秋葉原で行われた「REB fes vol.07」アフターレポート!オーディオ好きによるオーディオ好きのための新感覚イベントの様子をお届け

皆さんは「REB fes」というオーディオイベントをご存じだろうか。

ポタフェスやOTOTENなど、イヤホンやヘッドホン、DAC(Digital to Analog Converter)・DAP(Digital Audio Player)といったオーディオ機器を扱うイベントはいくつかあるものの、「REB fes」は株式会社finalという、いちメーカーの声掛けにより始まったという一風変わった発足経緯を持つイベントだ。

昨年2023年6月17日に開催された初回「REB fes vol.00」(会場は川崎にあるfinal本社)を皮切りに、大阪、川崎、名古屋、福岡、札幌、仙台と全国各地で開催されており、約1年の時を経て遂に東京での初開催を迎えた。初回である「REB fes vol.00」にお邪魔したことがあるonesuite編集部としても、これは是非とも取材に行かねば…。

ということで今回は、2024年6月1日に秋葉原で開催された第7回「REB fes vol.07」について、アフターレポートの形で会場の様子をお届けできればと思う。

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REB fes 公式サイト

目次

ビュッフェのようにオーディオ機器を試せる新感覚イベント「REB fes vol.07」

いきなり結論から入ってしまうが、本イベントにおける最大の魅力は「複数メーカーの製品を自由に組み合わせ、思う存分聴くことができる」という点だ。

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これはどういう事かというと、一般的なオーディオ機器のイベントはどちらかと言えば展示会の側面が強く、「各メーカーの持ち寄った新製品などを一度に見ることができる」のがイベントの趣旨になる。当然、試聴といっても読んで字のごとく”試し聴き”がメインで、他メーカーの展示機材との組み合わせなんて以ての外。基本的には手持ちの機材と組み合わせてどうかを確認するのがせいぜいだ。

もちろんイベント以外にも量販店やオーディオショップで試聴はできる。できはするのだが…こちらも基本的には手持ちの機器との組み合わせがメインで、「アレとコレとソレを組み合わせて聞かせてくれ」とできるシーンは滅多にない。(こちらはお店によってはお願いすれば出来るのかもしれないが)

そんなある種のタブーとも言える「手持ちに無い機材同士の組み合わせ」を叶えてくれるのが「REB fes」のすごい所なのだ。しかもコレをメーカーが自ら主宰しているというのだから、何とも太っ腹な話である。

なかでも今回の「REB fes vol.07」では過去最大の29社69ブランド用意された試聴機は1,600台以上にまで規模が拡大しており、各出展ブースからビュッフェのように好みのオーディオ機器を借りてきて、会場に用意された試聴席にて心置きなく堪能することができる素晴らしい形式。流石に同時に3台まで、かつ人気機種には15分までといった多少の制限があるものの、ここまで自由度の高いイベントはそう無いはずだ。

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思い思いに、それぞれの組み合わせで試聴する参加者の様子。

初心者も上級者も楽しめるオーディオイベント

また複数メーカー・ブランドが集い、一通りのオーディオ製品カテゴリが集結しているということは、その場に私物が無くとも試聴環境が構築できるという事でもある。極端なことを言えば手ぶらで、またはスマートフォンさえあれば気軽に最新機材や高級機材を体験できるのだ。

筆者も今ほど機材が揃っていない頃は「初めに揃えるべきはイヤホンか、ケーブルか…あるいはDAC・DAPなどの再生機器なのか?」と、色々と悩みながら試聴を繰り返したもの。ある程度慣れてきた後も「このヘッドホンを鳴らすならコレだけの出力が必要だから、まずはこれを揃えないと試聴してもキチンと鳴ってるか分からない…」といった風に、試聴の前提条件に立つために思い悩んだ過去がある。

しかし「REB fes」ならそんな心配は一切不要!ゼロから揃える初心者から、ある程度揃ってきた中級者、手持ちの機材以外の新たなジャンルを開拓したい上級者まで、間違いなく誰もが楽しめるイベントと言えるだろう。

「REB fes vol.07」で聴けた製品はコレ!誰しも気になる当日のラインアップをご紹介

さてここまでで「REB fes」のポイントは、十分ご理解いただけたかと思う。とはいえこの魅力が会場のラインアップに支えられていることもまた事実。会場に行くことができなかった方の多くが、一体何が聴けたのか気になっているに違いない。

ここからは実際に現地で試すことのできた製品ラインアップについて紹介していこう。

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イベントといえば新製品のイメージが先行しがちだが、本イベントの趣旨はオーディオの楽しさを体験すること。そのため会場には廃盤製品などを含む旧製品も用意され、最新製品×往年の名機といった組み合わせでの試聴もできてしまう。ある意味メーカーの音作りの歴史を垣間見ることができ、オーディオマニア的な楽しみ方も可能な形式だ。

一方で先にも記載した通り「REB fes vol.07」で借りることができた試聴機は1,600台以上。有線接続イヤホン以外にも無線接続イヤホンや、発売して間もない製品、これから発売予定の製品など、各ブースによって種類は様々なため、残念ながらページの都合上そのすべてを紹介することは難しい。ここで紹介するのはあくまでその一部となるので、その点についてはご了承いただきたい。

SENNHEISER HD 620S ほか豊富なコンシューマー向けモデル

まず入場してすぐ、SENNHEISER製品が展示されているブースでは6月6日発売予定の「SENNHEISER HD 620S」 が目に止まった。

この製品の大きな特徴は、これまでHD 500シリーズで用いられていた装着感に優れた形状を採用している一方で、名称には開放型で有名なHD 600シリーズの冠が与えられており、にも関わらず本機は密閉型のヘッドホンだという。この情報だけでも十分興味が唆られるのだが、実際にサウンド面でもHD 500シリーズとHD 600シリーズの特徴を融合しているらしく、非常に気になる製品の一つだ。

REB-fes-vol7_SENNHEISER-HD620S

それ以外にも、ハイエンドモデル2種(開放型の「HD 800 S」と密閉型の「HD 820」)や、IEシリーズ4製品(IE 200 / 300 / 600 / 900)に加え人気のMOMENTUMシリーズなど、コンシューマー向けのモデルが豊富に用意されていた。

ここでしか聴けないピヤホンのサウンドプロトモデル

X(旧:Twitter)でもトレンドに上がるなど、凛として時雨のピエール中野氏監修で有名なピヤホンシリーズ。今回はここでしか聞けない製品としてピヤホンの「サウンドプロトモデル」が試聴可能となっていた。あくまで”サウンド”のプロトモデルということで、発売される際のデザインはまた別とのこと。既存製品も豊富に用意されていたため、各モデルのコンセプトの違いなども体感することができる

平面駆動方式を採用したMADOO Typ821

会場には平面駆動方式を採用したイヤホン「MADOO Typ821」の姿も。本製品は20万円を超えるハイエンド製品だが、入荷と欠品を繰り返しているほどの人気商品。それでも多くの方に試聴いただけるよう、今回のためだけになんと4台も試聴機を用意したのだという。

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また隣には「Spin Fit」など、人気のイヤーピースも試せるようにオールサイズで用意されていた。ちなみにSpin Fitを借りた方には、指定の1サイズをノベルティとしてプレゼントしてくれる嬉しいサプライズが。

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LEPICのDAC POCKETなど、オーディオ機器以外のアクセサリーも用意

音楽ストリーミングサービスの発達により、いまや多くの方がスマートフォンで音楽を聞いている時代だ。そこから一歩踏み込んでもう一段階良い音質で音楽鑑賞がしたいとなれば、ポータブルUSB-DACの出番だろう。とはいえDACとスマートフォンを接続するとなれば、ケーブルやDACの固定に悩む方も居るはず。その際に便利なのがLEPICの「DAC POCKET」だ。

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発売が決まっているわけではないらしいが、iBasso DC-Eliteのような少し大きめのポータブルUSB-DACが無理なく入る形状も検討中とのこと。

See Audio NEKO JP Versionの販売再開など、こぼれ話も

供給問題により一時的に生産中止となっている「See Audio NEKO JP Version」も用意されており、ブースでは再販開始の可能性があるという噂もゲット。また先程はオールサイズのイヤーピースが用意されていたのに対し、ここでは複数種類の変換コネクターが用意されていた。各ブースを回ればどんな機材でも試聴環境が簡単に整えられそうだ。

TAGO STUDIOの製品が勢揃い

高崎でレコーディングスタジオを運営しているTAGO STUDIO TAKASAKIが手がける定番ヘッドホン「T3−01」。究極のナチュラルサウンドを目指して開発されたこのヘッドホンは、国産の楓材を採用し美しい木目により1台1台の見た目が唯一無二となる面白い製品だ。

その他にも木材の廃材を再利用したヘッドホン「Historic Phone」や、T3-01のDNAを継承する「T3-03」から現状同社で唯一のイヤホンである「T3-02」まで、TAGO STUDIOの手がけるすべての製品が試聴可能だった。

REB-fes-vol7_TAGO-STUDIO

手頃な価格が魅力の「ZEN DAC 3」や大型DAP「Lotoo Mjölnir」なども試聴可能

比較的小型で手の出しやすい価格感が人気のDAC ZENシリーズの第3世代 「ZEN DAC 3」をはじめとした据え置きメインのDACや、JVCケンウッドの誇るK2HD技術を搭載した「GO bar 剣聖」などのポータブルUSB-DACなども用意されていた。その横には約150万円の大型DAP「Lotoo Mjölnir」や、約50万円のDAP「Lotoo PAW Gold TOUCH」など高額製品の姿も。価格的にも非常にインパクトが大きい製品がさも当然のごとく用意されており、もちろん試聴可能であった。

真空管アンプ「HA-300 Mk2」や発売前の新製品もお目見え

フラッグシップ真空管アンプの「HA-300 Mk2」や、発売前の新製品3種「iDAP-8」「iDAC-8」「iHA-8」が設置されておりブースでの試聴が可能だった。また最近発売されたDAPの「N3 Ultra」も用意され、ほとんど常に貸し出し中になるほど人気を集めていたのも印象的。Cayinといえば真空管のイメージ通り、真空管を用いた据置やモバイルのサウンド体験ができるのも面白い点だ。

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intimeから名称非公開の新製品も登場

また会場では、名称はまだ非公開だというintimeのイヤホンと発売前に出会うことができた。マイク付きのハイレゾ対応イヤホンで、発売する際には気軽に携帯と繋げるUSB Type-Cモデルと、よりこだわりの環境で使いたい方向けの3.5mmプラグ版の2種類展開を予定しているらしい。それぞれチューニングは変えているそうだが、どちらもintimeらしい音に仕上がっているとのこと。

他にもAmazon限定で発売予定の「碧Light 4.4mmプラグ版」もあり、音質や定位が向上しているという。
更には参考出展として、社長自ら作成したケーブルも展示されていた。

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白馬村のガラス職人が作ったガラス玉もあしらい、細部までこだわり抜いたケーブルだという。

Fiioの「R7」と「R9」ほか、DACの搭載キーボードまで

可能な限りシンプルで高音質な環境を構築したい方には、機能性と拡張性を追求したデスクトップオーディオストリーマー「Rシリーズ」の「R7」と「R9」がオススメだ。Android OSの拡張性と豊富な入出力端子、そして優れたインターフェースを兼ね備えたオールインワン製品で、イヤホンやスピーカーがあればすぐにでもオーディオ環境を整えられるだろう。

一方で会場にはDACとヘッドホンアンプを搭載した「KB3 HiFi USB」というキーボードもあり、こうした珍しい製品も含めて音を確かめられるというのも本イベントの魅力だ。

クラウドファンディングで人気を集めた「Beethoven」なども

珍しい形の骨伝導イヤホン「Beethoven」に興味を惹かれた方も多かったはず。本製品はクラウドファンディングにて先行販売され、4000%近い達成率となった話題のイヤホンで、こめかみを抑えるタイプのイメージが強い従来の骨伝導イヤホンとは異なり、Beethovenは耳甲介腔にリング状の部分をはめ込む方式をとっているのが特徴だ。

特にASMR系の音声との相性が良いとのことで、例えば耳かきの音声を聴いた場合、実際に耳甲介腔に振動が伝わることで本当に耳かきをされているような感覚に陥るという。

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その隣にはディープマウントイヤーピース「ZONE」が展示されており、他に類を見ないほどの透明度を誇る美しい見た目をした製品だった。また液体シリコンを使用したイヤーピースは、触るだけでどのイヤーピースよりも柔らかいと思えるほど極めて柔軟性が高く、カナル型イヤホンで耳が痛くなりやすい方にもオススメしたいイヤーピースだ。

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特にクリアシェル筐体のイヤホンと組み合わせると見た目もマッチするだろう。

会場限定価格!e☆イヤホンの出張店舗が登場

会場ではe☆イヤホン主催の物販ブースも用意されていた。東京の秋葉原で開催ということもあり少し歩けば店舗があるのだが、ここで用意された価格は基本的に会場限定価格。販売ラインアップに限りはあるが、撮影NGがでるくらいには”攻めた”価格になっていたようだ。ちなみに筆者も仕事そっちのけで買って帰ったのは言うまでもない。

REB-fes-vol7_e-earphone
ここでは許可をもらった看板のみ掲載とさせていただく。

「REB fes」はオーディオ好きによる、オーディオ好きのためのイベント

ここまで「REB fes vol.07」の様子をお届けしてきたわけだが、いかがだっただろうか。メーカーの垣根を越えて、様々な製品が集う本イベントの魅力が少しでも伝わっていれば幸いである。

ちなみに「REB fes vol.00」にもお邪魔している筆者としては、その規模感の拡大に驚くばかりだった。

というのも、そもそも初回の時点では製品の組み合わせを試せるというコンセプトはありつつも、メインはイベント名にもある通りfinal社のイヤホンブランド「REB」の訴求。そのためfinal以外のメーカーやブランド製品は現在に比べるとごく少数だったのである。

これはある種メーカー主催としては当然の話で、自社製品を売るためにイベントを実施するという手法は何も不思議ではない。しかし「REB fes vol.07」ではその様子は様変わりし、数多くのメーカー・ブランドが参加。製品の数自体もfinal社の製品と比べて他社製品が圧倒的に多い状態になっており、ジャンルは違えど元メーカー出身の筆者からすれば、いちメーカーが主催のイベントとして成立している事がすでに不可解なレベルの規模なのだ。

この事実から伺えるのは、final社の「自社のメリットを度外視してでもオーディオ界隈を盛り上げたい」という熱い想いと、それに応えて集った各メーカー・ブランドの心意気。普段はシェアを取り合うライバルでありつつも、その根幹には「ユーザーに良い音を届けたい」「オーディオが好き」という想いが共通しているからこそ、ある種奇跡的に実現しているイベントと言えるだろう。

真の意味でオーディオ好きによる、オーディオ好きのためのイベントである「REB fes」。次回の開催が今から待ち遠しい所ではあるものの、どうやら今のところは未定らしい。この特異かつ理想郷のようなイベントが、今後も継続してくれることを願うばかりだ。

イベント概要

イベント名:REB fes vol.07
開催日:2024年6月1日
開催場所:東京都千代田区外神田3-12-8住友不動産秋葉原ビル ベルサール秋葉原 2F
REB 公式サイト:https://reb-audio.com/

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