたら、いよいよ掃除機の登場。あの長いACコードを捌きながらすべての部屋を掃除するほどの時間はない。恐らくはリビングが中心、その他はローテーションで……というのが現実的なところだったろう。
そんな彼女の奮闘を知りながらも、家事いっさいから眼をそむけていた私だが、掃除の負担を軽減できればと、少し高価な英国生まれのサイクロン掃除機を罪滅ぼしの体で購入した。ハイパワーな吸引力が特長だったが、コードレスであることが一番の決め手だった。
わずらわしいコード捌きの技術は必要なくなったけれど、掃除という作業そのものが軽減されたわけではなかった。
二人きりの生活での気づき
夫婦二人きりの生活は、ペットロスによる “寂しさ” から始まった。
この年齢で、新たな家族(犬や猫)を迎えるということは、私たちと彼らに残された寿命レースに突入することであり、再度彼らの最期を看取るあの悲しさをたくないという想いと、彼らを残して自分たちが先に逝ってしまう無責任さが許せなかったので断念することにした。
その代わり限りある残された人生を楽しく過ごすのだと決め、夫婦で旅行やドライブ、食べ歩きなどに時間を使うことにした。
寿命というものを突き詰めれば、時間なのだと気づいた瞬間だった。
ロボット掃除機という選択
段差の少ない、平面に広がるこの環境で最大限に活躍できる画期的な掃除器具の存在は、予てから知っていた。ロボットと称しながら、手も足もない円盤状のボディー。
プラスティック調の外装とペラペラと髭のようなブラシでゴミを収集する姿に軽薄さを感じ、リモコンで動くオモチャのような印象である。決して安いとは言えない商品価格、それに見合った働きをしてくれるとは、どうしても思えなかったのだ。
とはいえ、人間が生き、生活するところにはどうしても「汚れや」や「ゴミ」が生じる。 さらに、人間が立ち入らなくなってしまったら、そこは「廃れ」てしまう。 わが家においては息子の部屋。物置部屋と化したそこは暗く、「陰」の気を感じさせる。 家内も、いつからか掃除をしなくなっていた。ホコリは溜まるばかりである。
ロボット掃除機に期待すること
- 現行使用している掃除機(サイクロン)並みの吸引力がある
- 隅々まで作業してくれる(=まだら作業ではない)
- フローリングエリアばかりでなく、畳部屋や敷物(じゅうたん)エリア にも対応できる
- 家内を掃除という、家事から解放できる
どのメーカーのカタログを見ても、これらの期待は簡単に満たしてくれそうだが、実のところそんな謳い文句には、やはり半信半疑。しかし、私たちの時間は待ってはくれない。
「お手並み拝見」のつもりでわが家に招聘したロボット型掃除機、それが「Roborock Q5 Pro+」だった。
開梱の儀
到着したその段ボール箱の大きさに、まずはびっくり。 さらには開封した箱の中は、精密機械を運ぶがごとく一切の隙間もない。 それぞれのパーツの間には干渉材として凹凸あるダンボールが重ねられており、その様はあたかもミルフィーユの如し。
想定していた以上に、本体の重量はズシリと重い。この中に最新鋭のセンサーの類がぎっしり詰まっているのだと認めざるを得ない。プラスティックのオモチャなどと評していた自分が少し恥ずかしく、誠にかたじけない。
「Roborock Q5 Pro+」は、床の水拭きもできるらしい。フローリング率高めのわが家にはうってつけ。
この時点で、期待値はいやが上にも上乗せされてしまう。
内容物の確認
一番上には、大判の「組み立てガイド」が1枚。左下には内容物のチェックリストが記載されている。このガイドを見る限りでは、組立てはカンタンなようだ。 内容物をすべて出したら、不足がないかチェックをする。欠品なし。
いつになっても、この瞬間はドキドキである。
そして組立て
実は、開梱して内容物をチェックしている最中に確信していた。
「これは、組み立てがカンタンだな」と。
勇んで準備していた工具箱などは、まったく不要だった。本来は、別の袋に入っているネジさえもがあらかじめネジ穴にセットされていて、6か所をグリグリすれば完了。ベース版の底にドライバーまで準備してくれているという手回しの良さ。
これなら一人暮らしの若い女性でもカンタンに組立てられる。
【組み立て手順】
- ゴミ収集の土台となるビニールにつつまれたベースを丁寧に取り出す
- 平らなところで土台盤を組むため、ベースをひっくり返す
- L字型になるよう土台盤をはめ込む
- 予めセットされた6か所のネジ(+)をグリグリ締めていく
- 土台板が下に来るように、本来のカタチに戻す
- 同梱されていたACコードを本体に取り付ける
- コンセントまでの適当な距離になるよう、コードを本体に巻き付ける
たったこれだけで完成。
コンセントのある場所にベース基地を設置
組立てられた「Roborock Q5 Pro+」のベース基地、やはりあの英国生まれのライバルの横にすることとした。
個性派同志が並び立つこの状態、この絵面を通してさえバチバチとした勢力争いのようなものを感じてしまうのは、単なる気のせいなのだろうか。
なにはともあれ、畳の部屋の片隅がにぎやかになってきた。
いよいよ「Roborock Q5 Pro+」本体と邂逅のとき
重量感ある本体は、ビニール袋から取り出せばそのまま設置できるようだ。ついこの間のように感じている昭和の頃、この円盤状の物体を見て、誰が掃除機だと認識しただろうか。
かくいう私の心の深いところでは、未だ払拭できていない掃除機としての力量にたいする不信感は否めなかった。
その役割を担うこの物体の底面を確認するために、両手で抱えて裏返し、しげしげと眺めてみた。円盤中央には、なるほど大きな吸い込み口がある。よくある筒状のブラシではなく、斜めにセレーションが切られた赤と黒のゴムローラーがゴミを引きこむ方向へ回転し吸い込むカラクリになっている。右肩にチョロチョロと回転する3方向に伸びたブラシは、中央の吸い込み口にゴミたちを誘う役目を果たしているようだ。
圧巻は、左右に配置されたオフロードバイクのような大きな車輪。これなら少々の悪路や段差も乗り越えられる事だろう。
この本体の機能部分の奥、プラスティックで覆われた中身には本来、掃除機に求められるべき吸引力、そしてその吸引力に負けない推進力を備えたモーターが存在し、さらには床、壁、障害物にぶつからずに用心深く働くセンサーなど先進の部品たちが、ぎっしりと詰め込まれていることだろう。
そんなことに思いを馳せ、改めて本体の裏側を見てみれば、中央の吸引口がなぜだか「エイのくち」、そう水族館の大型水槽にいるあの「エイのくち」を連想してしまい、無性に可愛く思えてきた。
この瞬間、間違いなくこのロボット型掃除機に抱いていた私の不信の壁は崩れていた。
アプリを登録
昔の電化製品だったなら、準備はこれでほぼ完了。あとは“スイッチ・オンで動きだす” というところだが、令和の現在ではそうはいかない。スマートフォンとの連携が必要なのだという。
でも安心。同梱されていた「クイックスタートガイド」のQRコードでアプリを入手。 あとは、アプリの手順にそって自宅のWi-Fi環境を登録すればいいだけなのである。
いよいよ始動! いや、その前に……。
私たち夫婦の住む部屋の間取りについては、前述のとおりである。
生活をしていく中で、それぞれの部屋には特徴ができた。メインで利用するダイニングキッチンは、まんべんなくそれなりに散らかっている。ベッド以外に必要最低限のものを置くはずの寝室にも、なにかしら細々と持ち込まれている。
人が活動するということは、こういうことなのだと実感する。生活とは、言い換えれば「散らかし、汚すこと」。定期的に整理し掃除することでリセットする。なんと哲学的な営みであろうか。
物置部屋となった息子の部屋、窓は閉めたまま。今や「廃れた」感もある。この「陰」の雰囲気を何とかしてほしいものだ。
こんな部屋ばかりだけど、「Roborock Q5 Pro+」は期待通りにちゃんと活動してくれるのだろうか? イヤになってへそを曲げて停止してしまわないだろうか?
懸念される段差と障害物をチェック
いかにゴツいタイヤを装備していても、車輪で駆動するかぎり段差には弱いはず。我が家の玄関の上がり框の段差は比較的低く造作されてはいるものの、乗り越えるには厳しいかもしれない。
部屋の敷居程度は心配していないが2枚敷のカーペットはどうだろうか? 特に左角に変なクセのついた部分が鬼門である。
ベッドの下の隙間には、残念ながら「Roborock Q5 Pro+」の高さが勝っていて進入不可。 有り余るパワーで壁に立て掛けたワイパーシートや折り畳みの踏み台を倒してしまうのでは?などと考える。
ちょっとしたいじわる心も働いて、洗面台下の柔らかマットはそのままにしておいた。
それでは始動、スイッチON!
スマホのアプリを開き、「Roborock Q5 Pro+」掃除開始のスイッチを入れる。 驚いたことに意外にも音が静かである。どこぞの英国サイクロン野郎とは大違いだ。
移動する速度は、少年時代の宝物だったラジコン戦車くらいだろうか。あてもなく彷徨うようにあっちへ、そっちへ。初老の夫婦は、まるでよちよち歩きのこどもを見守る気持ちでハラハラしながら目で追うばかり。やはり、懸念していた玄関の上がり框を落っこちてしまい、自己復帰できずにエラーが表示された。誰にでも限界というものはある。
とりあえずベース基地まで連れて行き、充電の後、再トライすることとする。 こんな時こそ説明書を読む。アプリ内に示される作業エリア図に示された、その部分に境界線を置けば回避できるようだ。進入不可エリアの設定も簡単なのでアプリを使いこなせば無敵かもしれない。
再度、掃除開始のスイッチを入れる。 リビングの隅に鎮座する椅子や植木鉢、扇風機やその他諸々を上手にかわしながら、慎重に移動する。低い敷居は、難なくクリア。2枚敷のカーペット、あの変なクセがついた角部には手こずったが、違う場所からアプローチして乗りきるなど、なんと賢いことか。
それだけではない、カーペット域に入るや否や吸引力がもう一段上がったのだ。 床面に合わせた設定を自動的に行ってくれた、感動の瞬間だった。ソファーの下にはしっかり進入、掃除のたびにずらす重さから解放された。心静かにリビングのソファーに座って「Roborock Q5 Pro+」の行く先を視線で追う。
リビングの向こうの部屋に行ってしまえば稼働音さえ聞こえない。黙々と、ただ黙々と往復し、立て掛けた踏み台もワイパーシートも倒すことなく鬼門の玄関へ。アプリで設定した回避境界線を守り、意気揚々とベース基地へと帰ってくる。
ただ、イジワル心でそのままにしておいた洗面台の柔らかマットは、強い吸引力が災いしてこんな風にされていたけれど。
ひと仕事を終えた「Roborock Q5 Pro+」が凱旋してくる。おずおずとベース基地におしりを向けて、バックでピットイン。ほどなくすると吸入爆音。本体が集めたゴミやホコリをダストボックスへ吸い上げた音だろう。その後、俄かに訪れる静寂。
こんな風にお手並み拝見の入門テストは、及第点を遥かに超え驚嘆さえ覚えた。清掃後の各部屋の床面にはゴミだけでなくホコリさえ認められなかった。
アプリで確認したり、設定したり
家内のスマホを見る。アプリの画面にはすべての部屋の床の形状が描かれていて、その床面いっぱいに「Roborock Q5 Pro+」の軌道履歴が、一筆書きのように描かれていた。
ワクワク感は一旦落ち着き、改めて見たアプリの機能は細やかで興味深いものばかり。各部屋の名称だって入力できるのだ。先に紹介した作業境界線で活動範囲も制限可能、進入禁止エリアも指先で移動拡大縮小できる。
その時点では作業境界線との使い分けが理解できなかったが、「Roborock Q5 Pro+」が持っている拭き掃除の段階で設計者の意図がやっと理解できた。
いよいよ次はもうひとつの機能、拭き掃除の実力をためすことにする。お楽しみはまだ残っている。
水拭き掃除、お見事なり!
「Roborock Q5 Pro+」で期待していた機能、それが水拭き掃除。そのためのアタッチメントを開封。
半透明のタンクと予備用の給水弁を取り出す。床に面するマットは布製。マジックテープで装着されている。スライドさせれば簡単に取り外せるので、汚れたら手洗いできるのも秀逸だ。
早速タンクに水を適量入れて本体に装着。給水弁のおかげで、だらだらと水が垂れだすことはない。
始動する前にアプリの設定。
部屋ごとの床材質を入力。フローリングの場合、その床板の方向まで入力する。板の向きに合わせて拭き掃除してくれるのだ。 問題はじゅうたんエリア、この部分は拭き掃除の必要はない。あえて言うならば畳エリアも、である。
ここで活躍するのが、進入禁止エリア設定。まずは前回転倒してしまった玄関エリアを赤で囲んだ。この要領でリビングのじゅうたんを回避させる。
いざ、水拭き初体験。
一度目同様、スムーズに動き出す。拭き掃除だからと言ってスピードが落ちることもない。
進入禁止エリアを上手に回避して黙々と仕事を遂行。アプリとの連動性に改めて感心した。肝心の拭き掃除後の床面状態は快適。足の裏に感じるベトベト感はなく、心なしかスルスルとした感触で大満足である。
初回同様、『Roborock Q5 Pro+』は黙々と仕事を終えてベース基地に無事帰還。 今回もダストボックスへしっかり爆音吸引。確認のため開けた上部ボックス、設置された白いフィルターは思った以上に大きかった。これなら相当量回収できそうだ。
たった2度の稼働ながら、どれほどのゴミやホコリを回収したのか、興味本位で内部を覗いてみたら……ウッ。この状態の掲載を渋る家内になんとか了解を得て、撮影したフィルター内部の写真がこれである。
床面を水拭きせいてくれた布マットは当然ながら汚れていた。取り外しは簡単。 早速、洗面台でもみ洗いしたところ、きれいに復活した。少々の汚れでも台所洗剤で充分対応できそうだ。
繰り返し使用ででき、コスト面で貢献度大である。
ようこそ、わが家へ
「Roborock Q5 Pro+」、いったい誰が付けた名前なのか。まさか、「エイのくち」にちなんで、スティングレイでもあるまい、なんにしても呼びにくい。
結局のところ夫婦で相談、14歳で逝ってしまった愛犬の名、「ベス」を踏襲してもらうことにした。
どの部屋にも気ままに出入りしていた漆黒のラブラドール・レトリーバー。ベスちゃんが動くたび、家中 が“陽“ の雰囲気に包まれた。
「Roborock Q5 Pro+」改め、二代目ベスちゃんもきっとそんな存在になってくれることだろう。
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